賃貸契約でNHK受信料は強制?不動産会社の真実と正しい断り方

賃貸物件の契約手続きを進める中で、突然NHK受信料の申込書が送られてきて戸惑った経験はありませんか?

「これって提出しないと入居できないの?」「断ったら審査に影響するのでは?」と不安を感じる方は少なくありません。

実は、賃貸契約とNHK受信契約は法的にまったく別のものであり、不動産会社から勧められても必ずしも応じる必要はないのです。

しかし、なぜ多くの不動産会社がNHK契約を積極的に勧めてくるのでしょうか。その背景には、業者側の経済的なメリットが隠れています。

本記事では、賃貸契約時にNHK受信料の契約を求められた際の正しい対応方法、不動産会社が勧誘する本当の理由、そして入居後にNHK訪問員が来た場合の具体的な対処法まで、法的根拠を示しながら詳しく解説します。

これから引っ越しを控えている方、すでにNHK契約を迫られて困っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事で分かること
  • 賃貸契約時にNHK契約が強制ではない法的理由
  • 不動産会社がNHK契約を勧める本当の背景
  • 契約書類にNHK申込書が含まれている場合の断り方
  • 入居後のNHK訪問員への効果的な対応方法
  • 賃貸契約とNHK受信料に関するよくある疑問への回答

賃貸契約時のNHK受信料は強制ではない理由

多くの方が誤解していますが、賃貸契約を結ぶ際にNHK受信契約も同時に結ぶ義務は一切ありません。

不動産会社から「入居の条件です」と言われても、法的な拘束力はないのです。

ここでは、賃貸契約時のNHK受信料は強制ではない理由について解説します。

賃貸契約とNHK契約は法的に別物である

賃貸契約は大家と入居者の間で交わされる「住まいの契約」であり、NHK受信契約とはまったく別の法律に基づくものです。

NHK契約は放送法64条により「受信設備を設置した者」にのみ義務が発生します。

つまり、入居しただけでは契約義務はなく、テレビやワンセグ対応機器を家に置いて初めて契約が必要になります。

賃貸契約に必要な書類の中にもNHKの書類は含まれず、法律上も賃貸契約とNHK契約は完全に独立した別の契約です。

参考元:e-GOV「放送法

不動産会社がNHK申込書を同封する背景

多くの不動産会社がNHKの申込書を同封するのは、NHKと不動産会社の業務提携によるものです。

NHKは引っ越しのタイミングを契約案内の重要な機会と捉え、入居者情報を把握できる不動産会社に協力を依頼しています。

不動産会社側にも一定のメリットがあるため同封されますが、これはあくまでNHK側の「依頼」に過ぎません。

法律上、入居者が従う義務はなく、申込書が送られてきても契約が強制されるものではない点を理解しておきましょう。

「入居条件」として提示されても拒否できる根拠

不動産会社が「NHK契約は入居条件です」と説明しても、法的根拠はありません。

宅建業法では誤解を招く説明を禁止しており、NHK契約を必須条件のように伝える行為は違法となる可能性があります。

また、賃貸契約にNHK契約を義務づける条項があっても、公序良俗に反し無効と判断される可能性が高いです。

仮に「協力すること」と書かれていても強制力はありません。

もし締結を強く求められた場合は、その物件を避けるか、消費生活センター(188)へ相談するのが安心です。

賃貸契約でNHK契約を勧められる本当の理由

不動産会社や賃貸管理会社がNHK契約を積極的に勧めてくる背景には、業者側の経済的なメリットが存在します。

ここでは、その実態について紹介します。

不動産会社がNHKから受け取る仲介手数料の仕組み

NHKは受信契約の取次ぎを依頼した業者に対し、1件あたり2,000〜5,000円程度の手数料を支払っています。

賃貸仲介は利益率が高くないため、不動産会社にとってこの手数料は貴重な追加収益となります。

大手では年間数百〜数千件の取次ぎが行われ、総額が数百万円規模の収入になることもあります。

ただし、この手数料を受け取れるのはNHKと正式な取次ぎ契約を結んだ会社のみです。

重要なのは、この契約と手数料はあくまで業者とNHKの間の取引であり、入居者には契約義務も負担も一切発生しないという点です。

NHK契約をするかどうかは、入居者が自由に判断できます。

大学生協や賃貸管理会社が積極的に勧誘する理由

大学生協がNHK契約を勧めるのは、新入生の「初めての一人暮らし」で必要な契約をまとめて済ませたいというニーズに応えるためです。

さらに、学生は親元の契約があれば家族割引で半額になるため、これを案内しつつ契約を促すケースもあります。

一方、賃貸管理会社は生活インフラの手続きのワンストップ化を提供する中で、電気・ガスと一緒にNHK契約を案内することがあります。

しかし、どの場合でも、NHK契約は完全に任意です。

必要性を感じなければ断ることができ、契約しないことによる不利益もありません。案内されても「今は契約しません」と伝えれば問題ありません。

入居者情報をNHKと共有する業者の実態

不動産会社が入居者情報をNHKへ提供しているのではないかと心配されますが、本人の同意なく第三者に個人情報を渡すことは個人情報保護法で禁止されています。

そのため、勝手に提供する行為は違法となり、通常は行われません。ただし、入居者自身がNHK申込書に記入・提出した場合は本人同意の提供となり問題ありません。

また、NHK訪問員が引っ越し直後に来るのは、転入届・電気ガス契約・郵便転送など複数の情報源で住所を把握できるため、不動産会社経由とは限りません。

情報提供を防ぎたい場合は、契約時に「個人情報を第三者に提供しないでください」と明確に伝えることが重要です。

  • 賃貸契約でNHK契約を勧められる本当の理由まとめ
業者メリット補足
不動産会社契約1件あたり 2,000〜5,000円の手数料NHKとの取次ぎ契約がある会社のみ
大学生協一人暮らしの生活サポート実績向上家族割の案内で契約につながりやすい
管理会社生活インフラのワンストップ提供電気・ガス契約と併せて案内しやすい

賃貸契約時のNHK申込書への正しい対応方法

実際に賃貸契約の書類の中にNHKの申込書が含まれていた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

ここでは、具体的な断り方と注意点を解説します。

契約書類にNHK申込書が含まれている場合の断り方

賃貸契約の書類にNHKの申込書が入っていても、提出する義務はありません。

まずは申込書だけを抜き出し、提出書類から除外します。そのうえで担当者に意思をはっきり伝えることが大切です。

断り方の例文

「テレビを設置する予定がないため、NHK申込書は提出しません。」

このように理由を添えて伝えれば、多くの担当者は問題なく受け入れてくれます。

NHK契約は不動産会社の付帯サービスであり、賃貸契約そのものとは無関係だからです。

「テレビを設置予定がない」と伝える方法

NHK契約を断る最も明確な理由が「受信設備を設置しないこと」です。

放送法では、契約義務は「受信設備を設置した時」にのみ発生します。したがって、テレビを所有していなければ契約は不要です。

説明の例

「テレビを所有しておらず、今後も設置予定がありません。」

事実に基づくシンプルな説明のため、担当者もそれ以上追及できません。

また、動画視聴をネット配信のみで済ませている場合も有効です。

ただし、注意点としてワンセグ付きスマホは受信設備と見なされる可能性がある点だけは把握しておきましょう。

将来テレビを買う予定があっても、現状持っていなければ契約義務はありません。

不動産会社に「必須です」と言われた時の対処法

不動産会社が「NHK契約は入居の必須条件です」と説明するケースがありますが、これは法的根拠がありません。

まずは落ち着いて以下の質問をしましょう。

確認質問の例

「その条件の法的根拠を教えていただけますか?」

賃貸契約とNHK契約は別の契約であるため、担当者が誤解しているだけで撤回されることも多いです。

それでも説明が続く場合は、次のように返答します。

返答の例

「NHK受信契約は受信設備の設置時のみ義務が発生します。賃貸契約の条件ではありません。」

この時点で引き下がらない場合は、

  • 上司への引き継ぎ依頼
  • 別の不動産会社を利用する

という選択肢もあります。強制は不当であり、従う必要は一切ありません。

審査に影響すると言われた場合の確認ポイント

担当者が「NHK契約しないと審査に通らない可能性があります」と言うことがありますが、これは誤った情報です。

入居審査では、NHK契約の有無は一切関係ありません。

審査でみられる項目は「家賃の支払い能力」「過去の賃貸トラブルの有無」「保証人の有無」「入所者の生活態度」などであり、NHK契約は基準外です。

もし不安をあおるような説明を受けた場合は、こう確認しましょう。

確認質問の例

「どの審査項目に影響するのか根拠を教えてください。」

明確な根拠を示せない場合は、その説明は虚偽である可能性が高いです。

さらに不安であれば、審査を行う保証会社に基準外であることを確認するという方法もあります。

賃貸入居後にNHK訪問員が来るのはなぜ?適切な対応方法とは?

無事に賃貸契約を完了し入居した後でも、NHKの訪問員が自宅を訪れることがあります。

ここでは、賃貸入居後にNHK訪問員が来る理由や適切な対応方法について紹介します。

なぜ引っ越し直後にNHK訪問員が来るのか

引っ越しをしてから数日〜数週間で、NHKの訪問員が来るケースは珍しくありません。なぜこのタイミングで訪問されるのでしょうか。

NHKは、新しい住所への転入情報を以下のような複数の方法で把握しています。

  • 市区町村への転入届(住民基本台帳の情報は非公開だが、間接的な情報は得られる)
  • 電力会社やガス会社との契約開始情報
  • 郵便局の転送サービスの利用
  • 不動産会社からの情報(本人同意がある場合)

これらの情報をもとに、NHKは訪問リストを作成し、委託業者を派遣しています。そのため、引っ越し直後に訪問されることが多いのです。

また、マンションやアパートの場合、新しい入居者が来たことを近隣住民や管理人が気づきやすく、その情報が訪問員に伝わることもあります。

重要なのは、訪問されたからといって、必ずしも契約しなければならないわけではないということです。受信設備がなければ、契約義務はありません。

インターホン越しでの対応テンプレート

NHK訪問員が来た場合、ドアを開ける義務はありません。

インターホン越しに対応することをおすすめします。

基本の
対応テンプレート

訪問員:「NHKです。受信契約の確認に参りました。」
あなた:「受信設備はありません。」
訪問員:「テレビはお持ちではないですか?」
あなた:「持っていません。契約の必要はありませんので、お引き取りください。」

この対応で十分です。それ以上の説明をする必要はありません。

もし訪問員が「確認させてください」などと言ってきても、室内に入れる義務はありません。

放送法には、NHK職員や訪問員が家の中を確認する権限は一切認められていません。

しつこい場合の
追加対応

「これ以上の訪問は迷惑です。この会話は録音しています。帰っていただけない場合は、不退去罪として警察に通報します。」

この発言は法的にも有効です。不退去罪(刑法第130条)は、正当な理由なく他人の住居から退去しない行為を処罰する犯罪です。

実際に録音していなくても、「録音している」と伝えること自体に抑止効果があります。

受信設備がない場合の正しい説明方法

テレビを持っていない場合、その事実を簡潔に伝えれば十分です。

詳しい説明をする必要はありません。

説明の例

「テレビは所有していません。」
「受信設備はありません。」
「動画はネット配信サービスで視聴しています。」

これらの説明で、訪問員は契約を求めることができなくなります。

もし訪問員が「スマートフォンはお持ちですか?」と尋ねてきた場合、ワンセグ機能がなければ「ワンセグ機能のないスマートフォンです」と答えれば問題ありません。

2025年10月からは、NHKのインターネット配信サービスが「必須業務」となりましたが、これは単にスマートフォンやパソコンを持っているだけで契約義務が発生するわけではありません。NHKの配信サービスを実際に利用開始した場合に契約義務が生じます。

つまり、NHKのアプリをインストールしていない、NHKのサイトで配信を視聴していないという状態であれば、契約義務はありません。

参考元:NHK「インターネットサービスが必須業務になるとは、どういうことですか?

しつこい訪問への対処法と録音の有効性

何度も訪問されたり、長時間インターホンを鳴らされたりする場合は、以下の対処法が有効です。

  • 訪問を記録する:日時・訪問員の特徴・会話内容をメモし、後での証拠として残しましょう。
  • 録音する:スマホで会話を録音し、「録音しています」と伝えると訪問員が慎重になります。
  • 消費生活センターに相談する:しつこい訪問や不当な対応は、消費者ホットライン188で相談できます。
  • 警察に相談する:脅しや居座りがあれば、警察の#9110へ相談。緊急時は110番を利用できます。
  • NHKふれあいセンターに苦情を入れる:NHK0570-077-077へ連絡し、訪問員の問題行為を報告して改善を求めましょう。

また、玄関に「NHK訪問お断り」のステッカーを貼ることも一定の効果があります。

市販されているほか、インターネットでダウンロードできるテンプレートもあります。

賃貸契約とNHK受信料に関するよくある質問

賃貸契約とNHK受信料について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。

Q

賃貸契約時にNHK契約を断ると入居できない?

A

入居は問題なくできます。賃貸契約とNHK受信契約はまったく別の契約であり、NHK契約をしないことを理由に入居を拒否することはできません。

「NHK契約は必須です」と説明する行為は宅建業法の誤認勧誘に該当する可能性があります。

実際にNHK契約を断ったことで入居できなかった例はほぼありません。

もしそのような説明を受けた場合は、消費生活センターや宅建指導課に相談するか、別の仲介会社を通じて契約することも可能です。

Q

前の住人のNHK契約は引き継ぐ必要がある?

A

前の住人のNHK契約を引き継ぐ必要はありません。

NHK受信契約は「世帯ごとの契約」であり、物件に紐づくものではないため、前入居者の契約状況は新しい住人に一切関係ありません。

請求書が届いた場合は「宛先不在」とNHKに伝えれば停止されます。未払い金を支払う義務もありません。

逆に自分が転居する際は、住所変更または解約手続きを行わない限り旧住所に請求が届き続けるため注意が必要です。

Q

テレビ設置後はいつから契約義務が発生する?

A

NHK受信契約の義務は、テレビなどの受信設備を「設置した日」から発生します。

ただしNHKが設置日を正確に把握することは困難なため、設置直後に連絡する必要はありません。

訪問員に設置日を聞かれても答える義務はなく、「最近です」程度で問題ありません。

受信料の支払いは契約した月の翌月から始まるため、契約前の期間までさかのぼって請求されることもありません。

Q

賃貸の管理会社がまとめて契約していることはある?

A

現在では非常に稀ですが、社宅や学生寮などで管理会社がNHKと一括契約しているケースが過去にはありました。

ただし現在は個別契約が主流で、多くの賃貸物件にその仕組みはありません。

もし管理費にNHK受信料が含まれている可能性がある場合は、契約書の管理費内訳を確認しましょう。

また、ケーブルテレビ加入が必須で、受信料が含まれている物件もあるため、疑問があれば管理会社に直接確認することが重要です。

Q

契約してしまった後でも解約できる?

A

NHK受信契約は、受信設備をすべて廃止すれば解約できます。

テレビやワンセグ対応端末、チューナー付きPCなど、受信機器が一切ない状態であることが条件です。

解約手続きは「NHKふれあいセンター」への連絡で行い、必要に応じてテレビの処分証明などの書類提出が求められます。

書類がなくても解約できる場合はありますが、証明があれば手続きがよりスムーズです。未払いがある場合は精算後に契約終了となります。

まとめ

賃貸契約時にNHK受信料の契約を求められても、法的には強制ではなく、断ることができます。

不動産会社から勧められる背景には業者側の経済的メリットがありますが、入居者に契約義務はありません。

以下の重要なポイント押さえておきましょう。

  • 賃貸契約とNHK契約は別物で強制力なし
  • 不動産会社は仲介手数料を受け取るため勧誘
  • 契約書類のNHK申込書は提出しなくてOK
  • 入居後の訪問員対応はインターホン越しが基本
  • テレビ設置時のみ契約義務が発生する

NHK受信契約は、テレビなどの受信設備を設置した時点で初めて義務が発生するものであり、賃貸契約の成立とは無関係です。

不動産会社から「必須です」と言われても、法的根拠がないことを理解し、毅然とした態度で断ることが大切です。

もし契約を迫られて困った場合は、消費生活センター(188)や都道府県の宅建業指導課に相談しましょう。

正しい知識を持つことで、不要な契約を避け、安心して新生活をスタートできます。