アパート経営が赤字になったら?原因別の対処法と判断基準|関東エリアのオーナー向け
2026/01/30
目次
はじめに:「赤字=すぐに撤退」とは限らない
「気づいたらアパート経営が赤字になっていた」──そんな状況に直面すると、多くのオーナーは焦りや不安を感じます。
しかし、「赤字」と一口に言っても、その中身はさまざまです。
会計上は赤字でも、キャッシュフローはプラスというケースもあれば、本当に毎月お金が出ていっているケースもあります。
この記事では、アパート経営が赤字になったときに、まず**「何が原因か」を特定する方法と、原因別の対処法、そして「続けるべきか、撤退すべきか」の判断基準**を解説します。
関東エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木)で賃貸経営をしているオーナーの方は、ぜひ参考にしてください。
「会計上の赤字」と「キャッシュフローの赤字」の違い
まず押さえておきたいのは、「会計上の赤字」と「キャッシュフローの赤字」は別物だということです。
会計上の赤字とは
確定申告で計算する「不動産所得」がマイナスになっている状態です。
不動産所得 = 家賃収入 −(管理費+修繕費+固定資産税+減価償却費+借入金利息+その他経費)
ポイントは、減価償却費が含まれていることです。
減価償却費は、実際にお金が出ていくわけではない「帳簿上の経費」なので、減価償却費が大きいと、会計上は赤字でも実際の手元にはお金が残っていることがあります。
例:
- 家賃収入:500万円
- 経費(現金支出):300万円
- 減価償却費:250万円
- 不動産所得:500万円 − 300万円 − 250万円 = ▲50万円(会計上は赤字)
- 実際のキャッシュフロー:500万円 − 300万円 = +200万円(手元にはお金が残る)
このケースは、会計上は赤字でも、キャッシュフローはプラスなので、直ちに問題というわけではありません。
キャッシュフローの赤字とは
一方、実際に毎月・毎年お金が出ていっている状態が、キャッシュフローの赤字です。
キャッシュフロー = 家賃収入 − 管理費 − 修繕費 − 固定資産税 − ローン返済額 − その他経費
ローン返済額には「元金返済」が含まれますが、元金返済は経費にならないため、会計上の計算とは異なります。
例:
- 家賃収入:500万円
- 経費(現金支出):300万円
- ローン返済額(元利合計):250万円
- キャッシュフロー:500万円 − 300万円 − 250万円 = ▲50万円(毎年50万円の持ち出し)
このケースは、本当に手元からお金が出ていっているので、早急な対策が必要です。
まず確認すべきこと
「赤字だ」と感じたら、まず**「会計上の赤字か、キャッシュフローの赤字か」を確認**してください。
キャッシュフローがプラスなら、すぐに慌てる必要はありません。
キャッシュフローがマイナスなら、原因を特定して対策を打つ必要があります。
赤字の原因を特定する(4つのポイント)
キャッシュフローが赤字になっている場合、原因は大きく4つに分類できます。
原因1:空室率が高い
空室が多いと、その分の家賃収入がゼロになり、収支を直撃します。
チェックポイント:
- 入居率は何%か(90%以上が目安)
- 空室期間はどのくらいか(1ヶ月以内が理想)
- 競合物件と比べて、募集条件・賃料は妥当か
関東エリアでも、東京23区内と郊外、神奈川・千葉・埼玉の駅近と駅遠では、入居率の傾向は異なります。
自分の物件のエリア特性を踏まえて、空室率が「高い」のか「普通」なのかを判断しましょう。
原因2:賃料が低すぎる
入居率は高いのに収支が悪い場合、賃料が相場より安すぎる可能性があります。
チェックポイント:
- 周辺の競合物件と比べて、賃料は妥当か
- 新規募集時と既存入居者の賃料に差がないか
- 長期入居者の賃料が、相場より大幅に安くなっていないか
特に、相続で物件を引き継いだオーナーの場合、親の代からの賃料設定がそのままで、相場より1〜2万円安いというケースがよくあります。
原因3:経費が高すぎる
家賃収入に対して、経費(管理費・修繕費・保険料など)が高すぎると、収支が悪化します。
チェックポイント:
- 管理費は家賃収入の何%か(5〜8%が目安)
- 修繕費が毎年どのくらいかかっているか
- 無駄な経費(使っていないサービスなど)がないか
築年数が経過した物件では、修繕費が増えるのは避けられませんが、管理会社の言い値で修繕を続けていると、割高になっていることがあります。
原因4:ローン返済が重すぎる
家賃収入に対して、ローン返済額の比率が高すぎると、キャッシュフローが圧迫されます。
チェックポイント:
- ローン返済額は、家賃収入の何%か(50%以下が目安)
- 金利は何%か、変動金利で上昇していないか
- 残債はいくらで、あと何年返済が続くか
特に、物件購入時に「満室想定」で返済計画を立てていた場合、空室が出ると一気に返済比率が上がり、キャッシュフローがマイナスになることがあります。
原因別の具体的な改善策
原因が特定できたら、それに応じた改善策を検討します。
空室率が高い場合の改善策
- 募集賃料の見直し(相場に合わせる)
- 募集条件の緩和(敷金・礼金ゼロ、保証人不要など)
- 物件写真・情報の改善(プロに撮影を依頼、情報を充実させる)
- 仲介会社への働きかけ(広告料の見直し、優先紹介の依頼)
- 設備投資(人気設備の追加:宅配ボックス、無料Wi-Fiなど)
- 管理会社の変更(募集力の高い会社に切り替える)
賃料が低すぎる場合の改善策
- 新規募集時の賃料見直し(退去時に相場に合わせる)
- 既存入居者への賃料改定(更新時に値上げ交渉)
- 付加価値の追加(設備追加・リノベーションで賃料アップ)
ただし、賃料改定は入居者との交渉が必要になるため、慎重に進める必要があります。
経費が高すぎる場合の改善策
- 管理会社の見直し(他社と比較して適正か確認)
- 修繕の相見積もり(管理会社経由だけでなく、複数社から見積もりを取る)
- 保険の見直し(補償内容と保険料のバランスを確認)
- 不要なサービスの解約
ローン返済が重すぎる場合の改善策
- 金融機関への返済条件交渉(返済期間の延長、金利の見直し)
- 借り換え(より低金利のローンへ切り替え)
- 繰り上げ返済(余裕資金がある場合)
- 物件の一部売却(複数物件を持っている場合、収益性の低い物件を売却して返済に充てる)
「損切り」すべきか「立て直し」すべきかの判断基準
改善策を講じても収支が改善する見込みがない場合、「売却して撤退する」という選択肢も検討すべきです。
立て直しを優先すべきケース
- 原因が明確で、改善策を打てば収支が改善する見込みがある
- 立地・建物の状態は良く、長期的には収益が見込める
- ローン残債より物件価値が高い(売却してもあまり手元に残らない)
- あと数年でローン返済が終わる
売却を優先すべきケース
- 改善策を打っても収支が改善する見込みがない
- エリアの賃貸需要が明らかに減少している
- 築年数が古く、今後も修繕費が増え続ける見込み
- ローン残債より物件価値が高く、売却すればまとまった資金が手元に残る
- 他の物件や投資に資金を振り向けた方が効率が良い
判断に迷ったときの考え方
「今後10年、この物件を持ち続けた場合のトータルリターン」と「今売却した場合の手取り額」を比較してみてください。
- 持ち続けた場合:今後10年のキャッシュフロー累計 + 10年後の売却想定額
- 今売却した場合:売却価格 − ローン残債 − 譲渡費用・税金
どちらが「手元に残る金額」として大きいかを試算すると、判断の材料になります。
ただし、将来の賃料・空室率・修繕費・売却価格はあくまで予測なので、一人で試算するのが難しければ、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:赤字の「中身」を見極めることが第一歩
アパート経営が赤字になったとき、慌てて「売らなきゃ」と思う必要はありません。
まずは、「会計上の赤字か、キャッシュフローの赤字か」を確認し、キャッシュフローがマイナスなら、原因を特定して対策を打つことが第一歩です。
原因は「空室」「賃料」「経費」「ローン」のいずれか(または複合)であることがほとんどです。
原因がわかれば、対策も見えてきます。
それでも改善が難しい場合は、売却という選択肢も含めて、トータルで最適な判断をすることが大切です。