ゴムシート防水とは?特徴やメリット・デメリット、単価相場まで徹底解説
2025/11/21
マンションやビルの屋上防水をご検討中の管理組合様、施設管理者様にとって、防水工事の選択は建物の長寿命化を左右する重要な決断です。
数ある防水工法の中でも「ゴムシート防水」は、耐久性とコストパフォーマンスに優れた選択肢として注目されています。
本記事では、株式会社新東亜工業の長年の施工経験を基に、ゴムシート防水の基礎知識から実務に役立つ情報まで、専門的な視点から分かりやすく解説いたします。
防水工事は建物を守るために欠かせない投資です。
適切な工法選択により、長期的なメンテナンスコストの削減と、安心できる建物管理を実現していただけます。
目次
ゴムシート防水とは?基本的な特徴を理解する
ゴムシート防水は、合成ゴムを主原料としたシート状の防水材を施工箇所に貼り付けることで、水の浸入を防ぐ防水工法です。
マンションやビルの屋上、陸屋根などの平場部分に広く採用されており、工場で製造された均質なシートを使用するため、安定した防水性能が期待できます。
合成ゴムを使用した防水シートの仕組み
ゴムシート防水に使用される防水シートは、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やIIR(ブチルゴム)などの合成ゴムを主原料としています。
これらの合成ゴムに補強材としてカーボンブラック、軟化剤、加硫剤などを配合し、押出機やカレンダーロールでシート状に成型されます。
工場での一貫生産により、厚みや材質が均一な高品質の防水層を形成できることが大きな特徴です。
加硫ゴム系と非加硫ゴム系の違い
ゴムシート防水には加硫ゴム系と非加硫ゴム系の2種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
加硫ゴム系シートは、硫黄などを用いて化学的に分子間を結合させる加硫処理を施しており、耐久性と耐候性に優れ、建物の動きにも追従しやすい柔軟性を持ちます。
一方、非加硫ゴム系シートは加硫処理を行っていないため施工性が良く接着しやすいものの、加硫ゴム系に比べると耐久性がやや劣る傾向にあります。
長期的な耐久性が求められる屋上防水では、加硫ゴム系シートが多く採用されています。
塩ビシート防水との主な違い
同じシート系防水工法として塩ビシート防水がありますが、ゴムシート防水とは材質や性能が異なります。
塩ビシート防水は軟質ポリ塩化ビニルを使用し、耐用年数は12〜18年程度とゴムシート防水の10〜12年よりもやや長めです。
ただし、ゴムシート防水は施工単価が安価であり、柔軟性が高く建物の動きに対する追従性に優れているという利点があります。
シートの厚みも異なり、塩ビシートが1.5mm〜2.5mmであるのに対し、ゴムシートは1.2mm〜2.0mmとやや薄めです。
塩ビシート防水とは?単価や工法の違い・特徴・耐用年数・費用相場まで徹底解説
ゴムシート防水の工法と単価相場
ゴムシート防水には主に2つの施工方法があり、建物の状態や用途に応じて適切な工法を選択することが重要です。
ここでは各工法の特徴と、実際の施工にかかる費用相場について詳しく解説します。
工法選択は防水性能の持続性に直結するため、専門業者との十分な打ち合わせが欠かせません。
機械固定工法の特徴と施工単価
機械固定工法とは、絶縁シートを専用のディスクやビスを使って下地に機械的に固定し、その上にゴムシートを接着する工法です。
下地と防水層の間に空間が生まれるため、下地に含まれる水分を脱気筒から外部に逃がすことができ、雨漏りしている建物にも適用できる大きな利点があります。
耐用年数は10〜15年程度で、施工単価は1㎡あたり5,500〜6,500円程度です。強風にも強く、大規模な屋上防水に向いています。
接着工法の特徴と施工単価
接着工法とは、専用の接着剤を用いてゴムシートを下地に直接貼り付ける工法です。
シート全体が下地と密着するため高い防水性を発揮し、引張強度や伸びに優れています。
耐用年数は10〜12年程度で、施工単価は1㎡あたり5,000〜6,000円程度と機械固定工法よりもやや安価です。
ただし、下地を十分に乾燥させる必要があり、既に雨漏りが発生している建物には適さない場合があります。
施工が比較的簡単で工期を短縮できるため、人の出入りが多いベランダなどに適しています。
工法別の費用比較表
実際の工事費用を把握するため、各工法の単価と耐用年数を比較した表をご覧ください。
| 工法 | 施工単価(1㎡あたり) | 耐用年数 | 主な適用場所 |
|---|---|---|---|
| 機械固定工法 | 5,500〜6,500円 | 10〜15年 | 大規模屋上、雨漏り発生物件 |
| 接着工法 | 5,000〜6,000円 | 10〜12年 | 中小規模屋上、ベランダ |
これらの単価はあくまで目安であり、施工面積、建物の状態、立地条件などによって変動します。
正確な費用については、必ず専門業者による現地調査と見積もりを取得してください。
ゴムシート防水のメリット
ゴムシート防水が多くの建物で採用されている理由は、他の防水工法にはない数多くの利点があるためです。
ここでは、施工実績に基づいた具体的なメリットをご紹介します。
これらの特徴を理解することで、貴施設に最適な防水工法かどうかを判断する材料となるでしょう。
下地の状態を選ばない施工性
ゴムシート防水は、コンクリート、モルタル、金属など様々な下地材に対応できる優れた汎用性を持っています。
特に機械固定工法では、既存の防水層を完全に撤去せずに上から被せる「かぶせ工法」も可能です。
下地に微細な凹凸や多少の損傷があっても、ゴムシートの柔軟性により追従できるため、改修工事の際に工期短縮とコスト削減が実現できます。
古い建物のリニューアル工事でも採用しやすい工法です。
建物の動きに追従する柔軟性
建物は温度変化や地震などにより常に微細な動きを繰り返しています。ゴムシートは高い柔軟性と伸縮性を持つため、これらの建物の挙動に追従し、亀裂や剥離を防ぐことができます。地震による建物のゆがみにも対応でき、長期間にわたって安定した防水性能を維持します。この特性により、構造的な動きが大きい建物や、寒暖差の激しい地域でも安心してご使用いただけます。
仕上がりの均質性と品質安定性
工場で生産された均一な厚みのシートを使用するため、現場での仕上がりにムラが発生しにくいことも大きな利点です。
ウレタン塗膜防水のように職人が手作業で塗料を塗布する工法では、技量や天候によって膜厚にばらつきが生じる可能性がありますが、ゴムシート防水ではそのリスクが大幅に低減されます。
結果として、安定した防水性能を確保しやすく、施工品質の予測がしやすい工法と言えます。
優れた耐久性と耐候性
加硫ゴム系シートは、紫外線や酸素、オゾンなどによる劣化に強い特性を持っています。
適切に施工されたゴムシート防水は10〜12年程度の耐用年数が期待でき、寒暖差の激しい地域でも温度変化による収縮や膨張に対する追従性が高いため、亀裂や剥離のリスクが低くなります。
ただし、5〜8年ごとにトップコートの塗り替えが必要となるため、定期的なメンテナンス計画を立てておくことが重要です。
コストパフォーマンスの高さ
ゴムシート防水は、他の防水工法と比較して施工単価が比較的安価です。
特に大規模な面積の施工では、㎡単価がさらに低くなる傾向があります。
また、耐久性が高いため頻繁な張り替えが不要であり、長期的な視点で見ても総合的なコスト削減につながります。
初期投資を抑えながら、一定期間の防水性能を確保したい場合に適した選択肢となるでしょう。
広範囲を短期間で施工可能
大きなシートを使用するため、広い面積を短期間で施工することができます。
特に機械固定工法では施工速度が速く、1,000㎡の屋上であれば天候に恵まれた場合3〜4日程度で施工完了することも可能です。
塗膜系防水のように乾燥時間を待つ必要がないため、工期の短縮や仮設費用の削減につながり、総合的なコストダウンに寄与します。
ゴムシート防水のデメリットと注意点
どの防水工法にも長所と短所があり、ゴムシート防水も例外ではありません。
ここでは、施工を検討する際に必ず理解しておくべきデメリットと注意点について、正直にお伝えします。
これらの情報を踏まえた上で、他の工法との比較検討を行うことが重要です。
複雑な形状への施工の難しさ
ゴムシートは比較的厚みがあり、既製品のシートを使用するため、複雑な形状や細かい部分の施工が難しい場合があります。
屋上に多数の突起物や複雑な排水構造がある場合、シートの密着性が低下し、防水性能に影響を与える可能性があります。
このような場合は、部分的に他の防水工法を併用したり、特殊な加工を施したシートを使用するなどの対策が必要となり、コストが増加する要因となります。
施工時の騒音と振動の発生
機械固定工法を採用する場合、固定具を打ち込む際に騒音と振動が発生します。
病院や学校、住宅密集地など静寂が求められる環境では問題となる可能性があるため、事前の周知と対策が不可欠です。
対策としては、接着工法の採用や防音シートの使用などが考えられますが、工法変更により他の性能面でトレードオフが生じることもあります。
施工前には必ず入居者や近隣の方々への説明を行い、工事スケジュールの調整を図ることが重要です。
鳥害による破損リスク
ゴムシートは、カラスなどの鳥によって突かれたり引っかかれたりして破れる被害を受けやすい傾向があります。
シートの表面がやや柔らかく、鳥にとって興味を引く質感であることが原因と考えられています。
鳥害によってシートが破れると、防水性能が著しく低下して雨漏りが発生します。
山や緑地が近い地域では特に注意が必要であり、鳥害対策として防鳥ネットの設置や忌避剤の使用などを検討する必要があります。
高度な施工技術の必要性
ゴムシート防水の施工には、高度な技術と豊富な経験が必要です。
特にシートの接合部や端部、貫通配管周りなどの処理は、専門的な技術がなければ適切に施工できません。
シートの接合不良や固定不良があると、そこから水が浸入して雨漏りの原因となります。
施工業者の選定は極めて重要であり、実績と技術力を十分に確認した上で依頼することが不可欠です。
技術力不足による施工不良は、短期的には目に見えない問題を引き起こし、長期的には高額な補修コストにつながります。
ゴムシート防水が適している場所と条件
ゴムシート防水は万能ではなく、建物の状態や用途によって向き不向きがあります。
ここでは、ゴムシート防水が特に効果を発揮する場所と条件について、実務的な観点から解説します。
適切な工法選択により、最大限の効果を引き出すことができるでしょう。
整形地でフラットな屋上
ゴムシート防水は、障害物が少なく平らな整形地の屋上に特に適しています。
大きなシートを一気に敷設できるため施工効率が高く、接合部も最小限に抑えられます。
大型商業施設や工場の屋上など、広くてフラットな面積が多い建築物で多く採用されている理由はここにあります。
複雑な形状や多数の突起物がある場合は、他の防水工法との比較検討をお勧めします。
広い施工面積を持つ建物
施工面積が広い場所では、ゴムシート防水の利点が最大限に発揮されます。
一度に大きな面積を敷設できるため作業効率が高く、単位面積あたりの施工コストが下がります。
おおよそ50㎡から300㎡以上の広範囲な屋上では、他の防水工法と比較してコスト面での優位性を持つことが多いです。
また、広い面積ではシートの接合部分を最小限に抑えられるため、漏水リスクの低減にもつながります。
2回目以降の改修工事
既存の防水層の上に重ねて施工する改修工事では、ゴムシート防水の「かぶせ工法」が効果を発揮します。
既存の防水層を活かしつつ新たな防水層を形成できるため、撤去費用と廃材処分費用を削減できます。
アスファルト防水や古いウレタン防水の上からでも施工可能であり、工期短縮とコスト削減の両立が可能です。
改修工事における有力な選択肢として検討する価値があります。
コストを重視するプロジェクト
シート防水の品質を保ちながらコストを抑えたい場合にも、ゴムシート防水は適しています。
加硫ゴム系シートは材料費が比較的安価でありながら、高い防水性能を発揮できます。
予算の制約がある中規模の商業施設や集合住宅などで、品質とコストのバランスを重視する場合には、第一候補として検討されることが多い工法です。
ゴムシート防水の施工手順・流れ
ゴムシート防水の品質は、正確な施工手順を守ることで確保されます。
ここでは、一般的な接着工法の施工手順を分かりやすく解説します。
実際の施工では、専門業者が建物の状態に応じて最適な手順を選択しますが、基本的な流れを理解しておくことは発注者としても重要です。
下地処理と清掃
まず、高圧洗浄によって既存の汚れ、コケ、劣化した塗膜などを徹底的に除去します。
その後、下地のひび割れや欠損部分をセメントモルタルや樹脂モルタルで補修し、平滑な面を作ります。
下地が湿っている場合は十分に乾燥させることが必須です。
下地の状態が防水層の性能に直結するため、この工程を丁寧に行うことが長期的な防水性能の維持につながります。
プライマーの塗布
下地とゴムシートの接着性を高めるため、下地の種類に応じた専用プライマーを均一に塗布します。
プライマーは接着剤の浸透を促進し、防水層と下地の一体化を図る重要な役割を果たします。
塗布後は指定された乾燥時間を確保し、適切な乾燥状態を確認してから次の工程に進みます。
気温や湿度によって乾燥時間が変わるため、経験豊富な職人による判断が重要です。
接着剤の塗布とシートの貼り付け
専用接着剤を下地とゴムシート両面に均一に塗布し、適正な乾燥時間をとります。
接着剤が指触乾燥(触っても手につかない状態)になったら、ゴムシートを慎重に貼り付けていきます。
シートを貼る際は空気を巻き込まないよう、ローラーを使って中央から外側に向かって圧着します。
出入隅部、ルーフドレン周り、貫通配管周りには事前に増し張りを行い、弱点となりやすい箇所を補強します。
シート接合部の処理
複数のシートを使用する場合、接合部の処理が防水性能の要となります。
シートを10〜15cm程度重ね合わせ、専用の接合材や熱風溶着により確実に接合します。
接合部からの漏水を防ぐため、この工程は特に慎重に行われます。
接合部の処理が不十分だと、そこから雨水が侵入して防水層全体の機能を損なうため、高度な技術と経験が求められる工程です。
トップコートの塗布
ゴムシートは紫外線に弱いため、保護材としてトップコートを塗布します。
トップコートは防水層の劣化を防ぎ、耐候性を向上させる重要な役割を果たします。
通常のトップコートは5〜8年ごとの塗り替えが推奨されていますが、遮熱性や高耐候性を持つ高機能トップコートを使用することで、メンテナンス頻度を低減することも可能です。
ゴムシート防水のメンテナンスと劣化サイン
ゴムシート防水の寿命を最大限に延ばすには、定期的なメンテナンスと早期の劣化発見が不可欠です。
ここでは、日常的にチェックすべき劣化のサインと、適切なメンテナンス方法についてご紹介します。
これらの知識を持つことで、大規模な補修が必要になる前に対処できます。
定期点検でチェックすべき劣化症状
ゴムシート防水で注意すべき劣化症状には、以下のようなものがあります。
これらのサインを発見したら、早めに専門業者に相談することをお勧めします。
- シートの膨れ:防水層と下地の間に水や空気が入り込んだ状態で、劣化の初期症状です
- 破れ・穴あき:鳥害や物理的な衝撃によりシートに穴が開いた状態で、雨漏りに直結します
- 接合部の剥がれ:シート同士の接合部分が剥がれ、隙間ができている状態です
- 端部の浮き・めくれ:シートの端部が下地から浮き上がり、めくれている状態です
- トップコートの劣化:表面の塗膜が色褪せ、チョーキング(粉化)している状態です
これらの症状を定期的にチェックし、早期に発見することで、大規模な補修を避けることができます。
トップコートの塗り替え時期
ゴムシート防水では、5〜8年ごとのトップコート塗り替えが推奨されています。
トップコートは紫外線からゴムシートを保護する役割を果たしており、この保護層が劣化するとゴムシート本体の劣化が加速します。
トップコート表面に色褪せやチョーキング(白い粉が付く現象)が見られたら、塗り替えのタイミングです。
定期的なトップコート塗り替えにより、防水層全体の耐用年数を延ばすことができます。
部分補修と増し張り
局所的な破損や劣化が見られる場合は、部分補修や増し張りで対応できることがあります。
小さな穴や亀裂であれば、その部分に新しいゴムシートを重ね貼りする「シート割り増し」により補修可能です。
この方法は全面改修と比較して大幅にコストを抑えられるため、定期点検により早期発見することが経済的なメンテナンスにつながります。
ただし、広範囲に劣化が進行している場合は、全面的な改修工事が必要となります。
まとめ:ゴムシート防水を選択する際のポイント
ゴムシート防水は、耐久性とコストパフォーマンスのバランスに優れた防水工法です。
広くフラットな屋上を持つ建物や、改修工事でコストを抑えたい場合に特に適しています。
一方で、複雑な形状への施工が難しい、鳥害リスクがある、高度な施工技術が必要といった注意点も存在します。
最も重要なのは、貴施設の状態と目的に合った工法を選択することです。
建物の形状、予算、求める耐用年数、メンテナンス計画などを総合的に考慮し、複数の防水工法を比較検討することをお勧めします。
株式会社新東亜工業では、豊富な施工実績に基づき、お客様の建物に最適な防水工法をご提案いたします。
現地調査からお見積もり、施工後のアフターフォローまで、一貫してサポートいたします。
防水工事に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。