マンション大規模修繕の工事別費用相場|費用を抑える方法や払えないときの対処法 | 株式会社新東亜工業  

    コラム    

マンション大規模修繕の工事別費用相場|費用を抑える方法や払えないときの対処法

建物は経年劣化するため、放置しておくと大きなトラブルに発展することもあります。

特に管理組合は、多くの居住者の安全を確保する義務があるため、適した時期に大規模修繕工事を実施しなければなりません。

しかし、マンション大規模修繕を行ったことがないと、「工事にはどれくらいの費用がかかるのか」と疑問や不安を抱く方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、マンション大規模修繕の費用や具体的な内容、費用を抑える方法について詳しく解説します。

マンションの大規模修繕とは

大規模修繕とは、経年劣化したマンションの設備や外装を定期的に工事することです。

工事内容のなかでも、建物そのもの(躯体)を維持するための大規模修繕で、定期的に実施することが難しいものや、共用部分の改修などを指します。

実施年数はマンションによって異なりますが、一般的には12~16年に1度が目安です。

マンションの大規模修繕工事の必要性

大規模修繕が必要な理由として、建物や設備の経年劣化が挙げられます。

新築マンションでも、年月が経てば徐々に様々な部分が汚れたり傷んだりすることは避けられません。

例えば、外壁や屋根は紫外線や風雨にさらされ、乾燥によるひび割れやタイルの剥がれなどが起こります。

大規模修繕の主な目的は、マンションの劣化した部分を定期的にメンテナンスすることにあります。

さらに、マンションの資産価値を保つためにも大規模修繕が必要です。

大規模修繕を行わずにマンションの経年劣化を放置しておくと、雨漏りや設備の故障などで日常生活に支障をきたすほか、外観やイメージが悪化します。

不具合や故障だけではなく、付属設備の仕様が古くなり、生活が不便になることもあるでしょう。

住民にとっての快適性が損なわれると、マンションの価値が下がり、将来売却や賃貸に出す際に、家賃や価格を下げざるを得なくなります。

資産価値を下げないためにも、大規模修繕は非常に重要です。

マンションの大規模修繕工事全体の費用相場

大規模修繕にかかる費用は、マンションの大きさ、構造で異なります。

一般的な目安として、国土交通省が発表している大規模修繕の費用相場を紹介します。

一戸あたりの費用は約100万円

大規模修繕は、1戸あたり75万~125万円です。

国土交通省が2021年に実施した「マンション大規模修繕工事実態調査」によると、半数以上のマンションで1戸あたり75万円以上の費用が発生していることがわかりました。

50~75万円負担の割合全体の13.8%
75~100万円負担の割合全体の30.6%
100~125万円負担の割合全体の24.7%

マンションの大規模修繕全体にかかる費用目安は、約7,600万円~8,700万円です。

なお、金額には共通仮設費用は含まれていません。

マンションの規模別にかかる費用相場

マンションの規模に応じた、大規模修繕工事の平均費用を紹介します。

「小規模マンション」と「大規模マンション」の価格帯を紹介するため、マンションの規模に応じて工事価格を確認してみてください。

小規模マンションの場合

小規模マンションとは、50戸以下の場合を指します。

小規模マンションの大規模修繕工事にかかる平均費用は約3,240万円~4,000万円です。

入居者が少ないものの、費用は高額になります。

大規模マンションの場合

100戸以上の場合は、大規模マンションに該当します。

大規模マンションの場合、大規模修繕工事の平均費用は約1億6,200万円~2億円です。

つまり、工事費が1億円を超えることが多いでしょう。

そのため、大規模修繕工事には十分な資金を確保しておく必要があります。

修繕積立金の平均金額

国土交通省の「マンション総合調査(2018年)」によると、駐車場使用料等からの充当額を除く修繕積立金の平均は、1戸あたり12,268円でした。

大規模修繕工事の場合、「工事の時期、内容、費用」は長期修繕計画によってある程度決定されます。

修繕積立金は、着工までに工事費が確保できるように逆算して決めることが一般的です。

コンサルティングの費用相場

マンションの大規模修繕では、建物の調査、診断、設計、施工業者の選定協力、工事監理などを外部の設計コンサルタントに委託するケースがあります。

第三者に依頼する場合、別途コンサルタント料を支払わなければなりません。

コンサルタント報酬は、コンサルタントの人数や期間に応じて累計で計算されることが「国土交通省告示第98号」に定められています。

コンサルティング会社によっても異なり、委託業務の内容や工期によって関与する期間も異なることがポイントです。

具体的な金額は一概にはいえませんが、数十戸のマンションで数百万円、数億円というケースもあります。

大規模マンションでは、1,000万円以上かかることもあるでしょう。

【工事内容別】マンション大規模修繕工事の費用相場

大規模修繕の際には、工事ごとにどの程度の費用がかかるのか、内訳を把握しておくことが大切です。

ここでは、工事内容ごとの費用相場を紹介します。

劣化診断の費用

大規模修繕には多額の費用がかかるため、無駄な費用をかけないことが重要です。

本当に修繕が必要な箇所を見極めるためにも、大規模マンションは専門家による劣化診断(建物診断)を受けましょう。

施工業者やマンション管理士が行う無料劣化診断もありますが、無料診断は主に目視と打診のみです。

試験機を用いてコンクリートの耐久性を診断するためには、有償で劣化診断を行う必要があります。

劣化診断の費用目安は次のとおりです。

戸数費用相場
約30戸約15万~40万円
約50戸約30万~50万円
約100戸約30万~80万円
約200戸約5万円~100万円

劣化診断を受けることで、無駄なく修繕工事を行うことができ、より良い状態を長く維持できるでしょう。

工事の諸費用

大規模修繕工事には、外壁工事、防水工事、給排水工事などの修繕工事以外にも、複数の費用がかかります。

足場の設置、現場事務所を仮設する費用、産業廃棄物処理、安全対策にかかる費用などです。

例えば、1,000万円~3,000万円程度の大規模修繕の場合、諸費用の金額は次のとおりです。

工事内容費用相場
足場設置約300万円~400万円
現場事務所の仮設工事約10万円~20万円
産業廃棄物処理約10~70万円
安全対策費約20~50万円

現場事務所とは、長期間にわたる大規模修繕工事を円滑に進めるために設置します。

マンションのエントランスの一角に間仕切りを設けたり、会議室を利用したりすることが多いです。

安全対策費は、工事期間中の安全を確保するために配置する警備員の人件費や、工事関係者以外の人が工事現場に入らないようにする柵などを指します。

仮設工事

仮設工事とは、工事をスムーズに行うための設備や施設の設置工事のことで、足場工事が大半を占めます。

仮設工事費の平均は、中小規模マンションで600万円~800万円、大規模マンションで3,000万円~5,000万円が相場です。

足場工事の平均的な費用は1平方メートル当たり700~1,500円ですが、足場の種類によって価格帯は異なります。

特に、高層マンションの工事で使用するゴンドラや可動昇降式足場は高額です。

防水工事

屋上防水工事の平均的な費用は、アスファルト防水工法で1㎡あたり約5,000~8,000円、シート防水工法で約3,000~6,500円です。

アスファルト防水工法は水漏れが少なく耐久性・信頼性が高いですが、重量があるため鉄筋コンクリート造のマンションの屋上に使用されます。

屋上を防水せずに放置しておくと、雨漏りや漏水が発生し、マンションの鉄筋を腐食させ、建物の耐久性を低下させる危険性があります。

適切な時期に、屋上防水工事を行いましょう。

一般的な防水工事のメンテナンス期間は10~15年程度なため、多くのマンションでは最初の大規模修繕として行われます。

外壁工事

外壁に関する修繕工事は多くのマンションで実施されており、大規模修繕のメインとなる工事です。

外壁関連工事の平米単価は、塗装工事が約3,000~7,000円、鉄部の防錆工事で約1,000~3,000円、修繕工事が約1,500~6,500円です。

マンションは戸建てとは異なり、形や高さ、窓の数や玄関の大きさなどが様々で、単純な計算式で平米数を決めることはできません。

単純な長方形のマンションであれば比較的簡単に面積を割り出すことができますが、複雑な形状のマンションでは業者による入念な採寸が必要となります。

給排水管工事

設備工事としては、給排水設備が挙げられます。

工事費用は、1棟あたり約70万~200万円です。

 配管の太さやマンションの規模によって大きく異なることから、概算を知るには調査を行わなければなりません。

給排水管の耐用年数は約20年と長いものの、大規模な工事となるため、大規模修繕工事と合わせて交換することをおすすめします。

建物の老朽化に伴い、給排水管も経年劣化し、放置しておくと水道水の変色や水量の減少などのトラブルにつながるため、給水管の状況に応じた工事を行わなければなりません。

また、工事中は、水道が使えません。

トラブルを避けるため、工事日程が決まったら早い段階で入居者に通知をしましょう。

共用部補修工事

エントランス、会議室、屋内廊下などの共用部分は、建物の老朽化に伴い、設備の老朽化や機能の低下により修繕が必要です。

例えば、オートロック機能を新たに追加する、手動ドアから自動ドアに交換する、照明をLEDに変えるなどがあります。

共用部の改修工事の平均費用は、次のとおりです。

工事内容費用相場
エントランスのオートロック設置約50万~130万円
エントランスの自動ドア設置約70万~180万円
階段の手すり設置約20万~50万円
LED照明への交換費用1箇所あたり約3,000~6,000円

共用部は毎日多くの人が利用する場所なため、居住者の年齢や時代のニーズに合わせて柔軟に改修しましょう。

2回目以降の大規模修繕の費用

実際には、1回目の大規模修繕に比べ、2回目の大規模修繕は2割程度高くなる傾向があります。

1回目の大規模修繕の平均費用が75万円~100万円/戸とすると、2回目は90万円~120万円/戸程度です。

また、一般的には2回目よりも 3回目はさらに高くなる傾向があるといえます。

ただし、大規模修繕を実施するサイクルは、約12年~16年です。

3回目の修繕を実施する頃には、マンションが建てられてから36年~48年が経過しています。

築年数が経過しているマンションであれば、建て替えを検討し始めても良いのではないでしょうか。

「建て替えるのだから、修繕費はあまりかけたくない」と考えているのであれば、大規模修繕費用は2回目よりも安い可能性があります。

また、過去40~50年のメンテナンス状況によって、必要な工事の内容は異なります。

そのため、3回目の費用目安を設けることは難しく、一概にはいえません。

マンション大規模修繕費用を抑える方法

マンションの大規模修繕費用は、工夫次第で抑えることが可能です。

修繕費用が不足するといった事態自体を避けるためにも、修繕費用を抑える方法をチェックしておきましょう。

業者に一任しない

一棟マンションの修繕は、管理会社、設計会社、施工業者等の主導で行われることがあります。

依頼すること自体は問題ないですが、すべて任せきりにするとコスト意識が希薄になりがちです。

また、業者任せにするのではなく、オーナーが内容をチェックすることも重要です。

工事箇所の確認

大規模修繕の対象となる箇所は、以下のように複数箇所あります。

  • 屋根
  • 外壁
  • 階段・廊下
  • 給湯器
  • エアコン
  • 給排水管

修繕箇所は、必ずしも長期修繕計画に基づいて修繕する必要はありません。

状態を確認し、修繕の必要がないと判断することで、大規模修繕の費用を抑えることができます。

ただし、必要な修繕は遅滞なく行うことが重要です。

建物診断を実施

大規模修繕工事を行う際には、建物の点検を行い、状態を確認する必要があります。

工事の効果を効率よく上げるためには、建物の状態を正確に把握することが何よりも大切です。

適切な内容を工事や見積もりに反映させるためにも、マンションの状態を診断し、補修が必要な箇所を考えるようにしましょう。

信頼できる業者に依頼

初めて大規模修繕を行う場合は、見積書を見ても専門用語が多く、すべてを理解するのは難しいかもしれません。

分からない点をアドバイスしてくれるような、信頼できる施工業者にお願いすることが大切です。

大規模修繕は、準備段階から施工まで2年以上かかる大掛かりな工事です。

2年以上かかる大工事のため、工事の詳細設計や見積もりなどの段階で何度も打ち合わせをする必要があります。

信頼できない施工業者に依頼をすると、後々トラブルに発展することもあるため、必ず信頼できる会社に依頼しましょう。

相見積もりを取る

適正価格を得るために最も重要なことは、相見積もりです。

最低でも3社から見積もりを取ることで、適正価格を確認できます。

修理内容の内訳、価格の比較などを行うことで、大まかな相場を知ることが可能です。

同じような会社に依頼しても、同じような見積もりになってしまうため、できるだけバラつきのないように、様々なタイプの会社に見積もりを依頼しましょう。

見積もりを取り、適正価格を把握したら、検討段階に移ります。

中間マージンをなくす

大規模修繕工事の費用を抑えるためには、中間マージンを可能な限り少なくすることが重要です。

中間マージンとは、施工業者が下請け業者に依頼をする場合に支払う仲介手数料を指します。

余計な中間マージンを払わないためには、下請け業者を利用していない施工業者を選びましょう。

工事内容を再検討

大規模修繕工事の内容を再検討することで、コストを抑えることができます。

再検討すべき工事内容は、主に足場の設置方法です。

外壁塗装の場合、足場を組まないブランコ工法があります。

塗装する場所にもよりますが、足場の設置費用が抑えられるため工事費は安くなります。

ただし、建物の構造によっては工法を変更ができないことから、検討する際は施工業者と相談することが大切です。

定期的なメンテナンス

定期的な建物のメンテナンスは、劣化を遅らせ、損傷を防ぐことにつながります。

劣化や破損が少なければ、大規模修繕時の手間も省けるでしょう。

一方、定期的なメンテナンスを受けていないマンションの場合、大規模修繕の際に工事すべき場所が増える可能性が高いです。

工事量が増え、工期が長くなれば、当然修繕費も高くなります。

そのため、定期的なメンテナンスを心がけましょう。

大規模修繕工事費用が不足した際の対処法

大規模修繕工事の内容が増える、資金計画が適切ではないなどの理由で、費用が不足することがあります。

万が一工事費用が不足した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

ここでは、費用の補填方法を紹介します。

一時金を徴収

修繕積立金の不足分を 「一時金」 として徴収する方法ですが、総会決議が必要です。

金額によっては各区分所有者の負担が大きくなるため、多数決で否決される可能性があります。

一括徴収のメリットは、利息がかからず、不足分をすぐに補填できることです。

不足分の借り入れ

修繕積立金の不足額を金融機関から借り入れる方法もあります。

総会決議が必要ですが、一時金で回収するよりも決議しやすく、現実的な方法といえるでしょう。

ただし、お金を借りるため、当然利息がかかります。

返済のために、修繕積立金の増額が必要になることも理解しておきましょう。

積立金の値上げ

毎月の修繕積立金を増やす方法で、不足分をカバーできます。

総会決議を行いますが、一時金徴収と同様、反対運動が起きやすいでしょう。

また、不足額の補填には時間がかかるため、工事が差し迫っていないマンションに限られます。

工事の周期を調整

大規模修繕自体を延期する方法もあります。

しかし、修繕積立金が足りないからといって大規模修繕を先延ばしにすることは、決して良いことではありません。

マンションの状況にもよりますが、工事を先延ばしにすると劣化が進み、工事費がさらにかさむ可能性が高くなります。

そのため、大規模修繕の延期を選択せざるを得ない事態を極力避けることが重要です。

十分な積立金を確保し、マンションが古くならない時期から計画的に適切な修繕を行うようにしましょう。

マンション大規模修繕費用を抑えるなら優良業者に依頼しよう

マンションを良好な状態に保つためには、大規模修繕工事を約12年ごとに定期的に実施する必要があります。

修繕に着手するには、計画や業者選定を含めて2年以上かかるため、長期的な視点も大切です。

定期点検や小修繕と違い、1戸あたり約100万円と非常に高額になるため、信頼できる業者との連携が欠かせません。

費用を抑えたいのであれば、工事内容を丁寧に説明し、アドバイスをしてくれる優良業者を選びましょう。

関連記事
LINE TEL MAIL