【賃貸経営】エントランスリノベーションの費用対効果と「どこまでやるか」の考え方

1. エントランスリノベは「いくらかけて何年で回収するか」が勝負

エントランスリノベは、感覚や見た目だけで決めると「お金はかかったが思ったほど効果が出ない」リスクがあります。
そこで大事になるのが、**投資回収期間(何年で元が取れるか)**という考え方です。

一般的には、

  • 投資回収期間(年)= リノベ費用 ÷ 年間収益増加額

で計算します。
年間収益増加額には、

  • 家賃アップ(1戸あたりの増額)
  • 空室期間が短くなることで減る「機会損失」

の両方を含めて考えるのがポイントです。

不動産向けリノベの解説では、

  • 3〜5年以内に回収 → 積極投資も検討できる
  • 5〜8年 → 物件の築年数・将来方針を見ながら慎重に判断
  • 8年以上 → 売却予定や建替え時期も視野に入れ、慎重に検討

といった目安が示されています。

2. 具体例で見る「費用と回収のイメージ」

2-1. エントランス+共用部の中規模リノベ事例

築30年以上の物件で、エントランスを含むリノベを行い、家賃アップと満室を達成した事例では、

  • 築38年の物件でエントランス改修
  • 家賃:1戸あたり月6,000円アップ
  • 満室化(以前は空室が出ていた)

といった成果が出たケースが紹介されています。​

単純化すると、

  • 家賃アップ分:6,000円 × 12ヶ月 = 年間72,000円/戸
  • 仮に10戸で同じ効果が出れば:年間72万円の増収

ここに、空室期間短縮の効果も加われば、数年スパンでの投資回収も現実的になります。

2-2. エントランスリノベ+稼働率改善の事例

エントランスを中心に外装リニューアルを行い、稼働率が5%改善したケースでは、

  • 20戸・家賃8万円のマンション
  • エントランスを含む改修費:300万円
  • 稼働率が5%改善(1戸分の空室が埋まるイメージ)

と仮定すると、

  • 年間賃料収入増:8万円 × 1戸 × 12ヶ月 = 96万円
  • NOI(手残り)を80%とすると:76.8万円/年
  • 投資回収期間:300万円 ÷ 76.8万円 ≒ 3.9年

→ 利回り約25.6%、約4年弱で回収という試算が出ています。​

こうした例からも、「空室がちの築古で、今後も10年以上賃貸を続ける物件」ほど、エントランスリノベの投資効果が出やすいと言えます。

3. どこまでやるかを決める3つの視点

3-1. 築年数と「あと何年持つか・持つつもりか」

同じ300万円の投資でも、

  • 築25年で、あと20年は賃貸を続ける想定の物件
  • 築40年で、10年以内に売却・建替えを検討している物件

では、意味合いが全く違います。

リノベの投資回収期間が、

  • 3〜5年:どちらでも検討余地あり
  • 5〜8年:築25〜30年台で「長く持つ」前提なら検討対象
  • 8年以上:築古で出口が近いなら慎重に

といった判断が妥当とされています。

3-2. 現在の空室状況と賃料水準

  • 空室が常に数戸出ている、家賃もエリア相場より低め
  • 内見はあるが、決まり切らない(現地で落とされている)
  • 室内の競争力はあるが、「建物全体の古さ」がネック

こうした物件は、エントランスリノベのような“共用部のグレードアップ”が効きやすいタイプです。

逆に、

  • ほぼ満室で、たまにしか空かない
  • エリア相場と比べても賃料が高すぎない
  • すでに外観・エントランスに一定の投資をしている

物件であれば、大きなリノベよりも、清掃や小規模改善で十分なケースもあります。

3-3. ターゲット層と「どこまで上を狙うか」

  • 今後も同じ賃料帯・同じターゲット(例:単身者・ファミリー)でいくのか
  • 多少の家賃アップを目指して、「狙う層」を半歩上げるのか

によって、やるべき内容も変わります。

例えば、

  • 現状:築古・単身者向け・やや安めの賃料帯
  • 目標:宅配ボックス・防犯面を整え、女性単身者にも選ばれる物件に

という方針なら、

  • エントランスの明るさ・見通し
  • ポスト・宅配ボックスの追加
  • サインや色味の整理

あたりに予算を振ることで、「今の賃料+α」を狙いにいく設計ができます。

4. 内容別のざっくり費用イメージと向き不向き

※金額はあくまでイメージ(規模・仕様で大きく変動)

  • 照明交換・塗装・サインの整理(小規模)
    • 目安:数十万円〜
    • 向く物件:空室は少ないが、暗さ・古さが気になってきた築古物件
    • 効果:印象アップ・安心感アップ・既存入居者の満足度向上
  • エントランス床・壁仕上げ+ポスト交換+照明(中規模)
    • 目安:100万〜300万円前後(規模次第)
    • 向く物件:空室が目立ち始めた築20〜35年、今後も10年以上保有予定
    • 効果:空室改善・賃料微増・退去抑制・出口価値アップ
  • 外壁塗装+エントランスフルリノベ(大規模修繕とセット)
    • 目安:数百万円〜(外壁全体はさらに大きい)
    • 向く物件:大規模修繕のタイミングで「見た目も一新」したい築25〜35年クラス
    • 効果:建物寿命延長+ブランド感の底上げ、売却時の印象・査定にもプラス

5. 大規模修繕・長期修繕計画との組み合わせ方

エントランスリノベは単体でもできますが、外壁改修や大規模修繕とセットで考えると効率が良くなることが多いです。

  • 足場を組むタイミングで、外壁・エントランス・共用部を一体でデザイン
  • 防水・外壁補修の「機能回復」と、「見た目アップ」を同時に達成
  • 資金調達も、「長期修繕計画に沿った改修」として金融機関に説明しやすい

こうした整理をしておくと、**“ただのリフォーム”ではなく、“賃貸経営の戦略的な投資”**として位置づけられます。

6. どこから相談・検討を始めるべきか

エントランスリノベの成否は、

  • 「どこまでやるか」の線引き
  • 「どんなターゲットに、どんな賃料帯で貸したいか」という戦略
  • 「大規模修繕・長期修繕計画」との整合性

で決まります。

数字だけで見ると判断が難しい部分も多いため、

  • 現地を一度見てもらい、
  • 空室状況・賃料・ターゲット・将来の出口(売却・保有)を整理したうえで、
  • 「この物件なら、エントランスにどこまで投資するのが妥当か」

を、第三者の目線で一度棚卸ししてもらうと、無駄な投資を避けつつ効果的なリノベ計画を立てやすくなります。