【賃貸経営】第2回 空室が続く築古マンションオーナーへ。「見た目」と「共用部」でできる外観・エントランスリニューアル術

「最低限のテコ入れ」の次は、“入口の格”を一段上げる

第1回では、照明・清掃・掲示物など、少額でできる「最低限のテコ入れ術」をお伝えしました。

第2回ではもう一歩踏み込んで、外壁・エントランス・共用部のリニューアルで“選ばれる築古”に変えていく考え方をまとめます。

ポイントは、

  • 単なる「塗り替え」や「模様替え」で終わらせない
  • 空室の改善や賃料アップまで見据え、投資と回収のバランスを考える
    ことです。

1. 外壁塗装の「ついで」にできる差別化

1-1. どうせ塗るなら「覚えてもらえる色」に

築古マンションで大規模修繕や外壁塗装を行うとき、**「今と同じ色で塗り直すだけ」**になってしまうケースが少なくありません。
クラック補修や防水性能の回復は重要ですが、空室対策として見れば「入居者から見た印象」を変えないのはモッタイナイ状態です。

外壁塗装のタイミングで、

  • ベース色を明るめにして、古さ・くすみを飛ばす
  • ワンポイントでアクセントカラーを入れ、周辺物件と差別化する
  • バルコニーや縦ラインだけ色を変え、スリムに見せる

といった工夫をすることで、「あの○○色のマンション」として記憶に残りやすくなります。

1-2. 色選びで失敗しないための考え方

奇抜な色にすればいい、という話ではありません。

  • 周辺物件と並べたときにどう見えるか
  • ターゲット(単身/ファミリー/高齢者)に合う雰囲気か
  • 汚れや経年変化が目立ちにくい色味か

を踏まえ、「長く使える“無難+少しの個性”」を目指すのが基本です。
例えば、

  • ベース:ややグレイッシュなホワイト〜ライトグレー
  • アクセント:ダークグレー・ネイビー・ブラウン系

にまとめると、築古でも落ち着いた都会的な印象に寄せやすくなります。

2. エントランスを“物件の顔”として作り直す

2-1. 第一印象を決める3要素

エントランスは、「ここに住むかどうか」の感覚的な判断が一瞬で下される場所です。
特に築古では、

  • 床:古いタイル・モルタルの汚れや欠け
  • 壁:ヒビ・汚れ・黄ばみ
  • 天井:低く暗い照明

が組み合わさって、「古い・暗い・怖い」という印象になりがちです。

エントランスリニューアルでは、次の3つを優先して整えます。

1.床材(タイル・長尺シートなど)で“きれいさ”を出す

2.壁材(塗装・パネル・タイル)で“古さ”を消す

3.照明とライン(目線)で“奥行き感・明るさ”を演出する

床と壁の素材・色を揃えるだけでも、築年数以上に「しっかりした物件」に見せることができます。

2-2. 館名板・インターホン・宅配ボックスの刷新

エントランスまわりで、古さを強く感じさせるのが、

  • 館名板(フォント・レイアウト・素材)
  • 集合インターホン(古い押しボタン式)
  • 郵便受け・宅配ボックスの有無

といった細かい設備です。

リニューアルの一例としては、

  • 館名板:シンプルなサインプレートや切り文字に更新し、字体とレイアウトを現代風に
  • インターホン:モニター付きオートロックや集合インターホンに更新(女性・単身者への安心感アップ)
  • 郵便受け:古いものを交換し、可能なら宅配ボックスも追加

こうした投資は、**賃料アップやターゲット変更(女性・単身者寄り)**とも相性が良く、空室対策としても効果的です。

3. 廊下・階段を「きれいに見せる」リニューアル

3-1. 長尺シートと手すりの塗装

共用廊下や階段は、

  • コンクリートのまま汚れが目立つ
  • ひび・欠け・補修跡がそのまま
  • 手すりの塗装がはげている

ことが多い箇所です。

ここで効果的なのが、

  • 廊下・階段の床に長尺シートを貼る
  • 手すりを落ち着いた色で塗り直す

という組み合わせです。

長尺シートは、

  • 見た目がスッキリする
  • 足音・雨の日の滑りも軽減できる
  • 掃除がしやすくなる

といったメリットがあり、「古いけれど清潔感のある共用部」を演出できます。

3-2. 防犯・安心感の演出

築古物件では、「古さ=安全性への不安」と結びつきやすい面もあります。

共用部リニューアルとセットで、

  • 防犯カメラの設置・追加
  • センサーライトの導入
  • エレベーターホールや階段踊り場の明るさ確保

などを行うと、特に単身女性や高齢者からの評価が変わります。
「きれいで明るく、安心して暮らせそう」と感じてもらえれば、同じ築年数でも選ばれやすさが一段変わります。

4. 「いくらかけて、どこまで回収するか」を考える

4-1. 外観・エントランスで狙える効果

外観・エントランス・共用部のリニューアルは、

  • 空室期間の短縮(稼働率アップ)
  • 一定の賃料アップ(または賃料維持)
  • 将来の売却時の評価アップ

という3つの効果が期待できます。

例えば、

  • 改修費:300万円
  • 空室が2部屋→1部屋に改善(1部屋分の空室解消)
  • 賃料:月8万円

とすると、

  • 賃料収入増:8万円 × 12ヶ月 = 年間96万円
  • 運営経費を差し引いたNOIを80%とすれば、手残りは約76.8万円

単純計算で4年弱で投資回収できるイメージになります(細かな条件によって変動しますが、考え方の目安として)。

4-2. 「何を組み合わせるか」の優先順位

すべてを一度にやる必要はありません。

  • まずは外壁塗装のタイミングで、色味とエントランス周りをセットで見直す
  • 次のタイミングで、廊下・階段・防犯設備を追加していく

といったように、大規模修繕の計画と組み合わせて段階的に進めれば、資金負担をコントロールしながら物件力を底上げできます。

5. 築古物件を“選ばれる物件”に変えていく視点

築古マンションだからといって、必ずしも家賃を大きく下げる必要はありません。
むしろ、

  • 「古いけれど、しっかり手入れされている」
  • 「外観や共用部はきれいで安心感がある」

という状態にできれば、周辺の築古物件との差別化ができ、結果として空室が埋まりやすくなります。

そのためには、

  • 投資額だけでなく、「どの層に、どんな家賃帯で貸したいか」というターゲット
  • 既存の大規模修繕計画・資金計画とのバランス

も含めて、全体のストーリーを組み立てることが重要です。

6. どこまでやるか迷ったときは

外壁・エントランス・廊下・防犯設備……と考えていくと、「やりたいこと」はいくらでも出てきます。
一方で、実際に“どこまでお金をかけるべきか”の判断は、築年数・立地・賃料帯・将来の出口(売却・建て替えなど)によって変わります。

  • どのくらいの投資で、どれくらいの賃料アップや稼働率改善を見込むのか
  • 大規模修繕と一緒にやるべき工事、分けてよい工事はどこか

といった部分は、個別の物件ごとに整理していく必要があります。

その意味で、「この物件にとって、どこまでやるのがちょうどいいのか」を第三者の目線で一度整理してみることが、築古物件の空室対策を成功させる近道になるはずです。