2023.10.18
外壁塗装の欠損部を放置するリスクは?補修費用と施工業者の選び方を解説
築10年以上の建物になると、外壁塗装の汚れや下地のひび割れ、タイルのゆるみやひび割れなど、経年劣化が目立ちます。
外壁塗装の欠損部を放置すると、建物の劣化が加速し、深刻なダメージを引き起こすリスクがあります。外壁が剥がれたり、ひび割れたりしたままにしておくと、雨水や湿気が建物内部に侵入し、コンクリートや鉄筋が腐食する原因となります。
なかでも、外壁塗装の欠損は、雨漏りや建物の耐久性に影響を及ぼすため危険です。
そこで、外壁塗装の欠損部修理の費用相場、補修・修繕を依頼する業者の選び方を解説します。
外壁塗装の欠損部とは?
外壁塗装はマンションや建物の美観を保つだけでなく、外的要因から建物を守る重要な役割を担っています。しかし、年月とともに外壁塗装は劣化し、欠損部が生じることがあります。欠損部が発生すると、外壁が湿気や水分、紫外線などの影響を受けやすくなり、建物の構造に悪影響を与える可能性もあります。そのため、外壁塗装の欠損部は早期に修繕することが重要です。
外壁塗装の欠損の原因
外壁塗装の欠損が発生する原因は様々です。
例えば、地震の揺れや物体の衝突など、物理的な衝撃によって外壁材に欠損が発生することがあります。
また、乾燥収縮や経年劣化により、外壁塗装の表面にひび割れが生じるケースも珍しくありません。
寒冷地では、外壁塗装のひび割れなどの隙間から水が入ると凍りますが、水が凍ると膨張して圧力がかかります。
凍結融解を繰り返すとひび割れが大きくなり、やがて欠損に発展するでしょう。
ほかにも、アルカリシリカ反応と呼ばれる状況が挙げられます。
アルカリシリカ反応とは、外壁材であるコンクリート内部で骨材から溶け出したシリカ(SiO2)と、コンクリート中に含まれるアルカリ金属との間で起こる化学反応のことです。
アルカリとシリカの反応によってシリカゲルと呼ばれる物質が生成されますが、シリカゲルは水を吸うと膨張する性質を持っています。
水を吸うと膨張し、外壁塗装の内部にひび割れが発生し、欠損につながることもあるでしょう。
また施工不良や物理的損傷が原因となる場合もあります。
外壁塗装の欠損は「爆裂」と異なる
外壁塗装の爆裂とは、鉄筋コンクリートのサビで膨張し、表面にあるコンクリートを押し出している状態です。
爆裂が発生した場合、構造物の耐久性に大きな影響を及ぼす可能性があるため非常に危険で、早急に補修する必要があります。
爆発の主な原因は、コンクリートの中性化です。
コンクリート内部は通常強アルカリ性で、鉄筋を保護し耐久性を高めています。
しかし、表面のひび割れから空気中の水分や炭酸ガスが侵入し、化学反応を起こして中性化することが特徴です。
炭酸化が進行して鉄筋に達すると、アルカリ性で保護されていた鉄筋が錆びて膨張します。
内側から圧力をかけた結果、コンクリートを押し出して破壊することを爆裂と呼び、外壁塗装の欠損とは原因が異なります。
外壁塗装の欠損放置のリスク
外壁塗装の欠損部を放置すると、さまざまなリスクが発生します。塗装は建物の外的要因からの保護層として重要な役割を果たしており、欠損部分が放置されることで、以下のリスクが生じます。
- 水分の浸入による劣化
塗装が欠けた部分から雨水や湿気が外壁に浸入すると、外壁自体や内部の構造部分が湿気を吸収し、腐食やカビ、シロアリの発生を引き起こすことがあります。これにより、建物全体の耐久性が低下し、修繕費用が増大する可能性があります。 - コンクリートや鉄筋の腐食
特にコンクリート外壁の場合、塗装が欠けて鉄筋が露出すると、鉄筋が錆びて膨張し、ひび割れを引き起こすことがあります。鉄筋が錆びると、コンクリートの強度が低下し、構造的な問題に繋がります。 - 断熱性の低下
外壁塗装には断熱性を高める役割もあります。欠損部分があると、外気が直接伝わりやすくなり、室内の温度調整が難しくなります。これによりエネルギー効率が悪化し、冷暖房費が増加する可能性もあります。 - 美観の損失
外壁塗装の欠損は建物の外観を損ないます。見た目が悪くなると、物件の価値が下がるだけでなく、住民や訪問者に対して不快感を与えることもあります。
欠損部分が小さいうちに早期に対処することが、これらのリスクを防ぐためには非常に重要です。
外壁塗装の欠損を補修する方法
外壁塗装の欠損部を放置せず、適切に補修することで、建物の美観と耐久性を保つことができます。欠損部の補修方法には、以下のような方法があります。
- 部分的な補修
欠損部が小さく、周囲に大きな損傷がない場合は、部分的な補修が効果的です。補修の流れは以下の通りです:- 下地の清掃と準備:欠損部の周囲を清掃し、汚れやほこりを取り除きます。また、ひび割れ部分を広げてから補修することもあります。
- 下塗り:補修部にはまず下塗りを施し、塗料の密着性を高めます。
- 上塗り:下塗りが乾燥した後、補修部に合わせた色の塗料を上塗りします。複数回塗り重ねて、しっかりと仕上げます。
- 全面塗り直し
欠損が広範囲にわたる場合や、塗装全体が劣化している場合は、外壁全体を再塗装する必要があります。全面塗り直しの流れは次の通りです:- 高圧洗浄:外壁全体を高圧洗浄し、汚れやカビを取り除きます。
- 下地処理:外壁のひび割れや欠損を補修し、下地を整えます。必要に応じて補修用のフィラー(充填材)を使用します。
- 塗装:下塗りを行った後、上塗りを数回に分けて行い、外壁の保護層を作ります。
- 特殊塗料の使用
欠損がひどく、通常の塗料で修復が難しい場合は、特殊塗料(防水塗料や耐候性塗料)を使用することが有効です。これにより、外壁を強力に保護し、長期間にわたり耐久性を高めることができます。 - オリジナルの色合わせ
部分的な補修の場合でも、元の塗装の色に合わせて色を調整することが大切です。色合わせがうまくいかないと、補修部が目立ち、見栄えが悪くなります。塗料メーカーや専門業者と相談し、元の色を忠実に再現することが重要です。
早期の対応と正しい補修方法を実施することで、外壁の欠損によるリスクを最小限に抑え、建物の耐久性と美観を守ることができます。
外壁塗装の欠損以外で見る劣化のサイン
外壁塗装の劣化は、建物全体の劣化を引き起こす原因となります。そのため、塗装の状態を定期的に確認し、早期に対処することが重要です。欠損以外にも劣化のサインが現れることがあり、これらの兆候を見逃さないようにしましょう。天気の良い日には、外壁の状態を確認する習慣を持つことをお勧めします。
汚れやカビ
外壁塗装には通常、汚れやカビ、コケに対する強い耐性があります。しかし、塗膜が5年以上経過すると、徐々にその機能が低下し、汚れやカビ、コケが付きやすくなります。これらの症状が見られた場合、塗膜の劣化が進行している可能性があるため、早期の点検と対応が必要です。
色あせや変色
塗料の劣化により、外壁の色があせることがあります。色あせは、塗料に含まれる樹脂が劣化することによって引き起こされ、防水性が失われると、カビやコケが発生しやすくなります。これらはアレルギーの原因にもなるため、注意が必要です。特に、日当たりの良い場所や北側の外壁に変色が見られる場合は、早期に対応することが望ましいです。
チョーキング現象
チョーキングとは、塗膜の表面に顔料が浮き出る現象で、樹脂の劣化によって発生します。この現象が見られた場合、塗装の耐久性が低下している証拠です。チョーキング現象が確認されたら、外壁塗装を検討するサインといえます。
剥がれ
塗膜が剥がれる現象は、塗料の密着力が低下したことを示しています。剥がれが一度発生すると、急速に外壁全体に広がる可能性があるため、早急に対応する必要があります。剥がれは外壁材だけでなく、建物全体の劣化を引き起こす原因にもなります。施工不良の可能性もあるため、塗装を行った業者に相談して対処することが有効です。
外壁の状態を定期的にチェックし、劣化が進行する前に適切な修繕を行うことが、建物の寿命を延ばし、安全な住環境を維持するために非常に重要です。
外壁塗装の欠損部の補修にかかる費用相場
外壁の欠損は、ひび割れ・剥がれ・浮き・穴あきなどの劣化症状が進行することで発生します。これらを放置すると、雨水が浸入し、建物の耐久性が低下する原因となるため、早めの補修が必要です。補修費用は、欠損の規模や補修方法、使用する材料によって異なります。
外壁塗装の補修方法別の費用相場
補修方法 | 特徴 | 費用相場(1㎡あたり) |
---|---|---|
ひび割れ補修(シーリング工法) | シーリング材を充填し、ひび割れを防水補修 | 2,000~5,000円 |
欠損部のモルタル補修 | 剥がれた部分をモルタルで埋めて仕上げ | 4,000~8,000円 |
樹脂注入補修(エポキシ樹脂工法) | ひび割れの内部にエポキシ樹脂を注入し、強度を回復 | 5,000~10,000円 |
爆裂補修(鉄筋露出部の処理) | コンクリートが剥がれ、鉄筋が露出した部分の補修 | 8,000~15,000円 |
外壁タイルの張替え補修 | 剥がれたタイルを新しいものと交換 | 10,000~20,000円 |
※施工業者や建物の状況によって、費用は変動します。
補修費用を抑えるポイント
- 早めの対応を心がける(軽微な段階で補修すれば、費用が抑えられる)
- 複数の業者から見積もりを取る(相場を確認し、適正価格で工事を依頼する)
- 外壁塗装と併せて補修を実施する(まとめて施工することで、足場費用を削減可能)
外壁の欠損は、放置すると修繕費用が高額になる可能性があるため、定期的な点検と適切な補修が重要です。
外壁塗装のメンテナンスは10年に1度程度は行おう
外壁は日々紫外線や雨風にさらされ、時間の経過とともに劣化していきます。劣化が進むと、ひび割れや塗膜の剥がれ、色あせなどが発生し、防水性能が低下するため、定期的なメンテナンスが必要です。一般的に、外壁塗装の耐用年数は10年程度とされており、建物の美観や耐久性を維持するためにも、10年ごとの塗り替えが推奨されます。
定期メンテナンスのメリット
- 建物の防水性を維持し、雨漏りを防ぐ
- ひび割れの拡大を防ぎ、建物の耐久性を向上
- 外壁の美観を保ち、資産価値を維持
- 早めの補修で、修繕コストを抑えることが可能
適切なメンテナンスのポイント
- 使用する塗料の耐久性に応じた塗り替え時期を把握する
- 定期的な点検を実施し、小さな劣化を早期に修繕する
- 複数の業者から見積もりを取り、適正価格で施工を依頼する
外壁塗装のメンテナンスを適切なタイミングで行うことで、建物の寿命を延ばし、長期的な維持コストを抑えることができます。大規模な修繕が必要になる前に、10年を目安に定期的な塗装メンテナンスを検討しましょう。
外壁塗装の欠損部補修を依頼する業者の選び方
外壁塗装の欠損部補修では、補修や修繕をした部分の上から塗料を塗るため、補修直後は見た目がきれいです。
そのため、手抜き工事に気づかず、数年後に問題が発覚するケースも少なくありません。
外壁塗装業者によって仕上がりの良し悪しが変わるため、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
ここでは、業者選びのポイントを紹介します。トラブルが起こらないよう、優良業者に依頼しましょう。
外壁塗装の欠損部の補修実績がある
ホームページに掲載されている、ビフォーアフターの施工写真やお客様の声などを確認しましょう。
基本的に業者はホームページを持っているため、インターネットで検索すれば公式ホームページが見つかります。
近隣への配慮をしている
クレームが発生した場合は、業者が謝罪し、今後の工事期間や時間帯を明確に近隣の方に説明してもらうことが重要です。
また、外壁塗装や長尺シート、防水シートの施工時には、想定以上に臭いが広範囲に広がります。
特に人口密集地では、3軒先まで挨拶するとよいでしょう。
施工時の臭いを完全に防ぐことは難しいですが、塗料を選ぶ際に臭いが強くないタイプや、よい香りがする塗料を選ぶと対策ができます。
なお、クレームが発生した際は、依頼主も謝罪に同行した方が印象はよいでしょう。
アフターフォロー体制が万全
外壁塗装の欠損部の修繕・補修を依頼するときは、定期点検を含めたアフターフォローが万全な業者に依頼しましょう。
建物の不具合を早期に発見できれば、補修費の削減や建物の長寿命化にもつながります。
また、契約時には必ず保証範囲を確認し、保証書を発行してもらうことも大切です。
保証の対象となるもの(症状、部位、免責事項)、保証期間、無料か有料かなどを確認しましょう。
保証内容は、書面にしておくとトラブルを避けられます。
多くの場合、自社保証は3~5年、長くても10年程度です。
15年保証や20年保証など、長すぎる保証期間を提示している業者は、詐欺業者であり工事自体が行われない可能性もあります。
建設業許可を取得している業者
建設業許可を取得するためには、経営状況や専任技術者の雇用などの要件をクリアする必要があります。
簡単に許可されるものではないため、取得している場合は信頼できる外壁塗装業者だといえるでしょう。
建設業許可の有無は、国土交通省のホームページで確認できます。
外壁塗装の流れ
外壁塗装工事は以下のような流れで行われます。ここでは簡潔に塗装工事完了までのステップを紹介します。
塗装工事契約後には近隣の方への工事の挨拶などを行なったりして配慮を行なってくるのも一般的です。
現場のチェックと足場の設置
外壁塗装を始める前に、専門家が現場をしっかりと確認し、安全な足場を設置します。この準備が整うことで、作業がスムーズかつ安全に進められ、高い品質の塗装が可能になります。
清掃・高圧洗浄
塗装前の外壁は、高圧洗浄できれいに洗い流します。これにより塗料の密着が良くなり、仕上がりの美しさが長持ちします。清潔な外壁は、塗装の効果を最大限に引き出します。
下地処理
外壁の細かいひび割れや剥がれを修正し、防水性を高める下地処理を行います。これにより、建物を長期にわたって保護し、見た目も美しく保つことができます。
養生
塗装作業中に塗料が飛散しないように、窓やドア、庭の植物などを保護する養生を行います。この注意深い対策が、作業の品質を保ち、クリーンな環境を維持します。
塗装開始・下塗り
下塗りは塗装の基礎です。この層が外壁をしっかりと保護し、上塗りのための下準備を整えます。一貫した品質の下塗りが、塗装全体の耐久性を支えます。
中塗り&上塗り
中塗りと上塗りで、外壁を美しく仕上げます。これらの塗料層が、建物を外部の影響から守り、色の鮮やかさを長く保ちます。適切な技術が光る仕上がりを約束します。
塗装完了後のチェック・検査
全ての塗装が終わった後は、細かい検査を行います。このチェックで、塗装が基準に合っているかを確認し、完璧な状態でお客様にお渡しします。
足場の撤去後、工事完了
塗装がすべて終了したら、足場を撤去します。これで、新しく塗り直された建物が完成し、美しい新しい外観をお楽しみいただけます。
外壁塗装の欠損が見られる際は点検を依頼しよう
外壁塗装の欠損や劣化症状は、放置すると建物自体の劣化を招きます。
また、小さな不具合でも時間が経つと大きくなることがあるため、経過を見守ることが大切です。
適切なメンテナンスを行うことでリスクを回避し、建物の価値を維持することにもつながります。
手抜き工事やクレームの発生などのトラブルを防ぐためにも、点検や補修は優良業者に依頼することが重要です。
外壁塗装の欠損がある、そのほか劣化症状が気になる場合は、見積もりや現地調査、点検を依頼しましょう。
大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)