【賃貸経営】相続した築古アパート・マンションをどうするか迷っている方へ「続ける・売る・手放す」を決める3つの判断軸

判断軸① 「物件の状態」と「これからかかる修繕費」

まず問うべきは、「この物件は、あとどれくらい安全に・快適に使える状態か」です。

  • 築年数と修繕履歴は把握できているか
    築30〜40年以上で、大規模修繕(外壁・屋上防水・設備更新など)の履歴が少ないと、今後まとまった修繕費が発生しやすくなります。
  • 老朽化のサインは出ていないか
    外壁のひび割れ・剥離、雨漏り跡、給排水トラブル、共用部の腐食・サビ・手摺ぐらつきなどがあれば、放置は危険です。

ここで整理したいのは、

  • 近い将来「どの部位」を「どのくらいの費用」で直さないといけないか
  • 修繕をしなかった場合、入居者の安全性や建物の資産価値にどんな悪影響が出るか
    という2点です。

もし「危険だが修繕の目処が立たない」状態で放置すると、いわゆる負動産(持っているだけで損とリスクが増えていく不動産)になりやすく、固定資産税・近隣クレーム・倒壊リスクなど、問題が雪だるま式に膨らんでいきます。

判断軸② 「収支・税金」と「家計・老後への影響」

次の問いは、「この物件を持ち続けることが、自分の家計と老後にとってプラスかどうか」です。

  • 今の収支は本当にプラスか
    家賃収入 −(管理費・修繕費・固定資産税・ローン返済)がどの程度か、1年単位で数字にします。
  • これからの出費はどれくらいか
    大規模修繕・空室増・家賃下落・相続税・将来の譲渡所得税を含めて、5〜10年のスパンでざっくりシミュレーションします。
  • 税金面のポイントは押さえているか
    相続後に賃貸を続ければ不動産所得として課税され、売却すれば譲渡所得税がかかるため、どちらを選ぶかで手取りが変わります。

ここでのキモは、

  • 「今は黒字に見えても、将来の修繕費を含めると実質マイナスにならないか」
  • 「その物件に縛られることで、自分や家族の生活・老後資金が圧迫されないか」
    という現実を直視することです。

判断軸③ 「自分と家族の本音」と「相続人同士の関係」

3つ目の問いは、「本当に大家業を続けたいのか」「家族全員にとって良い選択か」です。

  • 自分は賃貸経営をやりたいのか
    クレーム対応・賃貸管理・修繕判断を、仕事や家事と並行して続ける覚悟があるかどうかが重要です。
  • 他の相続人の意見はどうか
    きょうだいの中に「現金で分けたい人」と「不動産で持ちたい人」が混ざると、その後の管理や売却で揉めやすくなります。
  • 将来の相続(二次相続)まで見えているか
    自分が亡くなったあと、この築古物件をさらに子どもが相続したとき、「ありがたい資産」なのか「負担だけの負動産」なのかも考える必要があります。

感情的には「親が残してくれた物件だから手放したくない」と思っても、家族全体にとって負担が大きいのであれば、冷静に線を引くことも大切になります。

「続ける・売る・手放す」3つの答えの出し方

ここまでの3つの軸を踏まえると、典型的には次のような結論に整理できます。

1. 「続ける」が向いているケース

  • 立地が良く、賃貸需要が強い(駅近・都市部・再開発エリアなど)。
  • 現在の収支が明確な黒字で、将来の修繕費を織り込んでも長期的にプラスを見込める。
  • 自分または家族の中に、賃貸経営を学んで続けていく意思がある。

この場合は、

  • 長期修繕計画を立てる
  • 管理会社・工事会社と連携して計画的に手を入れる
  • 税理士と相談しながら、節税や承継も含めて設計する
    ことで、「親の資産」を「自分の資産」へと育てていく選択が現実的です。

2. 「売る」が向いているケース

  • 老朽化が進み、今後の大規模修繕に多額の費用がかかる見込みだが、家賃アップや入居率改善で回収できそうにない。
  • すでに収支が赤字、または今後の修繕・空室リスクを考えると、家計・老後への負担が大きくなりそう。
  • 自分も家族も大家業を続ける意思がなく、相続人同士のトラブルを避けたい。

この場合は、

  • 相続登記や権利関係を整理したうえで
  • 複数の不動産会社・専門業者から査定を取り
  • 税理士に譲渡所得税の概算を確認しながら
    「いつ売るか」「どう売るか」を決めていくのが、損を減らす王道パターンです。

3. 「手放す(相続放棄など)」が視野に入るケース

  • ローン残高が大きく、売っても借金が残る可能性が高い。
  • 建物が危険なレベルで老朽化しており、再生の目処が立たない。
  • 他の財産も含め、「受け継ぐメリットより負担が明らかに大きい」と専門家から説明を受けた。

相続放棄には期限と手続きのルールがあり、他の財産もまとめて放棄になるため、弁護士や司法書士・税理士などへの早めの相談が不可欠です。

最後に:問いに対する「あなたなりの答え」

「相続した築古アパート・マンションをどうするか」という問いには、誰にでも当てはまる正解はありません。
しかし、次の3つの問いに正面から向き合えば、自分なりの答えは必ず見えてきます。

  1. この物件は、安全に・安心して貸し続けられる状態か(物件の状態と修繕費)。
  2. この物件を持ち続けることは、自分の家計と老後にとってプラスか(収支・税金・家計への影響)。
  3. この物件を残すことは、自分と家族にとって本当に望ましいか(本音と家族関係)。

この3つの軸で整理した結果、

  • 立地が良く、収支もプラスで、修繕費を払っても十分リターンが見込める → 「続ける」が合理的な答え。
  • 老朽化・赤字・負担が重く、家族も大家業を望んでいない → 「売る」か「手放す」が前向きな答え。

大切なのは、「親が残してくれたから何となく持つ」のでも、「怖くなったから勢いで売る」のでもなく、数字と現実を踏まえて、自分と家族にとって納得できる選択をすることです。
そのプロセスを丁寧に踏めば、「続ける・売る・手放す」のどれを選んでも、それがあなたにとっての正しい答えになります。

相続した築古アパート・マンションをどうするかという大きな判断は、一人ひとりの事情や価値観によって答えが変わります。家計のこと、家族のこと、将来の暮らし方…考えなければいけない要素が重なれば重なるほど、「正解」が見えにくくなるものです。

新東亜工業ができることは、「続ける・売る・手放す」という三つの選択肢のあいだで揺れているお気持ちを整理し、今どこから手をつけるべきかを一緒に言葉にしていくお手伝いです。具体的な答えを押しつけるのではなく、状況やお考えを丁寧に伺いながら、「何を優先したいのか」「どんな終着点なら納得できるのか」が見えてくるように伴走していきます。

「まだ何も決まっていない」「考えがまとまっていない」という段階でも構いません。相続した物件について感じている不安や違和感を、そのまま言葉にしていただくところから始められますので、まずは肩の力を抜いてご相談いただければと思います。