2024.02.27
防水トップコートの塗り替えガイド|時期・費用・注意点を詳しく解説
防水工事の中でも、つい見落とされがちな「トップコート」。しかし、このトップコートの塗り替えを怠ると、防水層そのものの劣化を早めてしまう可能性があります。
本記事では、トップコートの役割から塗り替えのタイミング、費用相場、施工方法までを徹底解説。さらに、DIYとの違いや、信頼できる業者選びのポイントまで網羅しています。防水機能を長持ちさせたい方は、ぜひ参考にしてください。
防水トップコートとは?役割と重要性
防水トップコートとは、防水層の上に塗布される最終仕上げ材のことを指します。主な役割は、紫外線や雨風、摩擦といった外部の刺激から防水層を守ることにあります。
防水層自体がしっかりと施工されていても、トップコートが劣化していると、そこから水が浸入し、建物にダメージを与える原因となります。
特にウレタン防水やFRP防水では、トップコートの存在が防水性能の維持に直結します。定期的な塗り替えを行うことで、防水層の寿命を大きく延ばすことができます。
トップコートの塗り替え時期と劣化サイン
トップコートは永久に機能を維持するものではなく、年数とともに徐々に劣化していきます。以下のポイントを参考に、適切な塗り替え時期を見極めましょう。
一般的な塗り替え目安(5年〜7年)
トップコートの耐用年数はおおむね5〜7年程度とされています。新築や大規模防水工事から5年以上経過している場合は、一度点検を行うことをおすすめします。
劣化サインのチェックポイント
トップコートの劣化は、外観の変化や表面状態から比較的簡単に見分けることができます。以下のような症状が見られたら、早めの点検・塗り替えを検討しましょう。
- 色あせや変色:施工当初よりも色が薄くなっている、またはツヤがなくなっている場合、紫外線や風雨の影響で劣化が進んでいる可能性があります。
- チョーキング(白い粉が出る):手で触れると白い粉が付く現象。塗膜の樹脂が分解されているサインで、塗膜保護機能が低下しています。
- ひび割れ(クラック):トップコートの表面に細かい亀裂が見られると、そこから水分が浸透してしまう恐れがあります。
- 水たまりができやすくなった:トップコートの摩耗により表面が平滑でなくなり、水の排水性が悪化していることがあります。
- 剥がれや浮き:塗膜が部分的に剥離していたり、気泡のように浮いている箇所があると、下層の防水層も劣化している可能性があります。
これらのサインを放置すると、防水層自体へのダメージにつながるため、定期的な目視点検が効果的です。
劣化を放置すると起こるトラブル
トップコートの劣化を放置してしまうと、見た目以上に深刻な問題へ発展することがあります。以下のようなリスクが実際に報告されています。
- 防水層の早期劣化:トップコートは紫外線・雨・摩擦などから防水層を守るバリアの役割を果たしています。その保護層が機能しないと、防水層が直にダメージを受け、耐久性が大きく低下します。
- 雨漏り・漏水の発生:防水層に亀裂が入ると、屋上やベランダから室内への雨水浸入が発生する恐れがあります。特に集合住宅では階下の部屋に被害が及ぶことも。
- 構造体の腐食・カビの発生:雨水の侵入により、コンクリートや木材など構造体が腐食し、建物全体の耐久性や安全性に影響を与えることがあります。湿気がこもることでカビの発生・健康被害にもつながります。
- 補修費用の増加:トップコートのみの塗り替えで済んでいたはずが、防水層の全面改修が必要になった場合、数十万円から数百万円の追加費用が発生することも珍しくありません。
定期的なトップコートの塗り替えは、これらのトラブルを未然に防ぎ、建物の資産価値を維持するためにも不可欠です。
屋上の防水トップコートの塗り替えが特に重要な理由
屋上は建物の中でも特に風雨や紫外線の影響を強く受けるため、防水層の劣化が早く進行しやすい場所です。こうした環境下では、防水層を保護するトップコートの役割がより重要になります。
トップコートが劣化すると、防水層が直接ダメージを受け、雨漏りや漏水の原因となることも。屋上は建物全体の雨水処理の起点となるため、わずかな劣化でも建物全体に悪影響を及ぼすリスクがあります。特に平坦な屋上構造では水がたまりやすく、トップコートの摩耗や浮きが起こりやすいため、5年を目安に定期的な点検と再塗装が推奨されます。
トップコートの種類|防水工事の種類別に紹介!
どの防水工事をするかによって、トップコートの種類が異なります。ここでは、防水工事ごとのトップコートの種類を紹介します。
トップコートの種類|ウレタン防水の場合
ウレタン防水のトップコートの場合、
- アクリルウレタン系
- フッ素系
のトップコートがあります。
アクリルウレタン系は、一般的に広く使われているトップコートです。
フッ素系はアクリルウレタン系よりも耐久性がありが高価なため、一般的ではありません。
トップコートの種類|FRP防水の場合
FRP防水のトップコートでは、
- ポリエステル系
- アクリルウレタン系
のトップコートを使用します。
ポリエステル系は、主に新築住宅に使用されるトップコートです。
FRP防水層の性能を生かしたトップコートですが、乾燥すると硬くなり、ひび割れしやすい点がデメリットです。
また、重ね塗りには向かないため、基本的に塗り替えでは選ばれません。
アクリルウレタン系は、FRP防水の改修工事で使用されることが多いトップコートです。
ポリエステルのトップコートに比べると硬度が不足し、FRP防水の耐摩耗性を活かせませんが、塗り替えには適しています。
トップコートの種類|シート防水
シート防水とは、合成ゴムや塩ビ(塩化ビニル樹脂と呼ばれるプラスチックの一種)をシート状に加工し、接着剤で下地に固定する防水工法です。
シート防水のトップコートでは合成ゴムに影響が出ないよう、水性タイプのトップコートを施工します。
ウールローラーや水性刷毛で2回塗装を行い、1回目と2回目は、3時間以上空けなければなりません。
1回目に塗ったトップコートが十分に乾燥してから、2回目を塗装します。
トップコート塗り替えの手順|防水工事の施工場所別に紹介
トップコートを塗り替える際、どのような手順で施工されるのでしょうか。
ここでは、ベランダと屋上それぞれの施工手順を紹介します。
トップコート塗り替えの手順|ベランダ防水の場合
最初に、ベランダ防水施工手順を紹介します。
研磨
まずは、塗装が剥がれた箇所を磨きます。
電動サンダーや耐水ペーパーで丁寧に研磨をします。
シンナー拭き
アセトンと呼ばれる溶剤を使用し、研磨時に出るホコリや油分を拭き取ります。
研磨粉が残っていると、次の工程でプライマーが密着しないため、丁寧に拭くことが大切です。
プライマー塗布
プライマーとは、最初に塗る塗料です。
防水層とトップコートを十分に接着させるための接着剤の役割を果たします。
トップコート塗布
防水層を保護するためにトップコートを塗ります。
トップコート塗り替えの手順|屋上の場合
次に、屋上に施工する場合の手順を紹介します。
高圧洗浄
チョーキングや汚れを高圧洗浄で除去します。
なお、手作業で行う場合もあります。
プライマー塗布
再塗装用のプライマーを塗布します。
プライマー塗布は、トップコートの密着性を高めるために需要なポイントです。
トップコート塗布
トップコートで仕上げます。
なお、トップコートのみに劣化症状が現れている場合はトップコートの再塗装で対応できますが、下の層まで劣化症状が進行している場合はトップコートの再塗装だけでは対応できません。
防水層に、ひび割れ、亀裂、浮きなどがある場合、防水層を新しいものに交換するか、下地から交換することになります。
トップコート塗り替えの費用相場
防水トップコートの塗り替え費用は、施工する面積や使用する塗料の種類、そして現場の立地条件や劣化状況によって大きく異なります。工事範囲や仕様によって価格が変動するため、相場を知っておくことは予算計画において重要です。以下に、代表的な施工面積ごとの目安をご紹介します。
範囲 | 費用相場(税別) |
---|---|
ベランダ(10㎡) | 約3万〜6万円 |
屋上(30㎡〜) | 約10万〜20万円 |
戸建住宅全体 | 約15万〜30万円 |
このように、施工面積が広くなるほど費用も上がりますが、1㎡あたりの単価は面積が増えることで割安になるケースもあります。費用に影響を与える主な要素には、以下のようなものがあります。
- 遮熱性や防滑性などの機能性トップコートを選ぶ場合
- 下地の状態や既存防水層の劣化具合による下処理の必要性
- 足場の設置や養生の範囲
また、トップコートのみの塗り替えと、防水層の全面改修を伴う場合では費用構成が大きく異なります。そのため、単なる表面補修では済まない場合は、防水業者と相談して工法や施工範囲を再検討することが重要です。
防水トップコートの塗り替え費用は定型ではなく、条件によって大きく前後します。複数の施工業者に見積もりを依頼し、工事内容や使用塗料、保証内容などをしっかり比較検討することで、納得のいく工事が実現しやすくなります。
トップコート塗り替えはDIYでも可能?
「防水トップコートを自分で塗り替えたい」と考える方は年々増えています。特に、ベランダや小規模なバルコニーなどであれば、材料も少なく済むため、費用面からDIYを検討する人も多いのが現状です。
最近では、ホームセンターやインターネット通販などで、トップコート塗料やローラー、養生テープなどの道具が手軽に手に入るようになり、DIYのハードルは以前に比べて格段に下がっています。とはいえ、防水性能を確保するためには注意すべきポイントもあります。
DIYのメリットと注意点
DIYの一番の利点は、やはりコストを抑えられる点です。職人の人件費が不要な分、材料費のみで済むことが多く、簡単な補修程度であれば1万円以内で収まるケースもあります。自分のペースで作業できる点も魅力のひとつでしょう。
しかしその一方で、DIYには以下のようなリスクが伴います。
- 下地処理の不備:トップコートは下地との密着が重要であり、表面の汚れや旧塗膜をしっかり除去しないとすぐに剥がれてしまうことがあります。
- 塗布のムラ・塗り残し:均一な厚みで塗ることが難しく、防水性能が発揮されないことも。
- 乾燥不良:気温や湿度によって乾燥に時間がかかり、想定よりも施工期間が延びることもあります。
- 高所作業の危険性:屋上などでの作業は落下のリスクがあり、十分な安全対策が不可欠です。
このように、DIYでのトップコート塗り替えは、経験や道具の有無、施工場所の安全性を十分に確認したうえで判断する必要があります。
プロに依頼すべきケースとは?
以下のような状況では、DIYではなく専門業者に塗り替えを依頼するのが最善です。
- 屋上や大型のバルコニーなど、施工面積が広い場合
- 防水層に膨れ・剥がれ・ひび割れなどが見られる場合
- 遮熱・防滑・高耐候など、特殊なトップコート材を使用する場合
- 過去に施工トラブルがあり、再施工が必要な場合
専門業者に依頼することで、下地処理から塗装、乾燥・仕上げまで一貫した品質管理がなされ、保証も付帯することがほとんどです。結果として、長期的な安心を得られるだけでなく、後々のメンテナンスコストの削減にもつながります。
防水トップコート塗り替えを依頼する業者の選び方
防水トップコートの塗り替え工事は、見た目の仕上がりだけでなく、将来の耐久性に直結するため、施工業者選びは極めて重要です。価格だけに目を奪われず、次のようなポイントに注目しましょう。
- 防水施工技能士など、専門資格の有無
- 事前調査や診断を丁寧に行ってくれるか
- 保証書を発行してくれるか(5年・10年など)
- 施工後の定期点検やアフターサービスの内容
- 過去の施工実績が確認できる(写真・口コミ・事例)
- 見積もり書に詳細な内訳が記載されているか
また、施工会社が地元密着型であれば、急な相談や小さな補修依頼にも柔軟に対応してくれることが多く、長期的な付き合いも視野に入れて選定するのが理想です。
防水工事での助成金や補助金について【屋根防水や屋上防水】
大規模修繕に関わらず屋根防水、屋上防水などは場合によって多くの資金が必要になります。
そんな時に活用できるのが助成金や補助金です。各地方自治体では修繕工事や外壁塗装などにおいて補助金などを用意している場合があります。
防水工事の場合リフォーム補助金や住宅改修工事における助成金などがあり、該当する場合には防水工事の補助金を受けることが可能です。
以下の内容が基本的な補助金申請時の条件です。
- 補助金申請できる地域に住んでいる
- 以前同じ補助金や助成金を受け取っていない
- 税金を滞納していない
- 省エネに関するものや耐震補強など、その地方自治体の目的にあった工事であること
詳しくはお住まいの各自治体のホームページ、または問い合わせをして確認してみましょう。
よくある質問(FAQ)
Q
トップコートだけの塗り替えで防水性は維持できますか?
A
トップコート自体に直接的な防水機能はありませんが、防水層を紫外線や雨風から守る重要な役割を担っています。劣化したまま放置すると、防水層の寿命を縮めることになるため、定期的な塗り替えが推奨されます。
Q
トップコートの塗り替え頻度は?
A
一般的には5〜7年ごとが理想的なサイクルとされていますが、日当たりや風雨にさらされる環境下では、それよりも早く劣化が進むことがあります。定期点検とセットで検討すると安心です。
Q
雨の日の施工は可能ですか?
A
トップコートは水分に非常に弱く、施工時に雨が降ると塗膜に不具合が生じやすくなります。そのため、晴天が続くタイミングを見て施工することが大前提となります。施工期間中の天候予測も業者選びの一環として注目しましょう。
Q
トップコートの色は選べますか?
A
多くのトップコート製品には、遮熱性を持たせたグレー・ホワイト・ライトグリーンなどのカラーバリエーションがあります。見た目の印象だけでなく、遮熱機能や防滑機能など、目的に応じて色や仕様を選べます。
防水工事のトップコートのまとめ
防水トップコートの塗り替えは、防水層を長持ちさせるための欠かせない保護措置です。適切なタイミングで塗り替えを行うことで、建物の寿命を延ばし、メンテナンスコストの削減にもつながります。
DIYによる塗り替えも一定の条件下では可能ですが、安全性や耐久性、仕上がりの均一性といった面から、特に広い面積や劣化が進んだ場合にはプロによる施工が望ましいと言えるでしょう。
塗り替えの際には、費用相場や施工工程を事前に把握したうえで、信頼できる防水業者を選び、長期的な安心を手に入れてください。
大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)