マンションのメンテナンスで資産価値を守る!タイミングから費用相場・スケジュール計画を解説
2025/11/21
マンションを長く快適に住み続けるには、適切なメンテナンスが欠かせません。
しかし「いつ、何をすればいいのか分からない」「共用部分と専有部分の違いは?」「費用はどのくらいかかるの?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
マンションのメンテナンスは、一戸建てとは異なり、管理組合が担当する共用部分と、区分所有者が自己負担する専有部分に分かれています。
それぞれで実施時期や費用負担が大きく異なるため、正しい知識を持つことが資産価値を守る第一歩です。
本記事では、マンションのメンテナンスの基礎知識から実施時期、費用相場、年間スケジュール、そして長期修繕計画の立て方まで、初心者の方にも分かりやすく完全解説します。
- マンションの寿命とメンテナンスの関係
- 共用部分と専有部分の違いと責任範囲
- 大規模修繕の実施時期と周期
- 年間・築年数別のメンテナンススケジュール
- 修繕積立金や大規模修繕の費用相場
- 管理規約の確認ポイントと業者選定の注意点
目次
マンションのメンテナンスにおける寿命はどのくらい?
マンションは適切なメンテナンスを行うことで、想像以上に長く住み続けることができます。
ここでは、マンションの寿命とメンテナンスの関係について詳しく見ていきましょう。
マンションのメンテナンス次第で100年以上維持できる
鉄筋コンクリート造のマンションは、適切なメンテナンスを続ければ100年以上の耐用性を持つといわれています。
国土交通省の調査で平均寿命は68年ですが、構造体としての鉄筋コンクリートは120年、外装仕上げ次第で150年に達することもあります。
よく聞く「法定耐用年数47年」は税制上の数字であり、実際の寿命とは無関係と言えます。
47年を超えても問題なく住み続けられます。設備や配管を計画的に更新し、定期点検を怠らなければ長寿命化は十分可能です。
マンションのメンテナンスが必要な設備の寿命
マンション本体は長寿命でも、設備には明確な寿命があります。
配管設備は10〜30年で劣化しやすく、詰まり・腐食を防ぐには定期更新が必須です。エレベーターも10〜30年で大規模修繕が必要となり、部品の供給終了で修理不能になることもあります。
機械式駐車場は故障が多く、更新費用が高額になりがちです。給湯器や排水管などの水回り設備も10〜20年が交換目安。
こうした設備が先に寿命を迎え、建て替えの判断に影響するケースも増えています。
外装だけでなく、設備管理を計画的に行うことが重要です。
マンションのメンテナンスを怠った場合のリスク
メンテナンス不足で老朽化が進むと、建て替え・売却・放置の3つが選択肢になります。
建て替えは区分所有者の5分の4以上の賛成が必要で、解体費・建築費など住民負担が大きいため実現は困難です。
実際、全国約19,200戸のうち建て替え実施は244件のみとごくわずか。
売却も解体費を差し引くため利益は少なく、合意形成も難しくなりがちです。
その結果、老朽化を放置せざるを得ないケースも増加しています。
築40年以上のマンションは今後急増予定で、建て替え要件の緩和議論も進みつつある状況です。
マンションのメンテナンスは共用部分と専有部分で担当が異なる
マンションのメンテナンスを理解するうえで、最も重要なのが共用部分と専有部分の違いです。
それぞれで管理担当者や費用負担が明確に分かれています。
マンションのメンテナンスにおける共用部分とは
共用部分とは、住人全員が共有して使用するエントランス・共用廊下・階段・エレベーター・駐車場・管理人室などのエリアを指します。
これらはマンションの躯体を含むため、管理組合が点検や修繕を実施し、維持管理するのが基本です。
費用は個人負担ではなく、管理費や修繕積立金から計画的に支出される仕組みになっています。
管理組合は長期修繕計画に沿って適切なメンテナンスを行い、マンション全体の資産価値と住環境を維持する役割を担います。
共用部分のメンテナンスは、建物寿命を延ばすうえで欠かせない重要な取り組みです。
マンションのメンテナンスにおける専有部分とは
専有部分とは、区分所有者が単独で所有する住戸内のスペースで、間仕切り壁(内側)、床材、室内ドア、キッチン、浴室、トイレ、洗面台、クローゼットなどが該当します。
これらのメンテナンスは区分所有者が自己負担で行う必要があり、修繕積立金の対象外です。
壁紙の張り替えや床材変更など、規約の範囲内で自由にリフォームできますが、工事内容によっては管理組合への届出が必要です。
専有部分の工事を勝手に行うとトラブルになるため、事前に管理規約を確認し、必要に応じて管理組合へ相談することが重要です。
マンションの共用部分と専有部分における違い
以下に、共用部分と専有部分の違いを表でまとめました。
| 項目 | 共用部分 | 専有部分 |
|---|---|---|
| 定義 | 住民全員で共有する部分。 建物の構造体や共用施設など。 | 区分所有者が単独で 所有する住戸内部の部分。 |
| 主な該当箇所 | 建物の躯体・エントランス・ 共用廊下・階段・エレベーター・ 管理人室・駐車場など | 間仕切り壁(内側)・フローリング・ 室内ドア・キッチン・浴室・ トイレ・洗面台・クローゼット・ 玄関扉の錠など |
| 管理主体 | 管理組合が 管理・修繕を担当 | 区分所有者自身が管理・修繕する |
| メンテナンス費用 | 管理費・修繕積立金から 支出(全住民で負担) | 区分所有者が必要に応じて自己負担 |
| 修繕の自由度 | 基本的に個人で変更不可。 管理組合の決議が必要。 | 管理規約の範囲内でリフォーム可能。 |
| 注意点 | 長期修繕計画に基づき計画的に整備される。 マンションの資産価値維持に直結。 | 工事内容によっては管理組合への届出が必要。 勝手な工事はトラブルの原因に。 |
マンションのメンテナンスで注意すべき専用使用部分
専用使用部分とは、共用部分の一部でありながら、特定の住人が専用で使えるスペースを指し、玄関ドア・インターホン・バルコニー・窓ガラス・窓枠・網戸・パイプスペースなどがあります。
これらは共用部分であるため、区分所有者が勝手に交換・改修することはできず、変更には管理組合の許可が必要です。
特にバルコニーは避難経路となるため、物置などを自由に設置することはできません。
窓ガラスの断熱リフォームなども独断での工事は禁止されており、規約によって細かなルールが定められています。
購入前・入居前に管理規約をよく確認することが必須です。
マンションのメンテナンスにおける適切な時期と周期
マンションのメンテナンスは、適切な時期に実施することで費用を抑え、建物を長持ちさせることができます。
ここでは、大規模修繕の周期と長期修繕計画について解説します。
マンションのメンテナンスとして大規模修繕を行う際の周期
大規模修繕は、国土交通省のガイドラインでは12〜15年周期が目安とされていますが、実際には20〜30年に1回のマンションも多く見られます。
そのため、長期修繕計画では将来的な工事項目や費用の変化を見据えた計画づくりが求められます。
特に大規模修繕には多額の費用がかかるため、管理組合の判断が重要です。
そこで、周期や決議に関する主なポイントを整理すると以下のとおりです。
- 実施目安は12〜15年
- 実態は20〜30年周期も多い
- 適切な計画期間は30年以上
- 実施には議決権4分の3以上が必要
大規模修繕はマンションの価値を左右する大きな工事だからこそ、早めの備えと計画的な積立が欠かせません。
参考元:国土交通省「長期修繕計画標準様式」
マンションのメンテナンスにおける長期修繕計画とは
長期修繕計画は、建物の劣化状況や将来の工事内容を見据えて、必要な修繕の時期・内容・費用をまとめたものです。
新築時に作成され、5年ごとに見直すことが推奨されています。
物価変動や工事費の高騰に対応し、実態に合った計画を維持することが目的です。
負担を軽減するため、新築時は修繕積立金が低めに設定されることもあります。
計画を立てる際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 新築時に作成・途中で変更可能
- 5年ごとの見直しが推奨
- 新築時は積立金が低い傾向あり
- 資産価値維持のための必須計画
適切な計画を共有し、管理組合と協力しながら維持していくことが、マンションの価値を守る鍵となります。
マンションの専有部分をメンテナンスする時期
専有部分のメンテナンスは区分所有者が自己負担で行います。
特に水回り設備は10〜20年での交換が目安とされており、キッチンや浴室などの住宅設備は耐用年数が約10年です。
そのため、築10年を迎えたタイミングで一度しっかり点検しておくと安心です。
突然の故障を防ぐためにも、以下の交換目安を知っておくと役立ちます。
- キッチン・浴室:10〜20年
- 洗面化粧台:10〜15年
- 給湯器:10〜15年
- 水回り部品:10〜20年
設備は壊れてから交換すると費用も負担も大きくなりがちです。
計画的な点検と積立により、安心して長く住める住環境を維持しましょう。
マンションのメンテナンスにおけるスケジュール計画
マンションのメンテナンスは、日常的な点検から法定点検、大規模修繕まで多岐にわたります。
ここでは、年間スケジュールと築年数別のメンテナンス計画を詳しく解説します。
マンションメンテナンスの年間スケジュール
マンションの年間メンテナンスは、点検の頻度によって内容が異なります。
まず、日常点検では清掃や目視確認を通じて、共用部分の小さな異常を早期に把握します。
月次点検では電気設備や機械式駐車場などを定期的に動作確認します。
半年〜1年ごとに行われる法定点検では、消防設備やエレベーター、給排水設備などの安全性をチェックします。
さらに月1〜2回の定期清掃、年1回の年次点検では建物全体の状態を総合的に確認します。
これらを計画的に実施することで、マンションの快適性と資産価値を長期的に維持できます。
マンションメンテナンスの築年数別スケジュール
マンションのメンテナンスは、築年数に応じて重点が変わります。
築0〜5年は初期不良の早期発見を目的とした日常点検と法定点検が中心です。
築5〜10年になると外壁の劣化や設備の動作に注意し、次の大規模修繕に備えます。
築10〜15年は1回目の大規模修繕期で、防水工事・外壁塗装・シーリング工事などを実施。
築20〜30年になると配管更新や設備交換を伴う2回目の大規模修繕が必要です。
築30年以上では、エレベーターや給排水設備の全面更新など、建物の長寿命化に向けた大規模投資が求められます。
また、メンテナンス項目別のスケジュール管理についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。
マンションのメンテナンスはいくら?費用相場を詳しく解説
マンションのメンテナンスには、さまざまな費用がかかります。
ここでは、修繕積立金、大規模修繕、専有部分リフォームの費用相場を詳しく見ていきましょう。
マンションのメンテナンスで活用される修繕積立金の平均額
修繕積立金は、共用部分を維持するために毎月積み立てる重要な費用です。
国土交通省調査では平均13,054円(駐車場込みは13,378円)。
築年数が古くなるほど修繕箇所が増え、必要額も上昇するため、専有面積別の金額が適正かどうかを購入時に必ず確認すべきです。
国交省基準では「1㎡あたり200〜380円」が妥当とされており、広さによって費用は大きく変わります。
| 専有面積 | 月額の目安 |
|---|---|
| 60㎡ | 約12,000~22,800円 |
| 70㎡ | 約14,000~26,600円 |
| 80㎡ | 約16,000~30,400円 |
参考元:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」
マンションメンテナンスとしての大規模修繕費用
大規模修繕はマンション全体の老朽化を防ぎ、安全性と資産価値を維持するために欠かせません。
1回目の費用は4,000〜6,000万円が最多で、2回目以降は6,000〜8,000万円が一般的です。3
回目は設備更新が重なり1億円を超えるケースも増加。
1戸あたりの負担は75〜125万円が目安で、戸数によって総額は大きく変動します。
長期修繕計画と積立金のバランス確認が重要です。
| 戸数 | 総額の目安 |
|---|---|
| 50戸 | 約3,750万~6,250万円 |
| 100戸 | 約7,500万~1億2,500万円 |
| 150戸 | 約1億1,250万~1億8,750万円 |
マンションの専有部分をメンテナンスする際の費用
専有部分のリフォーム費用は築年数で大きく変動します。
築10〜15年では水回り交換が重なり584万円が平均と最も高く、その後20〜25年では268万円と一度落ち着きます。
しかし築25年以上になると再び上昇し、設備の老朽化に伴う更新が必要になります。
費用は広さや選ぶグレードによっても大きく変わるため、工事範囲の優先順位を決めておくことが重要です。
| 築年数 | 平均費用 |
|---|---|
| 10〜15年 | 約584.4万円 |
| 15〜20年 | 約377.0万円 |
| 20〜25年 | 約268.9万円 |
| 25〜30年 | 約371.1万円 |
| 30年以上 | 約368.2万円 |
マンションのメンテナンス費用が不足した場合の対処法
マンションのメンテナンス費用が不足した場合の対処法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 臨時徴収(不足分を一時金として集める)
- 修繕積立金の増額
- 長期修繕計画の見直し(5年ごとが目安)
- 工事の優先順位を変更し、緊急性の高いものから実施する
なかでも最も一般的なのは臨時徴収で、不足分を一時金として集める方法です。
しかし負担が大きいため、積立金の値上げや長期修繕計画の見直しを併用することが現実的です。
物価上昇で工事費が高騰する近年では、計画の5年ごとの見直しが欠かせません。
優先順位を調整して緊急度が高い工事から実施することも、費用不足をカバーする際の有効な手段です。
マンションのメンテナンスで確認すべき重要ポイント
マンションのメンテナンスを適切に行うには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
ここでは、管理規約の確認から記録保存、業者選定まで詳しく解説します。
マンション管理規約の確認
管理規約は、メンテナンスの責任範囲を判断する最重要文書です。
まず、専有部分と共用部分の区分を明確に把握しましょう。
通常使用による劣化や過失による補修は区分所有者の負担となるケースが多く、一方で共用部分の瑕疵や災害による劣化は管理組合の負担になります。
判断が難しい場合は、都度管理組合へ相談することが大切です。
マンションごとに規約の内容は異なるため、入居前後に必ず読み込み、責任範囲を把握しておくことがトラブル防止の鍵となります。
こちらでは、マンションメンテナンス費用の負担区分について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
マンションの配管における責任範囲
配管は漏水トラブルに直結する重要ポイントであり、専有・共用の境界を理解しておく必要があります。
一般的には、住戸から一定距離が専有配管、それ以降が共用配管とされています。
漏水時、原因が専有配管なら住戸所有者、共用部分なら管理組合が費用を負担します。
また、原因不明の場合は共用部分が原因とみなされるため、区分所有者の過度な負担を避けられます。
配管は目に見えない場所だからこそ、定期点検と管理規約での範囲確認が安心につながります。
マンションメンテナンスの記録保存の重要性
メンテナンス記録の保存は、資産価値の維持に直結する重要な作業です。
点検結果や修繕履歴があれば、売却時に価格アップが期待でき、購入者への安心材料にもなります。
また、過去の工事内容や費用を把握しておくことで、より精度の高い長期修繕計画の作成に役立ちます。
大規模修繕は管理組合が記録を残しますが、個人で行った工事は自分で保管が必要です。
領収書・工事内容・写真を整理して保存しておくことで、将来のトラブル防止にもつながります。
マンションのメンテナンスを依頼する業者選びの注意点
業者選びは、工事の品質を左右する最重要ステップです。
まず、マンションの施工実績や口コミを確認し、専門性の高さをチェックしましょう。
また、見積書が「一式」ばかりだと不透明なため、工事内容・費用内訳が明確な業者を選ぶことが大切です。
工事後の不具合対応など、アフターフォロー体制の充実度も必ず確認しましょう。
さらに、複数社から相見積もりを取ることで適正価格を判断できます。
法定点検を伴う場合は、最新法令に精通した業者かどうかも重要な評価ポイントです。
マンションのメンテナンスに関するよくある質問
マンションのメンテナンスについて、よくある疑問にお答えします。
Q
マンションメンテナンスの法定耐用年数と実際の寿命の違いは?
A
法定耐用年数(鉄筋コンクリート造70年)は、あくまで税金計算のための指標で、建物の寿命を示すものではありません。
実際には、金融機関が融資判断に使う経済的耐用年数や、建物そのもの物理的耐用年数(100年以上)が存在します。
コンクリートは適切な条件とメンテナンスにより100年以上持つため、配管・設備を計画的に更新すれば、マンションに100年以上住み続けることは十分可能です。
Q
マンションのメンテナンス費用が積立金で足りない場合どうする?
A
修繕積立金が不足した場合は、臨時徴収で不足分を各住戸から集めるのが一般的です。
また、長期修繕計画を見直し、毎月の積立額を増額する方法もあります。
これらは区分所有者全員に関わるため、管理組合での合意形成が重要です。
物価上昇により費用が不足することもあるため、5年ごとの長期修繕計画の見直しが推奨されています。
Q
マンションのメンテナンスとして建て替えは現実的?
A
マンション建て替えは、現実的には非常にハードルが高い選択肢です。
全国約19,200戸のうち建て替え実施は244件のみと、ごくわずか。
建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要で、解体費用・建築費用・引越し費用などの負担も重く、実現の壁となります。
築40年超のマンション増加を受け、決議要件緩和も議論されていますが、現状では建て替えよりも適切なメンテナンスで長寿化を図る方が現実的です。
まとめ
マンションのメンテナンスは、資産価値を守り快適な住環境を維持するために欠かせない活動です。
共用部分と専有部分で責任範囲が明確に分かれており、それぞれに適切な対応が求められます。
- 適切なメンテナンスで100年以上の寿命を実現できる
- 共用部分は管理組合、専有部分は自己負担で実施する
- 大規模修繕は12~15年周期、長期修繕計画は30年以上が基本
- 修繕積立金の平均は月額約13,000円、築年数で変動する
- 管理規約と長期修繕計画の確認が資産価値維持の第一歩
マンションは適切なメンテナンスにより、世代を超えて住み続けられる貴重な資産です。
管理組合と協力しながら、計画的なメンテナンスを実施し、快適で安全な住環境を維持していきましょう。