【マンション経営】一棟マンションを「売却するか大規模修繕するか」で迷うオーナーが最初に確認すべき3つのポイント
2026/01/23
一棟マンションを持っているオーナーであれば、築20年を超えたあたりから必ず出てくるのが「大規模修繕」と「売却」という二つのキーワードです。
外壁や屋上防水、共用廊下、エントランス、配管や設備の老朽化が目に見えて進み、管理会社や施工会社から「そろそろ大規模修繕を検討した方がいい」と言われ始める。同時に、「このタイミングで一棟売却して、別の資産に切り替えた方が良いのではないか」という考えも浮かんでくる。まさに、一棟マンションのオーナーが「売却か大規模修繕か」で頭が止まる瞬間です。
この記事では、一棟マンション(主に鉄筋コンクリート造・築20~30年前後)を所有している個人オーナーが、「売却するか、大規模修繕をしてマンション経営を続けるか」で迷ったときに、最初に確認しておくべき3つのポイントをお伝えします。結論を急ぐことよりも、「いつでも冷静に決断できる状態をつくること」をゴールにしています。
目次
なぜ一棟マンションで「売却か大規模修繕か」が決められなくなるのか
一棟マンションのオーナーが「売却か大規模修繕か」の判断で止まってしまうとき、多くの人が「自分は決断力がないのではないか」と感じがちです。
しかし、実際にはそうとは限りません。決断力の問題ではなく、「判断に必要な材料が整理されていないだけ」というケースがほとんどです。
頭の中には、次のような要素が同時に、しかもぼんやりと混ざったまま存在しています。
・今回の大規模修繕にどれくらい費用がかかりそうなのか
・このマンションを修繕して今後も10年、20年と運営したときに収支はどうなるのか
・今、一棟売却した場合にどのくらいの手取りが残りそうなのか
・自分の年齢や健康状態、家族構成、相続を考えると、いつまで一棟マンションの経営に関わり続けたいのか
これらを具体的な数字や事実として整理する前に、感覚だけで「売るべきか、修繕すべきか」を一気に決めようとするため、必ず行き詰まります。
判断が止まっているのは、「決断力がないから」ではなく、「判断できる状態になっていないから」です。
ここを理解しておけば、必要以上に自分を責めたり、焦って結論を出そうとしたりするプレッシャーを減らすことができます。
売却と大規模修繕を同時に決めようとすると思考が固まる
一棟マンション経営が難しくなる大きな理由の一つは、「売却」と「大規模修繕」という二つの重い判断が、同じタイミングで浮かびやすい構造にあります。
・この修繕をやるくらいなら、売った方が楽なのではないか
・とはいえ、この状態のまま売ってしまって本当にいいのか
・大規模修繕費をかけてまで、今後もマンション経営を続ける意味があるのか
こうして、「売却」と「大規模修繕」を同時に決めようとすることで、思考が止まってしまいます。
本来は、次のように分けて考える必要があります。
① 今のマンションの状態が、「売却」「継続」「修繕」の判断にどのような影響を与えるかを整理する
② 売却した場合・大規模修繕して継続した場合・最低限だけ整えて様子を見る場合の、おおまかな数字(キャッシュフロー・手取り)を比べる
③ 自分と家族のライフプランを踏まえ、どの選択肢が「一番納得感が高いか」を決める
この順番を飛ばして、いきなり「売却するか、大規模修繕するか」だけを決めようとするからこそ、判断が一気に重くなります。
一棟マンションで最初に確認すべき3つのポイント
一棟マンションを「売却するか、大規模修繕して経営を続けるか」で迷ったとき、最初に確認しておきたいポイントは次の3つです。
① 建物の状態が「判断に影響する状態」かどうか
② キャッシュフローと大規模修繕費・売却益のバランス
③ 自分と家族のライフプラン・相続との関係
順番に見ていきます。
① 建物の状態が「判断に影響する状態」かどうか
一棟マンションのオーナーは、「修繕の話が出た=すぐにやるかどうかを決めなければならない」と感じがちです。
しかし、本当に最初に確認すべきなのは「やるかどうか」ではありません。一歩手前の、「今の建物の状態が、今後の判断にどう影響するか」です。
具体的には、次のようなポイントを一度紙に書き出してみると整理しやすくなります。
・このまま売却した場合、買主から必ず指摘されそうな劣化や不具合はどこか
(例:外壁のひび割れが目立つ、タイルの浮き・剥落、屋上防水の膨れや亀裂、鉄部のサビの進行 など)
・将来の大きなトラブルやクレームにつながりやすい部分はどこか
(例:雨漏り跡が繰り返し発生している箇所、エントランスの床の段差、階段や手すりのぐらつき など)
・放置すると「説明が難しくなる」箇所はないか
(例:以前に応急工事だけで済ませた雨漏り、入居者から指摘されているが様子見にしている不具合 など)
ここで大事なのは、「すべての劣化を完璧に洗い出すこと」ではありません。
・売却価格や条件交渉に強く影響しそうなところ
・将来の修繕費を大きく左右しそうなところ
・放置すると、のちのち説明しづらくなりそうなところ
この「判断に影響するポイント」がどこかを、ざっくりでいいので把握しておくことが重要です。
この整理ができていれば、
・そのまま売っても良い部分
・最低限だけは手を入れてから売るべき部分
・売却に関係なく、オーナーとして責任を持って直しておきたい部分
といった区別がつきやすくなり、「大規模修繕を全部やる/何もしない」という二択で悩まずに済みます。
② キャッシュフローと大規模修繕費・売却益のバランス
二つ目のポイントは、数字の面から見たバランスです。一棟マンションのオーナーが感覚だけで判断してしまうと、
・今は黒字だし、ローンも払えているから大丈夫だろう
・このマンションは立地も悪くないし、修繕しておけば何とかなるだろう
という結論に引っ張られがちです。
しかし、「売却するか、大規模修繕するか」を考えるときには、少なくとも次の数字は一度整理しておきたいところです。
・現在の年間家賃収入(満室ベースと実績ベース)
・年間の支出(ローン返済、固定資産税、管理委託料、共用部の光熱費、保険料など)
・今後10年前後で発生しそうな大規模修繕費の目安
・今、一棟売却した場合の「おおよその手取り」
(想定売却価格 − ローン残債 − 諸経費・税金)
細かいシミュレーションを組む必要はありません。Excel や手書きでも構いませんので、次のようなイメージで比較できれば十分です。
・このまま修繕せずに5年保有した場合の累計手取り
・今、大規模修繕をしてから10年保有した場合の累計手取り
・今のタイミングで売却した場合の手取り+その資金を別の用途に回した場合のイメージ
ここでのポイントは、「どの選択肢が一番お金が残るか」を完璧に当てることではありません。
・大規模修繕をして保有を続けた場合
・大規模修繕は最低限にとどめ、数年後の売却を見込む場合
・今のタイミングで売却して、他の資産や事業に切り替える場合
これらの「差の大きさ」を把握し、「自分がどれくらいのリスクと手間を受け入れられるのか」を考えやすくすることが目的です。
数字を並べてみると、
・思っていたよりも、今のマンション経営で手元に残っているお金が少ない
・大規模修繕費をかけても、家賃水準や今後の空室リスクを考えると回収に時間がかかりそう
・売却益を使ってローンを返し、老後資金や別の投資に回した方が自分には合っているかもしれない
など、感覚の段階では見えていなかった事実が浮かび上がってきます。
③ 自分と家族のライフプラン・相続との関係
三つ目のポイントは、お金や建物だけでは語れない部分です。一棟マンションの経営は、オーナー自身と家族のライフプランと強く結びついています。
例えば、次のような問いを一度書き出してみると、自分の中の前提が見えやすくなります。
・自分は何歳くらいまで、一棟マンションの経営判断に関わり続けるつもりなのか
・体力・気力・判断力が落ち始める前に、「出口」をある程度決めておきたい年齢はいつ頃か
・配偶者や子どもは、この一棟マンションを「引き継ぎたい」と考えているのか、「むしろ手放してほしい」と考えているのか
・相続や贈与について、どのような方向性をイメージしているのか
この部分は、誰かが正解を教えてくれるものではありません。ですが、まったく整理しないまま時間だけが過ぎてしまうと、次のような状況になりやすくなります。
・自分が高齢になってから急に大規模修繕と売却の判断を迫られる
・家族がマンションの状況を理解しないまま、相続で困る
・売りたくても、建物の状態や市場環境が悪化していて条件が厳しくなる
「今は売らない」という判断が本当の意味で正解になるのは、
・将来の判断に備えて、建物とお金とライフプランの情報が整理されている
・いつでも「売る」「修繕する」「続ける」の選択肢を比較できる状態を保てている
という条件が整っている場合だけです。
「今は売らない」と決めたあとにやってはいけないこと
3つのポイントを整理したうえで、結果として「今のところは売却せず、大規模修繕を前提にマンション経営を続ける」という結論に落ち着くこともあります。
その判断自体は、決して悪いものではありません。
ただし、このあとにやってはいけないことがあります。
それは、「今は売らないと決めたから、しばらく何も考えなくていい」という状態に入ってしまうことです。
・建物の状態を改めて見に行かなくなる
・修繕や設備更新の話題を意識的に避けるようになる
・将来の「売却タイミング」について家族と話す機会を持たない
こうした状態が続くと、次に売却や大きな修繕を検討するときに、
・以前よりも建物の状態が悪化していて、選択肢が狭まっている
・まとまった修繕が急に必要になり、慌てて決断せざるを得ない
・事前に準備していれば乗れたはずの良い売却条件を逃してしまう
といった事態になりやすくなります。
「今は売らない」という判断が、先延ばしになるのか、戦略的な準備期間になるのかは、その後の行動で決まります。
一棟マンションオーナーのための実務ステップ
ここまでの話を、一棟マンションオーナーが実際に動くときのステップに落としてみます。
ステップ1:マンションの状態をラフに棚卸しする
・自分の目で、外壁・屋上・バルコニー・共用廊下・階段・エントランス・設備周りを一通り見て、気になる箇所をメモする
・過去の大規模修繕や部分修繕の履歴(いつ・どこを・いくらで工事したか)を一覧にする
・「このまま売るときに、説明が必要になりそうだな」と感じる箇所に印をつけておく
ステップ2:キャッシュフローと大規模修繕・売却の数字を並べる
・年間の収支(家賃 − 経費 − ローン返済)をA4一枚でまとめる
・今後10年のあいだに想定される大規模修繕項目と、その概算費用を書き出す
・想定売却価格とローン残債から、「今売ったら手元にどのくらい残りそうか」のざっくり数字を出す
ステップ3:ライフプランと出口戦略を仮決めする
・「何歳くらいまで自分でマンション経営の判断を続けるか」の目安を書いてみる
・家族と「この一棟マンションをどうしたいか」を一度話してみる(引き継ぐのか、売って資金に変えたいのか)
・「いつでも売れる状態をキープしながら当面は保有」「○年後を目安に売却も視野に入れる」など、ざっくりした出口方針を言葉にしておく
ここまで整理できていれば、
・今は大規模修繕を優先しながらマンション経営を続ける
・最低限の整備だけして、数年以内の売却を軸に考える
・市場が良いうちに売却し、別の投資やライフプランに切り替える
といった選択肢を、「感情」ではなく「材料」をもとに比較できるようになります。
まとめ|結論は最後でいいが、整理だけは先に進める
一棟マンションのオーナーが「売却するか、大規模修繕してマンション経営を続けるか」で迷うのは、ごく自然なことです。無理に今すぐ結論を出す必要はありません。
ただし、結論を出さないまま、建物の状態もお金の数字もライフプランも整理しない状態で時間だけが過ぎてしまうと、「本当は選べたはずの選択肢」が、知らないうちに減っていきます。
・建物の状態が判断にどう影響するのか
・大規模修繕費・売却益・キャッシュフローのバランスがどうなっているのか
・自分と家族の人生設計にとって、どの選択が一番納得感があるのか
この3つのポイントを一度整理しておけば、「売却するか大規模修繕するか」で迷い続ける状態から、「いつでも決められる状態」に変えていくことができます。