【賃貸経営】賃貸経営が赤字になったらまず何をする?損益通算の仕組みと「いい赤字・悪い赤字」の見分け方、黒字化までの具体策
2026/02/04
「毎年の確定申告で賃貸経営が赤字になる」「税金は減っているけれど、このままで本当に大丈夫なのか不安」。
関東でも、こうした悩みを抱える個人オーナーが増えています。
賃貸経営の赤字には、「税金が減る意味での“いい赤字”」と、「資金繰りが持たなくなる“悪い赤字”」があります。
この2つをごちゃまぜにしたまま「節税になっているから大丈夫」と考えるのは危険で、赤字の中身を分解してから対策を考える必要があります。
この記事では、国税庁のルールに沿って不動産所得と損益通算の基本を押さえつつ、賃貸経営の「いい赤字・悪い赤字」の見分け方と、赤字から抜け出すための具体的な優先順位を整理します。
目次
第1章 賃貸経営の「赤字」とは何か
まず、「赤字」の意味を整理しておきます。
税務上の不動産所得は、国税庁の定義では「総収入金額から必要経費を差し引いて計算した所得」です。
つまり、家賃収入から、管理費・修繕費・減価償却費・借入金利子などを引いた結果がマイナスであれば、「不動産所得が赤字」という状態になります。
ここで注意したいのは、「税務上の赤字」と「実際の現金の出入り(キャッシュフロー)」は必ずしも一致しないという点です。
たとえば、減価償却費が大きい新築物件や、設備更新をまとめて行った年は、帳簿上は赤字でも、手元の現金はプラスというケースもあります。
逆に、税務上はギリギリ黒字でも、ローン返済や私的な支出が重なって、実際の口座残高が減り続けているオーナーもいます。
第2章 国税庁ルールに基づく「損益通算」の基本
不動産所得が赤字になった場合、その損失は、給与所得など他の所得と通算して、所得税・住民税を軽減できる場合があります。
国税庁のタックスアンサー No.1391 では、「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」のルールが示されています。
ポイントは次の2つです。
- 不動産所得の赤字は、原則として給与所得などと損益通算できる
- ただし、土地取得のための借入金利子など、一部の損失は通算できない(通算できない赤字は切り捨てになる)
たとえば、給与所得500万円、不動産所得がマイナス100万円なら、課税所得は「500万円-100万円=400万円」となり、その分だけ税金が軽くなります。
最近は「不動産投資で給与の税金を減らそう」といった情報も多く、損益通算の節税効果だけを強調した記事や動画も目立ちます。
しかし、国税庁は別荘など「生活に通常必要でない資産の赤字」については損益通算を認めないなど、節税目的の赤字に一定の歯止めをかけています。
「赤字=節税で得している」と短絡的に考えるのではなく、「どんな理由で赤字になっているのか」「それが将来の経営にとってプラスかマイナスか」を見極めることが重要です。
第3章 「いい赤字」と「悪い赤字」の違い
ここから、本題の「いい赤字・悪い赤字」の違いを整理します。
同じ赤字でも、内容によって評価は大きく変わります。
3-1 いい赤字(許容できる赤字)の例
いい赤字とは、次のような特徴を持つ赤字です。
- 減価償却や一時的な大規模修繕が原因で、将来の収益改善につながる投資をした結果の赤字
- キャッシュフロー(実際の現金)はプラス、またはほぼトントン
- エリアや物件の競争力が高く、中長期的に空室リスクが低い
具体例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 新築マンションで減価償却費が大きく、帳簿上は数年間赤字だが、実際には毎年手元に現金が残っている
- 将来の賃料維持・値上げを見据えて、設備更新・大規模修繕をまとめて行った年に一時的に赤字になった
このような赤字は、「税務上は赤字だが、経営としては前向きな投資」と評価できます。
もちろん、投資額が過大でないか、返済負担に無理がないかは別途チェックが必要ですが、赤字そのものを悪と決めつける必要はありません。
3-2 悪い赤字(早急に手当てすべき赤字)の例
一方、悪い赤字には次のような共通点があります。
- 空室、家賃設定ミス、過大なローン返済など、経営構造の問題で継続的にキャッシュフローがマイナス
- 3年以上連続で「税務上の赤字」かつ「手元の現金も減り続けている」
- 損益通算で税金が減っているものの、本業の給与や別の収入から持ち出しが続いている
具体的には、次のようなケースです。
- 周辺相場より家賃が高く、空室が埋まらずに家賃収入が不足している
- フルローン・オーバーローンで返済が重く、家賃収入よりローン返済の方が大きい
- 修繕計画がなく、突発的な修繕支出が多発して毎年の収支を圧迫している
こうした悪い赤字は、「損益通算で税金が戻ってくるから」では到底補えません。
むしろ、税金の軽減効果を理由に経営の根本的な問題から目をそらしていると、数年後にローン返済や大規模修繕に行き詰まり、「売りたくない時期に安値で手放す」結果になりかねません。
3-3 自分の赤字がどちらかを判断するチェックリスト
自分の赤字が「いい赤字」か「悪い赤字」かを判断するために、次のチェックをしてみてください。
- 直近3年のキャッシュフロー(収入-支出-ローン返済)はプラスか
- 空室率は、同エリア・同条件の物件と比べて明らかに高くないか
- ローン返済前の収支は黒字か(家賃収入-経費でプラスになっているか)
- 赤字の主な原因は、減価償却や一時的な修繕か、それとも空室・家賃・ローンか
このうち複数が「NO」の場合は、「悪い赤字」の可能性が高く、早めの見直しが必要です。
第4章 悪い赤字から抜け出すための優先順位
悪い赤字が疑われる場合、「何から手を付けるか」が重要です。
やみくもに節約したり、逆にリフォームにお金をかけたりする前に、次の優先順位でチェックしていきます。
4-1 空室と家賃設定の見直し(即効性のある対策)
- 募集条件・家賃設定が周辺相場とズレていないかを確認
- ネット掲載の写真・コメント・間取り図の見直し、ターゲットを明確化
- 管理会社・仲介会社との打ち合わせで、「この物件が埋まらない具体的な理由」を聞き出す
ここで家賃が多少下がっても、入居率が上がり、トータルの収入が改善するなら、結果として赤字脱却につながります。
4-2 ローン条件の見直し(中期的な改善)
- 金利や返済期間の見直しができないか、金融機関に相談する
- 必要に応じて借り換えや一部繰上返済も含めて検討する
ローン条件の改善は、毎月の返済負担を軽くし、キャッシュフローを安定させる効果があります。
4-3 管理・修繕の体制を整える
- 管理会社の手数料とサービス内容が適切か、他社と比較する
- 修繕計画を立て、突発的な支出を減らす(事前に優先順位を決めておく)
管理会社を変えるだけで、募集力・空室対策・修繕の提案が大きく変わる事例もあります。
4-4 それでも厳しい場合は「縮小・売却」も選択肢
- どうしても赤字が改善せず、長期的に見てもキャッシュフローがプラスに転じない場合
- 今後のエリア需要や物件の競争力を踏まえ、「持ち続ける」のが本当に合理的かを検討する
このタイミングで、「売るか続けるか」「縮小して堅い物件だけ残すか」といった出口戦略も視野に入れた判断が必要です。
第5章 国税庁ルールに沿って、安全に節税する
経営改善と並行して、税務面でも「やるべきこと/やってはいけないこと」を整理しておきます。
- 不動産所得の収入計上時期:契約に基づいて「いつの家賃をいつの収入とするか」を正しく処理する
- 必要経費として計上できるもの:管理費・修繕費・減価償却費・借入金利子などは、条件を満たせば経費にできる
- 国税庁が認めない損益通算:別荘など生活に通常必要でない資産や、一部の土地関連の利子などは通算できない
税務上のルールから外れた「過度な節税スキーム」は、のちに否認されるリスクがあります。
大切なのは、「正しく経費を計上しつつ、経営としては黒字を目指す」「赤字を前提とした投資計画は避ける」というバランス感覚です。
第6章 赤字が続くなら「一度、第三者に診てもらう」
賃貸経営の赤字は、数字だけでなく、物件の状態・エリアの将来性・オーナー自身の年齢や家族構成などが絡んできます。
自分だけで判断すると、「まだ何とかなる」「節税できているから大丈夫」と楽観視してしまいがちです。
赤字が続く場合は、
- 税理士による税務面のチェック(損益通算・経費計上の妥当性)
- 賃貸経営に詳しい専門家・管理会社による現地・収支の診断
を受け、「この赤字は許容できるのか」「どこを直せばいいのか」「持ち続けるべきか手放すべきか」を第三者の目で見てもらうのがおすすめです。
「いい赤字・悪い赤字」の線引きを明確にし、悪い赤字からは早めに抜け出すことが、賃貸経営を立て直す第一歩になります。