マンション外壁塗装の完全ガイド|費用・時期・塗料の種類・業者選びまで詳しく解説【保存版】

マンションの外壁塗装は、建物の美観を保つだけでなく、大切な資産を守るための重要なメンテナンスです。

しかし、いざ外壁塗装を検討しようとすると、「費用はどのくらいかかるのか」「どのタイミングで行えばよいのか」「どの塗料を選べばよいのか」など、多くの疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。

この記事では、マンション外壁塗装の基礎知識から費用相場、最適な実施時期、塗料の種類と選び方、そして信頼できる業者の選び方まで、分かりやすく丁寧に解説していきます。

マンションの管理組合の方、オーナー様、そして外壁塗装について知りたいとお考えのすべての方に、安心して計画を進めていただけるよう、実践的な情報をお届けします。

目次

マンション外壁塗装とは?必要性と重要な役割

マンション外壁塗装とは、建物の外壁に塗料を塗り直すメンテナンス工事のことです。単なる美観の回復だけでなく、建物全体を保護するという重要な役割を担っています。

外壁塗装には主に3つの重要な役割があります。

  • 防水機能
  • 美観の維持と向上
  • 資産価値の保全

第一に、建物を雨水や紫外線から守る防水機能です。

塗膜が劣化すると、ひび割れなどから雨水が浸入し、コンクリート内部の鉄筋が錆びて建物の構造にダメージを与える可能性があります。

第二に、美観の維持と向上です。

経年劣化により色褪せや汚れが目立つようになった外壁を塗り直すことで、建物の印象が大きく変わります。特に賃貸マンションの場合、外観の美しさは入居率に直結する重要な要素となります。

第三に、資産価値の保全です。

適切な時期に外壁塗装を行うことで、建物の劣化を防ぎ、長期的な資産価値を維持することができます。

マンション特有の外壁塗装の特徴

マンションの外壁塗装は、戸建て住宅とは異なる特徴があります。まず、工事規模が大きく、工期も長くなる点です。

50戸未満のマンションでも1~2ヶ月、50戸以上では2~3ヶ月以上かかることが一般的です。

また、居住者への配慮が不可欠です。工事中は窓の開閉制限や洗濯物を干せない期間が発生するため、事前の十分な説明と理解が必要になります。

さらに、管理組合での合意形成や修繕積立金の準備など、計画的な進行が求められます。

マンション外壁塗装の最適な時期|周期と劣化のサイン

マンションの外壁塗装をいつ行うべきか、多くの方が悩まれるポイントです。

適切なタイミングを見極めることで、建物を効果的に保護し、長期的なコスト削減にもつながります。

国土交通省が示す標準的な周期

国土交通省が公表している「長期修繕計画作成ガイドライン」では、外壁塗装のメンテナンス周期は12年が目安とされています。

これは、一般的に使用されるシリコン系塗料の実用的な耐用年数が約10~13年程度であることに基づいています。

ただし、この12年という数字はあくまでも目安であり、必ずこの周期で実施しなければならないわけではありません。

実際には、建物の立地環境、使用されている塗料の種類、前回の施工品質などによって、最適な塗り替え時期は変わってきます。

周期だけでなく、外壁の劣化症状を確認することが重要です。

以下のような症状が見られたら、専門業者による詳細な診断を検討しましょう。

塗り替えが必要な劣化症状チェックリスト
  • チョーキング現象
    外壁を手で触ると白い粉が付く症状です。塗膜が紫外線によって劣化し、塗料の成分が粉状になっている状態で、防水機能が低下しているサインです
  • 色褪せ・変色
    特に日当たりの良い南面や西面で顕著に現れます。美観の問題だけでなく、塗膜の劣化が進行している証拠です
  • ひび割れ(クラック)
    幅0.3mm以上のひび割れは要注意です。そこから雨水が浸入し、内部の劣化を加速させる可能性があります
  • 塗膜の剥がれ・浮き
    塗装面が剥がれたり浮いたりしている箇所があれば、早急な対応が必要です
  • カビ・コケ・藻の発生
    日当たりの悪い面や湿気の多い場所に発生しやすく、防水機能の低下を示しています
  • タイルの浮き・剥がれ
    タイル外壁の場合、タイルが浮いたり剥がれたりしている箇所は危険です
  • シーリング(コーキング)の劣化
    目地部分のシーリングにひび割れや痩せが見られる場合、防水性能が失われています

これらの症状が複数見られる場合は、12年を待たずに外壁塗装を検討することをおすすめします。

早期発見・早期対応が、建物を長持ちさせる秘訣です。

季節による施工時期の選び方

外壁塗装工事は、雨の日には施工できません。そのため、比較的天候が安定している時期を選ぶことで、工期の遅れを最小限に抑えることができます。

一般的に、春(3月~5月)と秋(9月~11月)が外壁塗装に適した季節とされています。

これらの時期は気温や湿度が安定しており、塗料の乾燥にも適した環境です。

梅雨時期や真冬は工期が延びる可能性が高くなるため、スケジュールに余裕を持った計画が必要です。

マンション外壁塗装の費用相場|階数別の目安と内訳

外壁塗装を検討する際に最も気になるのが費用ではないでしょうか。マンションの外壁塗装費用は、建物の規模や使用する塗料によって大きく変動します。

ここでは、具体的な費用相場と、費用を構成する要素について詳しく解説します。

階数・戸数別の費用相場

マンション外壁塗装の費用は、一般的に「建物の階数×100万円」前後が目安とされています。

ただし、同じ階数でも戸数や建物の形状、外壁面積によって費用は変動しますので、あくまでも参考値としてご理解ください。

階数費用相場
3階建て130~410万円
4階建て340~550万円
5階建て450~670万円
6階建て540~820万円
7階建て630~950万円

費用の幅が大きいのは、使用する塗料のグレードや建物の劣化状況、下地処理の程度によって大きく変わるためです。

外壁塗装の費用内訳

外壁塗装の費用は、主に以下の項目で構成されています。

  • 足場設置・解体費用(全体の約15~20%):マンションの規模が大きいほど足場費用も増加
  • 高圧洗浄費用:外壁の汚れを落とすための重要な工程
  • 下地処理費用:ひび割れ補修、シーリング打ち替えなど、外壁の状態によって費用が変わる
  • 塗装費用(全体の約30~40%):使用する塗料の種類によって大きく変動する部分
  • 諸経費:養生、現場管理費、廃材処理費など

このうち、塗料のグレード選択が総費用に最も大きく影響します。

安価な塗料を選べば初期費用は抑えられますが、耐用年数が短くなるため、次回の塗り替えまでの期間も短くなります。長期的な視点でのコスト計算が重要です。

塗料別の費用相場|平米単価での目安と耐用年数

外壁塗装の費用は、平米単価で計算されることも多くあります。塗料の種類別の平米単価の目安は以下の通りです。

塗料の種類耐用年数平米単価(目安)
シリコン塗料約10~13年2,300~3,500円/㎡
ラジカル制御塗料約12~15年2,500~3,500円/㎡
フッ素塗料約15~20年3,500~4,800円/㎡
無機塗料約15~25年4,000~5,500円/㎡

これらの単価には、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが含まれていますが、足場費用や下地処理費用は別途必要です。

見積もりを取る際の注意点
  • 適正価格を知るために、3~5社の相見積もりを取る
  • 総額だけでなく、塗料名・施工面積・工程内訳の明記を確認する
  • 「一式」表記が多い見積書は不透明でトラブルの原因になる

マンション外壁塗装に使われる塗料の種類と選び方

マンション外壁塗装の品質と耐久性を左右する最も重要な要素が塗料の選択です。

現在、さまざまな種類の塗料が開発されており、それぞれに特徴や価格、耐用年数が異なります。

ここでは、マンションに最適な塗料を選ぶためのポイントを解説します。

マンション外壁塗装で一般的に使用される塗料は、主に以下の4種類です。

塗料の種類耐用年数平米単価(目安)特徴・メリット
シリコン塗料約10~13年2,300~3,500円/㎡価格と性能のバランスが良い。最も採用率が高い。防汚性・耐候性も安定。迷ったらこれ。
ラジカル制御塗料約12~15年2,500~3,500円/㎡劣化の原因「ラジカル」の発生を抑える次世代塗料。シリコン同等価格でさらに長持ち。
フッ素塗料約15~20年3,500~4,800円/㎡高耐候・高耐久。紫外線に非常に強い。大型マンション・ビル向け。塗り替え回数を減らせる。
無機塗料約15~25年4,000~5,500円/㎡最高級グレード。紫外線劣化に極めて強く、不燃性・防汚性も高い。超長期維持向け。

主要な塗料の種類と特徴|シリコン塗料

価格と性能のバランスに最も優れた塗料で、現在最も多くのマンションで採用されています。耐用年数は約10~13年で、耐候性や防汚性に優れています。費用を抑えつつ一定の品質を確保したい場合に適しています。

平米単価は2,300~3,500円程度で、コストパフォーマンスの高さから「迷ったらシリコン」と言われるほど信頼性の高い選択肢です。

主要な塗料の種類と特徴|ラジカル制御塗料

2012年に登場した比較的新しい塗料で、塗膜の劣化原因となるラジカル(劣化因子)の発生を抑える機能を持っています。耐用年数は約12~15年で、シリコン塗料とほぼ同等の価格帯ながら、より長持ちする点が魅力です。

平米単価は2,500~3,500円程度で、シリコン塗料の次世代版として注目を集めています。

主要な塗料の種類と特徴|フッ素塗料

高い耐候性と耐久性を誇る高級塗料です。耐用年数は約15~20年と長く、紫外線に強く、汚れが付きにくい性質があります。ビルや大型マンションなど、頻繁な塗り替えが難しい建物に適しています。

平米単価は3,500~4,800円程度とやや高価ですが、長期的なメンテナンスコストを考えると経済的な選択となる場合があります。

主要な塗料の種類と特徴|無機塗料

最も耐久性に優れた最高級塗料で、耐用年数は約15~25年です。鉱物などの無機成分を配合しており、紫外線による劣化に極めて強く、汚れにくく、不燃性も高いという特徴があります。

平米単価は4,000~5,500円程度と最も高価ですが、超長期的な視点でマンションを維持したい場合に最適です。

塗料の選び方について

どの塗料を選ぶべきか迷った際は、以下の3つの視点から判断しましょう。

塗料選びの3つの判断基準
  1. ランニングコストで考える
  2. 建物の立地環境に合わせる
  3. 機能性塗料という選択肢

塗料の選び方1.ランニングコストで考える

初期費用だけでなく、トータルコストで判断することが重要です。例えば、30年間マンションを維持する場合、シリコン塗料なら約3回の塗り替えが必要ですが、フッ素塗料なら2回で済みます。

耐用年数が短い塗料は初期費用が安くても、塗り替え回数が増えるため、長期的には高コストになる可能性があります。マンションをあと何年維持したいかを考えて選択しましょう。

塗料の選び方2.建物の立地環境に合わせる

マンションの立地環境によって、最適な塗料が変わります。

  • 海沿いのマンション:塩害対策として耐候性の高いフッ素塗料や無機塗料がおすすめです
  • 日当たりが良い場所:紫外線の影響を受けやすいため、ラジカル制御塗料やフッ素塗料が適しています
  • 交通量の多い道路沿い:排気ガスによる汚れが付きやすいため、防汚性の高い塗料を選びましょう
  • 湿気の多い環境:防カビ・防藻性能の高い塗料が効果的です

塗料の選び方3.機能性塗料という選択肢

近年は、単に外壁を保護するだけでなく、付加価値を提供する機能性塗料も登場しています。

  • 遮熱塗料:太陽光を反射し、夏場の室温上昇を抑える効果があります。最上階の住戸の暑さ対策に有効です
  • 断熱塗料:夏は涼しく、冬は暖かく保つ効果があり、冷暖房費の削減につながります
  • 光触媒塗料:太陽光と雨の力で汚れを自動的に分解・洗浄するセルフクリーニング機能を持っています

これらの機能性塗料は一般的な塗料よりもやや高価ですが、入居者の満足度向上や環境への配慮をアピールできるというメリットがあります。賃貸マンションのオーナー様には特に検討価値のある選択肢です。

マンション外壁塗装の工事の流れと期間

外壁塗装工事がどのように進むのか、事前に理解しておくことで、居住者への説明もスムーズになり、トラブルを未然に防ぐことができます。

外壁塗装は、以下の順序で進行します。各工程がしっかりと行われることが、仕上がりの品質と耐久性を左保します。

  1. STEP

    足場の設置・養生シート取り付け

    工事の最初のステップは足場の組み立てです。マンション全体を覆うように足場を設置し、飛散防止のためのメッシュシートで覆います。

    この工程では金属音による騒音が発生します。近隣住民への事前通知が重要です。足場設置には通常2~3日程度かかります。

  2. STEP

    高圧洗浄

    専用の高圧洗浄機を使用して、外壁全体の汚れやカビ、古い塗膜の浮きなどを徹底的に洗い流します。この工程が不十分だと、新しい塗料の密着性が低下し、剥がれの原因となります。

    高圧洗浄中は水しぶきが飛散するため、窓を開けることができません。また、洗浄の音もかなり大きいため、居住者への事前説明が必要です。

  3. STEP

    下地処理・補修

    ひび割れの補修、欠損部分の修復、サビの除去など、外壁の状態を整える重要な工程です。下地処理の丁寧さが塗装の持ちを大きく左右します

    特に、目地のシーリング(コーキング)の打ち替えや打ち増しは、防水性能を維持するために欠かせない作業です。劣化が激しい場合は、高圧洗浄と下地処理の順番が入れ替わることもあります。

  4. STEP

    養生作業

    塗料が付いてはいけない部分(窓ガラス、サッシ、給排水管、エアコン室外機など)をビニールシートやテープで保護します。

    養生が完了すると、窓の開閉ができなくなります。塗装作業が終わるまで数日から1週間程度、窓を開けられない期間が続くため、居住者への配慮が必要です。

  5. STEP

    下塗り

    外壁と上塗り塗料の密着性を高め、塗装面を平滑に整えるための下塗り材を塗布します。下塗りは外壁材の種類や状態に応じて、適切な材料を選択します。

    下塗りの色は通常、上塗り塗料とは異なる色を使用することで、塗り残しを防ぎます。しっかりと乾燥させてから次の工程に進むことが重要です。

  6. STEP

    中塗り・上塗り

    外壁塗装の仕上げとなる工程です。基本的に3回塗り(下塗り・中塗り・上塗り)が標準で、それぞれの塗装の間には十分な乾燥時間を確保します。

    中塗りと上塗りには同じ塗料を使用することが一般的です。2回塗り重ねることで、均一で厚みのある塗膜を形成し、耐久性を高めます。

    各塗装工程の間に、塗料メーカーが指定する乾燥時間(通常4~24時間程度)を守っているかが、品質を左右する重要なポイントです。

  7. STEP

    付帯部分の塗装

    外壁だけでなく、鉄部(階段、手すり、ベランダの柵など)、雨樋、破風板、庇なども塗装します。これらの付帯部分の塗装も、建物全体の美観と保護に重要な役割を果たします。

  8. STEP

    養生撤去・足場解体・最終確認

    すべての塗装が完了し、十分に乾燥したら、養生シートやテープを取り外します。この段階で、ようやく窓の開閉が可能になります。

    最後に、施工業者と発注者(管理組合やオーナー)が一緒に仕上がりを確認します。塗り残しや不具合がないかをチェックし、問題がなければ足場を解体して工事完了となります。

工事期間の目安

マンション外壁塗装の工事期間は、建物の規模によって大きく変わります。

  • 50戸未満のマンション:約1~2ヶ月
  • 50戸以上のマンション:約2~3ヶ月
  • 大規模マンション:3ヶ月以上かかる場合もあります

また、工事は雨の日には実施できないため、梅雨時期や台風シーズンは工期が延びる可能性があることを考慮しておきましょう。

工事中の生活への影響

外壁塗装工事中も、マンションの居住者は通常通り生活できますが、以下のような制限があることを理解しておきましょう。

  • 窓の開閉制限:養生期間中(通常5~10日程度)は窓を開けられません
  • 洗濯物を外に干せない:工事期間中はベランダに洗濯物を干すことができません
  • 駐車場の一部使用制限:足場設置のため、一部の駐車スペースが使えなくなる場合があります
  • 通行経路の変更:安全確保のため、普段とは異なる出入り口を使用することがあります
  • 塗料の臭い:特に油性塗料を使用する場合、臭いが気になることがあります。近年は臭いの少ない水性塗料も普及しています

これらの制限について、工事開始の1ヶ月前には全居住者に詳細なスケジュールと共に周知し、理解と協力を得ることが、トラブルのない工事進行の鍵となります。

信頼できる外壁塗装業者の選び方

マンションの外壁塗装は高額な投資であり、建物の将来を左右する重要な工事です。だからこそ、信頼できる業者選びが成功の最大のポイントとなります。

しかし、外壁塗装業界には残念ながら技術力が不足している業者や、不適切な施工を行う業者も存在します。

ここでは、優良業者を見分けるためのチェックポイントをご紹介します。

外壁塗装業者の選び方のポイント
  1. マンション施工の実績が豊富か
  2. 自社施工かどうか
  3. 有資格者が在籍しているか
  4. 詳細な見積書を提出するか
  5. 保証内容とアフターフォローが充実しているか
  6. 説明が丁寧で質問に的確に答えられるか
  7. 複数社から相見積もりを取っているか

それぞれ詳しく解説していきます。

優良業者を見分けるポイント1.マンション施工の実績が豊富か

戸建て住宅とマンションでは、工事の規模も進行管理の方法も大きく異なります。マンションや集合住宅の外壁塗装実績が豊富な業者を選びましょう。

ホームページや資料で過去の施工事例を確認し、自分のマンションと似た規模や構造の実績があるかをチェックします。可能であれば、実際に施工したマンションを見学させてもらうのも良い方法です。

優良業者を見分けるポイント2.自社施工かどうか

見積もりを出した会社が実際に工事を行うのか、それとも下請け業者に丸投げするのかは重要なポイントです。自社で職人を抱えて施工する業者の方が、品質管理がしやすく、トラブル時の対応もスムーズです。

また、中間マージンが発生しないため、同じ品質でも費用を抑えられる可能性があります。

優良業者を見分けるポイント3.有資格者が在籍しているか

外壁塗装の技術と知識を証明する資格として、一級塗装技能士外装劣化診断士などがあります。これらの資格を持つ職人が在籍しているかを確認しましょう。

また、大規模な工事を行うためには「建設業許可」が必要です。500万円以上の工事を請け負う場合は、塗装工事業の建設業許可を取得している業者でなければなりません。

優良業者を見分けるポイント4.詳細な見積書を提出するか

優良業者は、工程ごとの詳細な見積書を作成します。「外壁塗装一式」といった曖昧な表記ではなく、以下のような項目が明確に記載されているかを確認しましょう。

  • 足場設置・解体費用(面積と単価)
  • 高圧洗浄費用(面積と単価)
  • 下地処理費用(内容と箇所数)
  • シーリング工事(打ち替え・打ち増しの区別と延長メートル)
  • 塗装費用(使用する塗料のメーカー名・商品名、塗布面積、単価)
  • 付帯部塗装(箇所と内容)
  • 諸経費の内訳

また、実際に現地調査を行い、実測に基づいた見積もりを作成しているかも重要なポイントです。

優良業者を見分けるポイント5.保証内容とアフターフォローが充実しているか

工事完了後のトラブルに備えて、工事保証の内容を必ず確認しましょう。一般的に5~10年程度の保証が付きますが、保証期間だけでなく、保証の範囲(施工不良による不具合のみか、経年劣化も含むかなど)も重要です。

また、定期的な点検サービスがあるかどうかも、長期的な建物維持の観点から確認しておきたいポイントです。

優良業者を見分けるポイント6.説明が丁寧で質問に的確に答えられるか

専門知識が豊富で、分かりやすく丁寧に説明してくれる業者は信頼できます。こちらの質問や不安に対して、専門用語ばかり使わず、理解しやすい言葉で答えてくれるかをチェックしましょう。

また、メリットだけでなく、デメリットやリスクについてもきちんと説明してくれる業者は誠実です。都合の良いことばかり言う業者には注意が必要です。

優良業者を見分けるポイント7.複数社から相見積もりを取っているか

適正な価格と工事内容を判断するためには、必ず3~5社程度から見積もりを取ることをおすすめします。

ただし、単純に最も安い業者を選ぶのは危険です。極端に安い見積もりは、必要な工程を省略していたり、安価で低品質な材料を使用していたりする可能性があります。価格だけでなく、提案内容や業者の対応を総合的に判断しましょう。

避けるべき業者の特徴
  • 訪問販売で強引に契約を迫る
    「今なら特別価格」「今日契約すれば値引き」などと急かす業者は要注意です
  • 大幅な値引きを提示する
    「定価300万円を今なら150万円に」といった極端な値引きは、元の金額が架空の可能性があります
  • 不安を煽る
    「このままでは危険」「すぐに工事しないと建物が倒壊する」など、過度に不安を煽る業者は信用できません
  • 会社情報が不明確
    ホームページがない、事務所の所在地が不明、固定電話がないなど、実態が把握しにくい業者は避けましょう
  • 契約を急がせる
    十分な検討期間を与えず、すぐに契約書へのサインを求める業者は危険です

このような特徴がある業者は避けた方が安全です。

マンションの外壁塗装は大きな投資です。時間をかけて慎重に業者を選び、納得できる契約を結ぶことが、後悔しない外壁塗装の第一歩です。

マンション外壁塗装で知っておきたいポイントと注意事項

マンションの外壁塗装は、費用や業者選びだけでなく、工事中の生活への影響や事前準備、資金計画、近隣対応など、押さえておくべき実務的なポイントが多くあります。

特にマンションは戸数が多く、合意形成や説明会、工事中の配慮が欠かせません。

ここでは、外壁塗装をスムーズに進め、トラブルや追加費用を防ぐために、管理組合やオーナーが知っておきたい重要な注意点を分かりやすくまとめて解説します。

マンション外壁塗装のポイント1.居住者・近隣への配慮と説明会の重要性

マンションの外壁塗装では、居住者の理解と協力が不可欠です。工事が始まってからトラブルになることを避けるため、事前の丁寧な説明が重要です。

説明会の実施タイミングと内容
  • 工事の目的と必要性
  • 工事期間と具体的なスケジュール
  • 日常生活への影響(窓の開閉制限、洗濯物、騒音など)
  • 工事中の注意事項と協力のお願い
  • 緊急時の連絡先
  • 使用する塗料の安全性

工事開始の1~2ヶ月前には、全居住者を対象とした説明会を開催することをおすすめします。説明会では以下の内容を明確に伝えましょう。

また、説明会に参加できなかった居住者には、資料を配布し、個別に質問を受け付ける体制を整えておくことも大切です。

近隣住民への挨拶

工事中は足場設置の音や塗料の臭いなど、近隣にも影響が及びます。

工事開始前に、施工業者と一緒に近隣住民へ挨拶回りを行い、工事の内容と期間を説明しておくことで、苦情やトラブルを未然に防ぐことができます。

マンション外壁塗装のポイント2.修繕積立金と資金計画

マンションの外壁塗装には多額の費用がかかるため、計画的な資金準備が必要です。

修繕積立金の目安

国土交通省が公表している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、外壁塗装などの大規模修繕に備えて、修繕積立金を計画的に積み立てることを推奨しています。

一般的な目安として、平米あたり月額200~250円程度の修繕積立金が必要とされています。ただし、マンションの規模や築年数によって適切な金額は変わりますので、長期修繕計画に基づいた資金計画を立てることが重要です。

助成金・補助金の活用

自治体によっては、外壁塗装や大規模修繕に対して助成金や補助金を提供している場合があります。多くの場合、工事費用の10~20%程度、上限10~30万円の補助が受けられます。

ただし、助成金には申請期限や条件があり、工事開始前に申請が必要なケースがほとんどです。工事を検討する際は、早めに自治体の窓口に確認することをおすすめします。

マンション外壁塗装のポイント3.税務上の取り扱い(オーナー様向け)

賃貸マンションのオーナー様にとって、外壁塗装費用が「修繕費」として経費計上できるか、それとも「資本的支出」として減価償却の対象になるかは重要な問題です。

修繕費として計上できるケース

建物の原状回復や維持管理を目的とした外壁塗装は、修繕費として一括で経費計上できます。同じグレードの塗料で塗り替える場合や、色褪せ・雨漏りの修理などは、基本的に修繕費として認められます。

資本的支出となるケース

これまでよりもグレードの高い塗料を使用した場合や、遮熱・断熱などの新たな機能を付加した場合は、資産価値が向上したと判断され、資本的支出として減価償却の対象となる可能性があります。

ただし、上質な材料を使用した場合でも、通常のグレードの塗料相当額は修繕費として認められ、差額のみが資本的支出となるケースもあります。判断に迷う場合は、税理士に相談することをおすすめします。

マンション外壁塗装のポイント4.外壁塗装以外に検討すべき工事

外壁塗装を行う際は、足場を設置する機会を活用して、他のメンテナンスも同時に行うことでコストを削減できます。

  • 屋上・ベランダの防水工事:防水層の劣化は雨漏りの原因となります。外壁塗装と同じタイミングで実施するのが効率的です
  • 鉄部の防錆塗装:階段、手すり、避難はしごなどの鉄部も定期的な塗装が必要です
  • タイルの浮き補修:タイル外壁の場合、浮きや剥がれを放置すると落下事故につながる危険があります
  • シーリング(コーキング)の打ち替え:目地部分のシーリングも外壁塗装と同じタイミングでメンテナンスするのが理想的です

これらの工事を別々に行うと、その都度足場を設置する必要があり、結果的に総費用が高くなります。長期修繕計画を見直し、効率的な工事計画を立てましょう。

マンション外壁塗装のポイント5.工事中のトラブル防止策

外壁塗装工事中に起こりやすいトラブルとその防止策を知っておくことも重要です。

塗料の臭いへの対策

特に油性塗料を使用する場合、シンナーの臭いが気になることがあります。臭いに敏感な方や小さなお子様、ペットがいるご家庭には、臭いの少ない水性塗料の使用を検討しましょう。

また、換気ができない期間があるため、エアコンの使用や空気清浄機の活用など、事前に対策を考えておくと安心です。

プライバシーへの配慮

足場を設置すると、職人が窓の近くで作業することになります。カーテンやブラインドを閉めておくよう居住者に案内し、プライバシーを保護しましょう。

また、ベランダに置いてある私物(植木鉢、物干し竿など)は事前に室内に移動してもらう必要があります。移動が難しいものがある場合は、施工業者と相談して対応を決めておきます。

マンション外壁塗装工事でよくある質問(FAQ)

マンションの外壁塗装工事は費用も規模も大きく、管理組合やオーナー様は多くの疑問を抱えがちです。

特に「いつ実施すべきか」「どの塗料を選べばよいか」「居住者への影響はどの程度か」など、計画段階で確認しておくべきポイントは少なくありません。

ここでは、外壁塗装の検討中によく寄せられる質問をまとめ、工事の流れや費用、生活への影響など、押さえておくべき疑問にわかりやすく回答していきます。

Q

マンション外壁塗装は何年ごとに行うのが適切ですか?

A

一般的な目安は12年前後ですが、チョーキングやひび割れなど劣化サインが出た場合は周期に関係なく早めの実施が推奨されます。

Q

外壁塗装の工事期間はどのくらいかかりますか?

A

50戸未満で約1〜2ヶ月、50戸以上なら2〜3ヶ月程度が目安です。天候によって工期が延びる可能性もあります。

Q

工事中、居住者の生活にどんな影響がありますか?

A

窓の開閉制限、洗濯物を外に干せない期間、騒音、足場設置によるプライバシー低下などが発生します。事前説明が重要です。

Q

外壁塗装の費用はどれくらいかかりますか?

A

建物規模や塗料によって変動しますが、3階建てで130〜410万円、6階建てで540〜820万円程度が一般的です。相見積もりが必須です。

Q

どの塗料を選べばよいですか?

A

シリコン・ラジカル制御・フッ素・無機塗料などがあります。予算、耐久性、立地条件(海沿い・日当たりなど)で最適な選択が異なります。

マンション外壁塗装について|まとめ

マンションの外壁塗装は、建物の美観を保ち、構造を守り、資産価値を維持するための重要なメンテナンスです。

この記事で紹介した内容を振り返り、押さえておきたいポイントをまとめます。

  • 実施周期:外壁塗装は約12年が目安。劣化状況を見ながら最適な時期に実施する
  • 劣化のサイン:チョーキング・色褪せ・ひび割れ・剥がれがあれば早めに専門業者へ相談
  • 費用相場:3階建て130~410万円、6階建て540~820万円。複数社で相見積もりを取る
  • 塗料選び:シリコン・ラジカル・フッ素・無機から予算と耐久性で選ぶ
  • 業者選び:マンション実績のある自社施工業者を選び、見積もり内容と保証を比較する
  • 居住者配慮:工事前に説明会を開き、影響とスケジュールを事前共有してトラブルを防ぐ

マンションの外壁塗装を成功させるためには、以下の3つの心構えが重要です。

まず、計画性を持つことです。外壁塗装は思い立ってすぐに実施できるものではありません。長期修繕計画に基づいて資金を準備し、適切な時期に実施できるよう計画的に進めましょう。

次に、情報収集と比較検討を怠らないことです。この記事で得た知識を基に、複数の業者から提案を受け、納得できる選択をしてください。焦って決断せず、じっくりと検討する時間を持つことが後悔しない外壁塗装につながります。

そして、専門家の意見を積極的に取り入れることです。分からないことや不安なことがあれば、遠慮せずに専門業者に質問し、アドバイスを求めましょう。信頼できる業者は、あなたの疑問に丁寧に答えてくれるはずです。

マンションの外壁塗装は、建物と居住者の快適な暮らしを守るための大切な投資です。

この記事が、皆様のマンション外壁塗装の計画と実施において、少しでもお役に立てれば幸いです。

適切なメンテナンスによって、マンションが長く美しく、そして安全に保たれることを願っています。