リフォームと大規模修繕・リノベーションの違いとは?目的・費用・選び方まで徹底解説
2025/07/31
マンションや住宅のメンテナンスを考える時「リフォーム」「大規模修繕」「リノベーション」といった言葉を耳にする機会が増えています。しかし、これらの用語は似ているようで実は意味や目的・対象範囲が大きく異なります。違いを明確に理解しないまま工事を進めてしまうと「思っていた仕上がりと違う」「費用が予想より高額だった」「管理組合に申請が必要だった」といったトラブルが発生する可能性もあります。
本記事では、リフォームと大規模修繕、そしてリノベーションという3つの工事の定義とその違いについて詳しく解説します。それぞれの工事がどのような目的で実施されるのか、どの部位が対象となるのか、工事の規模や費用感などを整理することで、自分の建物に必要な工事を正しく選べるようサポートします。
目次
リフォーム・大規模修繕・リノベーションの違いとは?
建物のリニューアル工事にはさまざまな目的がありますが、それに応じて選ばれる工事の種類も異なります。「リフォーム」「大規模修繕」「リノベーション」は、その代表的な3つです。ここでは、それぞれの定義と役割を整理し、違いを明確にします。
大規模修繕とは?マンションの共用部に行う機能回復工事
大規模修繕とは、マンションなどの集合住宅において、外壁や屋上・共用廊下・階段・エントランスなどの「共用部分」に対して実施される、定期的なメンテナンス工事を指します。建物の経年劣化によるひび割れ、塗膜の剥離、防水機能の低下といった症状に対処し、建物全体の安全性・快適性を維持することが目的です。
多くの場合、12〜15年ごとに修繕周期を設けており、長期修繕計画に基づいて計画的に実施されます。資金は修繕積立金から支出され、住民全体の合意や管理組合の決議が必要です。
また、修繕項目には、外壁補修・防水工事・配管更新・鉄部塗装などが含まれ、専門的な診断や施工が求められます。劣化を放置すると雨漏りや剥落といった重大事故にもつながるため、早めの実施が推奨されます。
リフォームとは?居住性・快適性を向上させる専有部のリニューアル工事
リフォームとは、主に個人の居住空間である「専有部分」に対して行うリニューアル工事のことです。対象となるのはキッチン・トイレ・浴室・床・壁・天井などの内装や設備で、経年劣化への対応や、生活スタイルに合わせた改善が目的です。
例えば、「古くなったキッチンをシステムキッチンに替えたい」「床がきしむので張り替えたい」「クロスを張り替えて部屋を明るくしたい」といったニーズがリフォームの代表例です。外壁や構造部に手を加えることはなく、比較的工期も短く、予算に応じた選択肢が豊富にあります。
また、省エネリフォームやバリアフリー化などは、補助金の対象となることもあるため、工事前に自治体の制度を確認するとメリットを最大化できます。
リノベーションとは?空間価値を高める再設計・再構築工事
リノベーションは、単なる改修にとどまらず、既存の空間に新たな価値を加える工事のことです。間取り変更や内装の全面的な刷新、設備のグレードアップを伴い、ライフスタイルに合わせて「住まいを再構築する」ことが目的です。
例えば、2DKを1LDKに変更する・オープンキッチン化する・スケルトン状態からすべての内装を作り直すといった工事がリノベーションにあたります。建物の構造躯体(柱や梁)には原則として手を加えず、専有部内での設計自由度を活かす形になります。
築年数の古いマンションを新築同様に蘇らせる手法として、近年特に若い世代からの支持が高まっていますが、工事の自由度が高い分、費用や工期もリフォームより大きくなる傾向にあります。
違いを一覧で比較|目的・対象・施工主体・費用感
以下の表に、それぞれの違いをまとめました。工事を検討する際は、まず「何を目的に、どの範囲をどう変えたいのか」を明確にすることが第一歩です。
| 比較項目 | 大規模修繕 | リフォーム | リノベーション |
| 主な目的 | 劣化補修・性能維持 | 快適性・利便性の向上 | 空間再設計・価値創出 |
| 対象範囲 | 共用部分 | 専有部分(部分) | 専有部分(全体) |
| 実施主体 | 管理組合 | 各居住者 | 各居住者 |
| 費用感 | 100万〜150万円/戸 | 数十万〜数百万円 | 数百万円〜1,500万円程度 |
| 必要な許可 | 管理組合の承認・総会決議 | 規約内であれば個人判断 | 規約・構造確認が必要 |
リフォームと大規模修繕はどう使い分ける?判断ポイントを解説
マンションや建物のリニューアル工事を検討する際「リフォームか大規模修繕か、どちらを選ぶべきか」と迷う方も多いでしょう。特に築年数が経過してきた物件では、専有部分の不便さと共用部分の劣化が同時に進行しているケースも少なくありません。ここでは、目的や施工範囲・費用負担者といった観点から、適切な使い分け方を解説します。
判断ポイント①:対象範囲で分ける|専有か共用かを見極める
最初に注目すべきは、工事対象の範囲が「専有部分」か「共用部分」かという点です。
- 専有部分:キッチン・浴室・トイレ・内壁・床材・建具など。リフォームで対応。
- 共用部分:外壁・屋上・廊下・階段・エントランス・配管等。大規模修繕で対応。
専有部分は個人の判断で工事できますが、共用部分のリニューアル工事には管理組合の決議が必要となります。この点を誤認すると、勝手な工事によるトラブルや管理規約違反を招くため、まずは所有区分の確認が大切です。
判断ポイント②:目的で分ける|回復か改善か
次に考慮したいのが、工事の「目的」です。
- 劣化や破損部分を直す:大規模修繕(性能回復が主目的)
- 使い勝手をよくしたい:リフォーム(利便性・快適性向上)
- 空間を根本的に作り変えたい:リノベーション(再構築)
たとえば、「壁のひび割れを補修したい」なら大規模修繕、「狭いキッチンを対面式に変えたい」ならリフォーム、「2DKの間取りを1LDKに変えたい」ならリノベーションが該当します。
判断ポイント③:費用負担者で分ける|個人か管理組合か
工事費用の負担者にも明確な違いがあります。
- 大規模修繕:管理組合が主体、費用は修繕積立金から
- リフォーム・リノベーション:個人が自己負担で実施
共用部分の修繕については個人で勝手にリニューアル工事できないため、費用も住民全体で按分する形となります。一方で、専有部分のリフォームは自由度が高く、自己資金でグレードや仕様を選べる点が魅力です。
マンション大規模修繕工事の費用相場と項目別内訳
大規模修繕工事の費用は、施工範囲・工事項目・建物規模によって大きく変動します。ここでは、一般的な修繕内容ごとの費用目安と、マンション規模別の想定コストを整理して紹介します。
工事項目ごとの費用目安と概要
以下の表に、代表的な工事項目と1戸あたりの費用相場をまとめました。建物の構造や劣化状況に応じて、増減することがあります。
| 工事項目 | 費用相場(1戸あたり) | 補足説明 |
| 外壁修繕・塗装工事 | 10〜15万円 | クラック補修、防水塗装、外観維持 |
| 屋上防水工事 | 5〜10万円 | ウレタン防水・シート防水の再施工 |
| 共用廊下・階段等の補修 | 5〜10万円 | 床材の張替え、手すり補修等 |
| 給排水管修繕工事 | 10〜20万円 | 高圧洗浄や配管の部分交換・全交換 |
| バルコニー防水 | 3〜7万円 | FRP防水、トップコート再施工 |
| エレベーター修繕 | 5〜15万円 | 基幹部品の交換や塗装等 |
| 設備更新(照明・防災) | 10〜30万円 | 照明器具や消防設備の更新 |
| 駐車場・外構の補修 | 3〜7万円 | アスファルト補修・外灯改修など |
建物規模ごとの想定費用
マンションの規模によって総工費は大きく異なります。以下は一般的な目安です。
- 30戸規模:3,000万〜4,500万円(1戸あたり約100〜150万円)
- 50戸規模:5,000万〜7,500万円
- 100戸規模:1億円〜1億5,000万円
費用には調査費・設計管理費・仮設足場なども含まれるため、見積もりは必ず詳細を確認しましょう。住民合意を得るためにも、内訳が明瞭であることは非常に重要です。
リフォーム・リノベーションの費用相場|工事項目別に解説
専有部分を対象とするリフォームやリノベーションは、希望する内容やグレード・施工面積によって費用が大きく変動します。ここでは、それぞれの工事タイプ別に相場をまとめ、想定予算の目安を提示します。
リフォームの費用相場(部分改修ごと)
リフォームは比較的自由度が高く、対象部位を限定して工事できる点が特徴です。以下は部位別の相場目安です。
| リフォーム内容 | 費用相場(目安) | 補足説明 |
| フルリフォーム(全面) | 800万〜1,500万円(70㎡) | 間取り変更、設備更新を含む |
| キッチン | 50万〜200万円 | システムキッチン・配管更新など |
| トイレ | 20万〜50万円 | 節水型や温水洗浄機能付きなど |
| 浴室 | 50万〜150万円 | ユニットバス・床材・壁材含む |
| 洗面所 | 20万〜80万円 | 洗面台、収納、内装更新など |
| リビング改修 | 100万〜300万円 | 床材・クロス・照明など |
| 壁紙張り替え(全室) | 20万〜50万円 | デザインクロス対応可 |
| 床材変更(全室) | 50万〜150万円 | フローリング、クッションフロア |
| 設備交換(照明・配管等) | 30万〜100万円 | スイッチ・エアコン・電気工事等 |
工事規模によっては数日〜数週間の工期が発生します。施工中の仮住まいが必要な場合は、その分の費用も見込んでおきましょう。
リノベーションの費用相場(全面改装・設計変更)
間取りの変更や内装デザインの刷新などを含むリノベーションでは、設計料や構造補強の確認費も必要になるため、費用は高額になる傾向にあります。
| リノベーション内容 | 費用相場(目安) | 補足説明 |
| フルリノベーション(70㎡) | 800万〜1,500万円 | 内装・設備・配線・間取り全変更 |
| 間取り変更 | 100万〜300万円 | 壁撤去・耐震性の確認要 |
| キッチン・LDK統合 | 100万〜300万円 | 動線の最適化、配線変更含む |
| 設備一式交換 | 100万〜250万円 | 水回り・照明・換気など総更新 |
リノベーションの場合、デザイン性を追求することが多く、オーダーメイドの家具や造作棚・調光照明などを導入するケースもあり、それに応じて費用も上がります。
リフォーム・大規模修繕で押さえておきたい3つの注意点
リフォームや大規模修繕は、建物の快適性や資産価値を保つうえで欠かせない工事です。
しかし、実際に着手するとなると「どこまで工事できるのか」「生活への影響は?」「どの業者に頼めばいい?」など、多くの不安や疑問がつきまといます。
この記事では、リフォーム・大規模修繕を成功させるために押さえておきたい3つの注意点を、わかりやすく解説します。
リフォーム・大規模修繕で押さえておきたい注意点1. 管理規約や構造制限の確認
マンションの場合、たとえ専有部であっても工事内容によっては管理組合の許可が必要です。特に以下のような内容は注意が必要です。
- 二重床・遮音フローリングの仕様制限
- 窓サッシや玄関扉は共用部扱い
- 間取り変更で耐力壁を撤去する行為
事前に管理規約を確認し、必要であれば事前申請を行いましょう。
リフォーム・大規模修繕で押さえておきたい注意点2. 工事中の生活への影響を想定
リフォーム・修繕工事中は騒音・振動・埃が発生するため、住民や近隣への配慮が求められます。自宅に居住したまま工事を進める場合、以下の点を確認しましょう。
- 作業時間と騒音のレベル
- 給水・排水の一時停止日程
- 養生の有無と動線の確保
快適な生活を保ちながら工事を進めるためにも、十分な事前打ち合わせが欠かせません。
リフォーム・大規模修繕で押さえておきたい注意点3. 見積もりは複数業者で比較
費用や工法、仕上がりに納得できるよう、リフォーム・修繕ともに必ず「相見積もり」を取ることをおすすめします。比較すべきポイントは以下です。
- 工事項目と費用の明細
- 使用材料とグレードの記載
- 工期・保証・アフター対応の内容
価格だけでなく、信頼性や対応力にも注目して選びましょう。
リフォームや大規模修繕は補助金・助成金制度を活用しよう
省エネ対策やバリアフリー工事など、条件を満たせば補助金を活用できる場合もあります。以下は代表的な制度です。
| 補助金制度 | 対象となる工事 | 支援内容 |
| こどもエコすまい支援事業 | 高断熱・高効率設備導入 | 最大30〜60万円/戸 |
| 長寿命化改修支援(地方自治体) | 外壁・屋根防水・耐震補強など | 工事費の1/2〜1/3補助(上限あり) |
| バリアフリー改修助成 | 段差解消、手すり設置 | 上限20万円程度 |
| 介護保険住宅改修費 | 高齢者住居の安全改修 | 上限20万円(1割負担) |
申請には事前手続きや工事内容の証明が必要な場合もあるため、早めに情報収集し、施工業者と連携しながら準備を進めましょう。
リフォームや大規模修繕に関するよくある質問(FAQ)
Q
リフォームとリノベーションの違いは?
A
リフォームは原状回復や部分的なリニューアル工事、リノベーションは間取り変更や空間再設計など大規模な再構築が特徴です。
Q
大規模修繕は何年おきに実施すべき?
A
一般的には12〜15年周期で実施されます。国交省のガイドラインや長期修繕計画に基づいて実行されます。
Q
リフォームで管理組合の承認が必要なケースは?
A
専有部分でも騒音を伴う工事や水回り・構造に関わる変更では、事前届出や承認が求められます。
Q
補助金の申請は個人でできる?
A
可能ですが、書類や図面の作成などが必要になるため、施工業者のサポートを受けるのが一般的です。
Q
リフォームと大規模修繕を同時に進められる?
A
共用部分と専有部分の工事内容が被らなければ同時進行も可能ですが、タイミングと施工調整が必要です。
まとめ|リフォームと大規模修繕の違いを理解し目的に応じた最適な判断を
リフォームや大規模修繕・リノベーションは、それぞれ目的や範囲・費用の考え方が異なる工事です。リフォームは生活の快適性を向上させるための選択肢、大規模修繕は建物の性能維持と安全性を保つための必須工事、リノベーションは将来的な価値の再設計に関わる施策と言えるでしょう。
どの工事を選ぶかは、建物の状態・居住者のニーズ・予算、そして長期的なライフプランによって異なります。この記事で紹介した違いや判断ポイント・費用相場・補助金情報を参考に、住まいにとって最も適した選択肢を冷静に見極めましょう。