賃貸物件の大規模修繕工事とは?オーナーが知るべき費用相場・周期・トラブル回避法を解説【2026年最新】| 株式会社新東亜工業

賃貸物件の大規模修繕工事とは?オーナーが知るべき費用相場・周期・トラブル回避法を解説

賃貸アパートやマンションを所有しているオーナーの皆様、「そろそろ大規模修繕を検討しなければ…」と感じながらも、具体的にいつ実施すべきか、どれくらいの費用がかかるのか、入居者への説明はどうすればよいのか、不安を抱えていらっしゃいませんか。

大規模修繕は建物の資産価値を維持し、入居率を安定させるために欠かせない取り組みです。

しかし、実施のタイミングや費用、入居者とのトラブル対応など、判断に迷うポイントが数多く存在します。

本記事では、賃貸物件の大規模修繕について、国土交通省のガイドラインや実態調査に基づいた実施周期の目安、アパート・マンション別の費用相場をご紹介しています。

また、入居者への告知義務とトラブル回避策や信頼できる施工会社の選び方まで、オーナーが押さえるべき情報を網羅的に解説いたします。

株式会社新東亜工業は、長年にわたり数多くの賃貸物件の大規模修繕に携わってまいりました。

その経験と専門知識をもとに、皆様の不安を解消し、適切な修繕計画の策定をサポートいたします。

賃貸物件の大規模修繕とは?

賃貸物件の大規模修繕とは、建物の経年劣化に対応し、長期的に安全で快適な居住環境を維持するために行う計画的な修繕工事です。

まずは基礎知識として、大規模修繕の定義や目的を正しく理解しておきましょう。

大規模修繕の定義と目的

大規模修繕とは、建物の主要な部位や設備について、一定の周期で計画的に実施する大がかりな修繕工事を指します。

具体的には、外壁の塗装や補修、屋根・屋上の防水工事、給排水管の高圧洗浄や交換、共用部分の鉄部塗装など、建物全体に関わる工事が含まれます。

大規模修繕の主な目的は以下の通りです。

  • 経年劣化への対応:雨漏りや外壁の剥落など、深刻な不具合への対応
  • 資産価値の維持・向上:建物の美観と機能を保ち、資産価値を維持する
  • 入居率の安定:外観がキレイで設備が整った物件は、入居者の確保につながる
  • 安全性の確保:構造部分や設備の劣化を防ぎ、入居者の安全を守るために不可欠です

国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」でも、適切な修繕を行わないと競争力の低下・家賃収入の減少・修繕費の確保困難、負のスパイラルに陥り、さらなる老朽化という悪循環に陥る可能性が指摘されています。

賃貸マンションとアパートでの違い

賃貸マンションとアパートでは、構造や規模の違いにより、大規模修繕の内容や周期、費用に差が生じます。

主な違いを理解しておくことで、より適切な修繕計画を立てることができます。

構造による違いとして、RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションは耐久性が高く、大規模修繕の周期は一般的に12~15年程度とされています。

一方、木造アパートは劣化が進みやすい傾向があり、外壁材によっては10年程度での塗装が推奨される場合もあります。

費用面では、RC造マンションは共用設備(エレベーター、貯水槽など)が多く、1回あたりの修繕費用が高額になりがちです。

国土交通省のデータによると、RC造20戸の場合、30年間で戸あたり約225万円、棟あたり約4,490万円が目安とされています。

木造アパートは比較的費用を抑えられる傾向にありますが、同じく10戸の場合で30年間に戸あたり約216万円、棟あたり約2,160万円程度が必要です。

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中規模修繕・小規模修繕との違い

賃貸物件の修繕は、その規模と内容によって大規模修繕、中規模修繕、小規模修繕の3つに分類されます。

それぞれの違いを明確に理解しておくことで、適切なタイミングで必要な修繕を実施できます。

区分概要主な工事内容費用の目安工期の目安
大規模修繕建物全体を対象とした計画的な修繕工事・外壁塗装
・屋上防水
・給排水管更新など
数百万円〜数千万円数ヶ月
中規模修繕部分的な劣化や不具合に対応する修繕・共用廊下の補修
・給湯器交換
・屋外階段の塗装など
数十万円〜数百万円数日〜数週間
小規模修繕日常発生する軽微な不具合への随時対応・電球交換
・水漏れ修理
・鍵交換
・シロアリ予防など
数万円〜十数万円数時間〜数日

大規模修繕は、建物全体の主要部位を対象とした計画的な修繕工事です。

足場を組んで実施する外壁塗装、屋上防水、給排水管の更新など、工期が数ヶ月に及び、費用も数百万円から数千万円規模になります。

中規模修繕は、部分的な劣化や不具合に対応する修繕です。

例えば、共用廊下の一部補修、給湯器の交換、屋外階段の塗装など、大規模修繕ほどではないものの、ある程度まとまった工事が該当します。費用は数十万円から数百万円程度、工期は数日から数週間です。

小規模修繕は、日常的に発生する軽微な不具合への対応です。

共用部分の電球交換、水漏れ修理、鍵の交換、シロアリ予防など、必要に応じて随時行う修繕で、費用は数万円から十数万円程度、工期も数時間から数日で完了します。

これらを計画的に組み合わせることで、建物の状態を良好に保ち、大規模修繕時の費用負担を軽減することが可能です。

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賃貸物件における大規模修繕工事の実施時期と周期目安

賃貸物件の大規模修繕をいつ実施すべきか、その判断は建物の寿命や収益性に直結します。

ここでは、国の指針や実態調査に基づいた周期の目安を解説します。

国土交通省ガイドラインに基づく推奨周期

国土交通省が公表している「長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改訂版)」では、大規模修繕の実施周期を「概ね12~15年に1回」としています。

これは、外壁塗装や屋上防水などの主要工事が、使用する材料や仕様により一般的に12~15年程度で更新時期を迎えることに基づいています。

ただし、この周期はあくまで目安であり、法的な義務ではありません。

建物の構造、立地条件、使用材料の品質、日常的なメンテナンスの状況によって、適切な周期は変動します。

例えば、海沿いの物件や日当たりの強い場所では劣化が早まる傾向があります。

重要なのは、長期修繕計画を策定し、5年程度ごとに見直すことです。

物価変動や工事費用の変化、建物の劣化状況を踏まえて計画を更新することで、適切なタイミングでの修繕と必要な資金の確保が可能になります。

1回目・2回目・3回目の修繕タイミング

大規模修繕は、実施回数によって工事内容や費用傾向が異なります。

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、実際の修繕周期は以下のような傾向が見られます。

修繕回数実施時期の目安主な工事内容費用傾向
1回目築12~15年・外壁塗装
・床防水
・屋根防水
・シーリング工事
戸あたり
100~125万円程度
2回目築25~30年
(1回目の約14年後)
・1回目の内容
・建具・金物工事の割合増加
戸あたり
100~125万円程度
3回目築38~43年
(2回目の約13年後)
・建具・金物工事の比重がさらに増加
・構造的な補強検討
費用増加の傾向

1回目の修繕は、比較的劣化が軽微であるため、費用を抑えやすい時期です。

しかし、この時期に適切な修繕を行わないと、2回目以降の費用が大幅に増加する可能性があります。

2回目以降は、設備の経年劣化が顕著になり、建具や金物などの交換も必要になってきます。

3回目を迎える頃には、建物の構造的な課題も顕在化するため、修繕ではなく建て替えの検討も視野に入れる時期となります。

修繕時期を見極めるチェックポイント

計画的な周期に基づく修繕も重要ですが、建物の実際の劣化状況を把握することで、より適切なタイミングでの修繕が可能になります。

以下のチェックポイントを定期的に確認しましょう。

点検対象確認内容・劣化症状
外壁・ひび割れ(クラック)の有無と幅
・塗装の色褪せ・剥がれ
・白華現象(エフロレッセンス)
・タイルの浮き・剥落の兆候
屋上・屋根・防水層の浮き・亀裂
・排水口(ドレン)の詰まり
・屋根材のズレ・割れ
共用部分・階段・廊下の手すりの錆・腐食
・床面のひび割れ、排水不良
・照明器具の不具合(点灯不良・老朽化)
給排水設備・配管からの水漏れ・異音
・水道水の濁り・赤水
・排水の流れの悪さ、悪臭の発生

これらの症状が見られた場合は、専門業者による建物診断を実施することをお勧めします。

診断費用は10万円前後ですが、劣化の程度を正確に把握し、優先順位をつけた修繕計画を立てることができます。

早期発見・早期対応により、大規模な不具合を未然に防ぎ、結果的に修繕費用を抑えることにつながります。

賃貸物件の大規模修繕工事にかかる費用相場

大規模修繕を計画する上で、最も気になるのが費用面です。

ここでは、構造別・工事内容別の具体的な費用相場と、コストを抑えるための方法をご紹介します。

アパート・マンション別の費用目安

大規模修繕の費用は、建物の構造、規模、築年数、劣化状況によって大きく変動します。

国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」に基づく、30年間の修繕費用の目安は以下の通りです。

建物タイプ戸数30年間の総額
(戸あたり)
30年間の総額
(棟あたり)
木造アパート(1LDK~2DK)10戸約216万円約2,160万円
RC造マンション(1K)10戸約177万円約1,770万円
RC造マンション(1LDK~2DK)20戸約225万円約4,490万円

これらの金額は、5~10年目、11~15年目、16~20年目、21~25年目、26~30年目に実施する修繕の合計です。

特に11~15年目と21~25年目には、足場を組んでの本格的な大規模修繕が必要となるため、費用が大きくなる傾向があります。

例えば、RC造20戸の場合、11~15年目で約1,090万円、21~25年目で約2,320万円が必要です。

また、国土交通省の実態調査によると、1回の大規模修繕における戸あたりの平均工事費は100~125万円の範囲が最も多く、床面積あたりでは1.0~1.5万円/㎡が一般的です。

ただし、これらはあくまで目安であり、個別の物件の状況によって金額は変動します。

主な工事内容と費用の内訳

大規模修繕では、建物の各部位に対してさまざまな工事が実施されます。

主な工事内容とその費用の目安を把握しておくことで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

工事種別主な工事内容費用の目安
外壁工事外壁塗装2,000~3,000円/㎡
シーリング補修
(増し打ち・打ち替え)
数百円~1,000円/㎡
タイル浮き補修1カ所あたり 数百円程度
屋根・防水工事屋根塗装2,000~3,000円/㎡
陸屋根の防水工事
(工法による)
8,000~10,000円/㎡
ベランダ・廊下の防水同程度の単価が目安
鉄部塗装階段・廊下・手すりなどの鉄部塗装戸あたり 2~5万円程度
給排水管工事高圧洗浄
(5年ごと)
戸あたり 約5,000円
配管交換
(築30年前後)
数百万円単位
設備工事給湯器交換1台 10~15万円
エアコン交換1台 10~15万円

大規模修繕では、外壁・屋根・防水・設備など複数の工事が同時に発生するため、費用も大きくなります。

特に足場を伴う外壁工事や防水工事は単価が高く、修繕計画の中でも重要な位置づけです。

また、給排水管や設備類は築年数の経過とともに更新が必要となり、計画的に予算を確保しておくことが求められます。

工事項目を整理し、複数社の見積もりを比較することで最適な工事内容とコストのバランスを取ることができます。

修繕費用を抑えるための方法

大規模修繕は高額な投資ですが、工夫次第で費用を適正化することが可能です。

ただし、必要な工事を省略することは、将来的により大きな費用負担につながるため避けるべきです。

以下の方法で、品質を保ちながら費用を抑えましょう。

ポイント概要・効果
定期点検と予防修繕・5年ごとの建物診断で劣化を早期発見
・大規模な不具合に発展する前に対処
・雨漏り後の対応より費用を大幅に抑えられる
相見積もりの取得・同じ工事でも業者により価格差が大きいため複数社比較が必須
・安さだけでなく内訳の透明性や実績を重視して選定する
工事をまとめて実施・足場費用など共通経費を削減できる
・外壁と屋根を同時に行えば足場が1回で済み、数十万円の節約に
長期修繕計画に基づく資金準備・家賃収入の5~10%を積み立てる
・急な出費を防ぎ、費用負担を平準化できる
・計画的な資金確保が大規模修繕をスムーズにする

定期点検や予防修繕を行い、早期に劣化へ対応することで大規模な工事を回避でき、長期的な修繕費用の削減につながります。

また、相見積もりや工事の一括実施でコストを抑えつつ、計画的に資金を積み立てておくことで、急な修繕にも無理なく対応できる体制を整えられます。

賃貸物件の大規模修繕を行わないリスクとデメリット

「費用がかかるから」と大規模修繕を先延ばしにすると、様々なリスクが発生します。

ここでは、修繕を怠った場合に起こりうる具体的な問題を解説します。

入居率・家賃収入への悪影響

建物の外観は、入居希望者が物件を選ぶ際の重要な判断材料です。

現在、多くの入居希望者がインターネットで物件を検索し、外観写真を見て内見するかどうかを決めています。

外壁の色褪せ、ひび割れ、錆びた階段など、老朽化が目立つ物件は、内見前に候補から外されてしまうのが現実です。

国土交通省の調査でも、大規模修繕を実施したオーナーの多くが、高い入居率や家賃水準の維持につながったと実感しています。

逆に、修繕を怠ると、空室を埋めるために家賃を下げざるを得なくなり、収入が減少します。

家賃収入が減れば、修繕費用の確保がさらに困難になり、一層の老朽化が進むという悪循環に陥ります。

また、周辺に新築物件が建設されると、古い物件の競争力はさらに低下します。

定期的な大規模修繕により美観と機能を維持することは、安定した賃貸経営を続けるための必須条件といえます。

建物の安全性・資産価値の低下

大規模修繕を行わないことによる最も深刻なリスクは、建物の安全性が損なわれることです。

外壁材の剥離・落下による通行人への被害、手すりの腐食による転落事故、給排水管の破損による漏水被害など、入居者や第三者に損害を与える可能性があります。

雨漏りを放置すると、建物内部に湿気がたまり、木部の腐食やカビの発生、鉄筋のさびによるコンクリートの劣化など、構造部分にまで悪影響が及びます。

こうなると、単なる修繕では対応できず、大規模な補強工事や建て替えが必要になり、費用が数倍に膨らみます。

資産価値の面でも、メンテナンスを怠った物件は、将来的に売却する際の価格が大幅に下がります。

買い手からは「購入後すぐに大規模な修繕が必要」と判断され、その分の費用を差し引いた価格での取引となるためです。

定期的な修繕により建物の状態を良好に保つことは、不動産としての資産価値を守ることに直結します。

オーナーの法的責任

賃貸物件のオーナーには、民法上、建物を安全で居住可能な状態に維持する義務があります。

民法第606条では、賃貸人は「使用収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められています。

大規模修繕を怠り、建物の不具合により入居者や第三者に損害を与えた場合、オーナーは損害賠償責任を負う可能性があります。

例えば、外壁タイルの剥落により通行人が怪我をした場合、オーナーの管理責任が問われます。

適切な点検・修繕を行っていなかったことが判明すれば、高額な賠償金を支払う事態にもなりかねません。

また、建物の劣化により入居者の居住環境が著しく悪化した場合、入居者から家賃の減額請求や契約解除を求められる可能性もあります。

雨漏りやカビの発生、設備の故障などが放置されれば、入居者との信頼関係が損なわれ、トラブルに発展するリスクが高まります。

このように、大規模修繕を行わないことは、経済的損失だけでなく、法的リスクも伴います。

定期的な修繕は、オーナーとしての責任を果たし、安心して賃貸経営を続けるための重要な投資といえます。

賃貸物件の大規模修繕における告知義務とトラブル対策

大規模修繕を実施する際、入居者への対応は成功の鍵を握ります。

適切な告知とコミュニケーションにより、トラブルを未然に防ぐことができます。

入居者への告知義務の有無と実務対応

賃貸借契約において、大規模修繕工事に関する法的な告知義務は、厳密には定められていません。

しかし、実務上は告知を行うことが強く推奨されており、告知を怠ると様々な問題が発生する可能性があります。

契約締結時に大規模修繕の予定が具体的に決まっている場合、重要事項説明で告知することが一般的です。

裁判例では、契約時に大規模修繕の予定を告知しなかったことが説明義務違反と判断され、賃貸人や仲介業者に損害賠償が命じられたケースもあります。

特に、工事による生活への影響が大きい場合、告知しないことは入居者との信頼関係を損なう重大な問題となります。

工事実施前の告知については、工事開始の2~4週間前までに、文書で各戸に配布することが望ましいとされています。

告知すべき内容として、工事の目的と必要性、工事期間と時間帯、予想される騒音や振動、ベランダや駐車場の使用制限、緊急連絡先などを明記します。

妊婦や受験生、在宅勤務者など、工事の影響を特に受けやすい入居者がいる可能性も考慮し、丁寧な説明を心がけることが重要です。

事前の適切な告知により、入居者の理解と協力を得やすくなり、スムーズな工事の進行につながります。

住民説明会の進め方とポイント

賃貸物件の大規模修繕では、文書での告知に加えて、住民説明会を開催することが効果的です。

直接顔を合わせて説明することで、入居者の不安を和らげ、信頼関係を構築することができます。

説明会の開催時期は、工事開始の1~2ヶ月前が理想的です。

この時期であれば、入居者が工事に備えて準備する時間を確保でき、質問や要望にも柔軟に対応できます。

説明会では、オーナーまたは管理会社の担当者に加え、施工業者の責任者も同席することで、技術的な質問にもその場で回答できる体制を整えます。

説明会で伝えるべき主な内容は以下の通りです。

  • 工事の目的と内容(なぜこの工事が必要か、どのような工事を行うか)
  • 工事スケジュール(開始日、終了予定日、各工程の期間)
  • 生活への影響(騒音の時間帯、ベランダの使用制限期間、駐車場の一時的な移動など)
  • 安全対策(足場の安全性、プライバシーへの配慮)
  • 緊急時の連絡先(工事中のトラブル発生時の対応窓口)

説明会では、入居者からの質問や不安に、誠実に答える姿勢が大切です。

「工事中の騒音で在宅勤務に支障が出る」「洗濯物が干せない期間が長いと困る」など、具体的な懸念に対して、可能な範囲で配慮する姿勢を示すことで、協力を得やすくなります。

説明会に参加できなかった入居者には、後日個別に説明資料を配布し、必要に応じて個別対応を行います。

よくあるトラブル事例と回避策

大規模修繕では、適切な対応を行っていても、予期せぬトラブルが発生することがあります。

よくあるトラブル事例と、その回避策を知っておくことで、円滑な工事進行が可能になります。

入居者からの工事協力拒否

最も多いのが、入居者からの工事協力拒否です。民法では、賃借人は賃貸人が行う修繕工事に協力する義務があると定められていますが、実際に拒否されるケースもあります。

このような場合、まず工事の必要性を丁寧に説明し、入居者の不安や不満を聞き取ることが重要です。

それでも協力が得られない場合は、管理会社や弁護士に相談し、法的な手続きも視野に入れた対応を検討します。

騒音・振動に関するクレームは、事前に十分な説明を行っていても発生する可能性があります。

工事時間を平日の日中(午前8時~午後6時)に限定し、休日や早朝・夜間の作業は避けるなど、生活への配慮を示すことが大切です。

特に騒音が大きい工程については、事前に再度告知を行うことで、入居者の理解を得やすくなります。

工事の遅延や費用の超過も、トラブルの原因となります。天候不良や予想外の劣化の発見により、工期が延びたり費用が増加したりすることがあります。

こうした事態に備え、契約時に想定外の事態が発生した場合の対応について、施工業者と明確に取り決めておくことが重要です。

また、入居者にも「天候等により工期が変更になる可能性がある」ことを事前に伝えておくことで、理解を得やすくなります。

賃貸物件の大規模修繕を成功させる施工会社の選び方

大規模修繕の成否は、施工会社選びにかかっていると言っても過言ではありません。

信頼できる業者を選定するためのポイントを解説します。

信頼できる業者を見極めるポイント

大規模修繕を任せる施工会社を選ぶ際には、複数の観点から総合的に判断することが重要です。

価格だけで決めるのではなく、実績、技術力、対応力などを総合的に評価しましょう。

ポイント確認内容重要性
施工実績・同規模・同構造の物件での工事経験
・事例・評価の確認
非常に重要
資格・許認可・建設業許可
・建築士・施工管理技士の在籍確認
重要
見積書の透明性・数量・単価が明確か
・「一式」表記が多くないか
非常に重要
アフターサービス・定期点検
・保証内容
・不具合発生時の対応力
重要

施工実績の確認は最も重要なポイントです。同規模・同構造の賃貸物件での修繕経験が豊富な業者を選ぶことで、起こりうる問題を予測した適切な対応が期待できます。

可能であれば、過去の施工事例を見せてもらい、管理組合やオーナーの評価を聞くことも有効です。

資格・許認可の有無も重要な判断材料です。建設業許可、一級建築士や施工管理技士などの有資格者の在籍状況を確認します。これらの資格を持つ業者は、技術力と信頼性の裏付けとなります。

見積書の透明性も見極めポイントです。工事項目ごとに数量、単価、金額が明記されている詳細な見積書を提出する業者は、信頼性が高いといえます。

「一式」という表記が多い見積書は、内訳が不明確で、後から追加費用が発生するリスクがあるため注意が必要です。不明点があれば遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。

アフターサービスや保証制度の充実度も確認すべきです。

工事完了後の定期点検、不具合が発生した際の対応、保証期間と保証内容を明確にしている業者を選ぶことで、長期的な安心が得られます。

管理会社・専門業者の比較

大規模修繕を依頼する先として、管理会社と修繕専門業者の2つの選択肢があります。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合った選択をしましょう。

依頼先メリットデメリット
管理会社・物件の状況を把握しており調整がスムーズ
・入居者への説明・連絡がしやすい
・中間マージンが発生し費用が高くなる傾向
・大規模修繕の実績が少ない管理会社もある
修繕専門業者・中間マージンがなく費用を抑えやすい
・専門性が高く技術力・提案力が期待できる
・業者選定や入居者対応をオーナーが行う
・調整に手間がかかる場合がある

どちらを選ぶ場合でも、複数の業者から相見積もりを取ることが重要です。

3~5社程度に見積もりを依頼し、価格だけでなく、提案内容、実績、対応の丁寧さなどを総合的に比較検討しましょう。

極端に安い見積もりには注意が必要で、必要な工事が省かれていたり、品質の低い材料が使用されている可能性があります。

大規模修繕の実施の流れと期間

大規模修繕をスムーズに進めるためには、全体の流れと各段階でのポイントを理解しておくことが重要です。

計画から完了までの工程を解説します。

修繕計画から完了までのステップ

大規模修繕は、計画段階から工事完了まで、概ね1年から1年半程度の期間を要します。

各段階での重要なポイントを押さえ、計画的に進めましょう。

  1. STEP

    建物診断と長期修繕計画の策定

    まず、専門業者による建物診断を実施し、劣化状況を正確に把握します。

    診断結果に基づいて、必要な工事内容と優先順位、概算費用、実施時期を含む長期修繕計画を策定します。

    この段階で、修繕積立金の状況を確認し、不足がある場合は資金調達の方法を検討します。

  2. STEP

    施工会社の選定

    複数の業者に見積もりを依頼し、提案内容、実績、価格などを比較検討します。

    見積書の内容が不明確な点があれば、必ず説明を求めます。

    業者選定後、工事内容、工期、支払い条件などを明記した契約を締結します。

  3. STEP

    入居者への告知と説明

    工事開始の2~4週間前までに、各戸に文書で告知を行います。

    その後、住民説明会を開催し、工事の内容やスケジュール、生活への影響などを丁寧に説明します。

    入居者からの質問や要望に誠実に対応し、理解と協力を得ることが、スムーズな工事進行の鍵となります。

  4. STEP

    工事の実施

    足場の設置から始まり、外壁工事、防水工事、塗装工事、設備工事など、計画に基づいて順次進めます。

    工事期間中は、定期的に施工業者から進捗報告を受け、問題が発生した場合は速やかに対応します。

    入居者からの問い合わせやクレームにも、丁寧に対応することが重要です。

  5. STEP

    完了検査とアフターフォロー

    工事完了後、オーナーまたは管理会社の立会いのもと、仕上がりを確認します。

    不備があれば手直しを依頼し、問題なければ引き渡しを受けます。

    工事完了を入居者に報告し、協力への感謝を伝えます。

    その後も定期的に点検を行い、不具合があれば保証期間内に対応してもらいます。

工事期間の目安

大規模修繕の工事期間は、建物の規模や工事内容によって異なります。

一般的な目安を知っておくことで、スケジュールの計画が立てやすくなります。

物件規模全体工事期間主な工程と期間の目安
小規模アパート
(10〜20戸)
約3〜4ヶ月・仮設工事(足場・養生):1〜2週間
・外壁工事(下地処理・塗装・シーリング):1〜2ヶ月
・防水工事:2〜3週間
・鉄部塗装・仕上げ:2〜3週間
・足場解体・清掃:1週間
中規模マンション
(50〜100戸)
約4〜6ヶ月・小規模物件より各工程が長期化
・共用部(エレベーター、給排水設備)の工事が追加
・工程全体が総じて長くなる傾向
大規模マンション
(100戸以上)
6ヶ月以上・規模が大きく工期も長期化
・入居者への影響が大きいため説明・調整が重要
・工事工程が複雑化しやすい

工事中の入居者対応として、工事の進捗状況を定期的に掲示板や文書で報告し、予定の変更がある場合は速やかに告知します。

ベランダや駐車場の使用制限がある期間は、代替策を提案するなど、生活への影響を最小限に抑える配慮が大切です。

騒音や振動が特に大きい工程の前には、再度告知を行い、理解を求めます。

天候不良などにより工期が延びる可能性もあるため、入居者には「工期が変更になる可能性がある」ことを事前に伝えておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

賃貸物件の大規模修繕に関するよくある質問【FAQ】

賃貸物件の大規模修繕について、オーナー様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

疑問の解消にお役立てください。

Q

大規模修繕は何年ごとに必要ですか?

A

国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕は12~15年に1回が目安とされています。

これは、外壁塗装や屋上防水などの主要工事が、一般的にこの周期で更新時期を迎えるためです。

ただし、建物の構造、立地条件、使用材料によって適切な周期は変動します。海沿いや日当たりの強い場所では劣化が早まる傾向があります。

法的な義務ではないため、定期的な建物診断により実際の劣化状況を確認し、適切なタイミングで実施することが重要です。

Q

修繕費用は誰が負担するのですか?

A

賃貸物件の大規模修繕費用は、原則としてオーナー(賃貸人)が負担します。

民法第606条では、賃貸人は「使用収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められており、建物の構造的な修繕や設備の維持管理はオーナーの責任です。

入居者(賃借人)が負担するのは、故意や過失による破損の修理や、日常的な清掃・軽微なメンテナンスに限られます。

大規模修繕の費用は家賃収入から計画的に積み立てを行い、家賃収入の5~10%程度を修繕積立金として確保することが推奨されています。

Q

工事中に家賃を減額する必要はありますか?

A

大規模修繕工事中の家賃減額については、法的な義務はありません。

しかし、工事の内容や期間、入居者の生活への影響の程度によっては、任意で減額を検討する場合もあります。

例えば、ベランダの使用が長期間制限される、騒音や振動が著しい、水道やガスの使用に支障が出るなど、居住環境が大きく損なわれる場合は、入居者との信頼関係維持のため、一定期間の家賃減額や、迷惑料の支払いを行うオーナーもいます。

ただし、事前に十分な説明を行い、入居者の理解を得ることで、減額せずに工事を完了できるケースも多くあります。個別の状況に応じて、管理会社や専門家に相談することをお勧めします。

Q

入居者が工事を拒否した場合はどうすればよいですか?

A

民法では、賃借人は賃貸人が行う修繕工事に協力する義務(受忍義務)があると定められています。

入居者が工事を拒否する場合、まずは工事の必要性と目的を丁寧に説明し、理解を求めることが大切です。

それでも協力が得られない場合は、管理会社や弁護士に相談し、法的な手続きを検討します。

工事への非協力が契約違反に該当する場合、最終的には契約解除も視野に入れることになりますが、これは最後の手段です。

多くの場合、入居者の不安や不満を丁寧に聞き取り、可能な範囲で配慮を示すことで、協力を得ることができます。

Q

修繕積立金はどのように準備すればよいですか?

A

修繕積立金は、家賃収入から毎月一定額を積み立てることが基本です。

目安として、家賃収入の5~10%程度を修繕積立金として確保することが推奨されています。

例えば、月額家賃が50万円の物件であれば、毎月2.5~5万円を積み立てます。

長期修繕計画を策定し、将来必要となる修繕費用を見積もった上で、逆算して毎月の積立額を決定します。

専用の口座を開設し、家賃収入とは別に管理することで、計画的な積立が可能になります。

修繕積立金が不足する場合は、金融機関のアパートローンやリフォームローンを活用する方法もありますが、借入には利息が発生するため、可能な限り自己資金で賄えるよう、早めの準備が重要です。

まとめ

賃貸アパート・マンションの大規模修繕は、建物の安全性を保ち、資産価値を維持し、安定した賃貸経営を続けるために欠かせない取り組みです。

本記事でご紹介した重要なポイントを、以下のチェックリスト形式でまとめます。

  • 大規模修繕は12~15年に1回を目安に実施する
  • 長期修繕計画を策定し、5年ごとに見直す
  • 家賃収入の5~10%を修繕積立金として確保する
  • 定期的な建物診断により劣化状況を把握する
  • 複数の業者から相見積もりを取り、実績と提案内容で比較する
  • 入居者への事前告知と住民説明会を丁寧に行う
  • 工事中の入居者対応を適切に行い、トラブルを未然に防ぐ
  • 修繕を怠ると、入居率低下・資産価値低下・法的リスクが発生する

大規模修繕は高額な投資ですが、先延ばしにすることで、より大きな費用負担や深刻な問題を招きます。

早期の計画と準備により、建物の寿命を延ばし、長期的に安定した賃貸経営を実現することができます。