コンクリートのひび割れ補修法を徹底解説!原因や種類に合わせた方法や失敗しないためのポイント
2025/07/31
コンクリートは建物の構造材として広く使われる素材であり、耐久性や強度に優れている一方、経年劣化や外的環境の影響により「ひび割れ(クラック)」が発生することがあります。
小さなひびであっても、放置すると水分や有害物質が内部に浸透し、鉄筋の腐食や建物全体の耐久性低下につながる恐れがあります。
この記事では、コンクリートのひび割れに関する正しい知識を身につけ、DIYで補修できるケースや業者に依頼したほうがよいケースの見極め方を紹介します。
また、ひび割れの原因・種類・補修方法も解説し、建物の資産価値や安全性を維持するための具体的な対策も紹介します。
小さなトラブルでも、早期に適切な対応を行うことで大きな被害を防ぐことができます。
ひび割れの状態を見極め、最適な補修法を選ぶための参考として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
コンクリートにひび割れが起こる原因とは?
コンクリートのひび割れは、施工時の不備や経年変化など複数の要因で発生します。
原因を特定しなければ、補修をしても再発のリスクが高くなってしまうでしょう。
この章では、代表的な原因とその背景について紹介します。
コンクリートにひび割れが起こる原因:乾燥収縮
コンクリートが硬化する際、水分が蒸発して体積が縮む現象を「乾燥収縮」といいます。
この収縮によって引っ張り応力が生じ、表面に細かなひび割れが発生します。
特に厚みの薄い部分や風通しの良い場所では収縮が早まり、ひび割れのリスクが高まります。
施工直後の養生不足や水セメント比の設定ミスが原因になることもあり、適切な水分管理が非常に重要です。
コンクリートにひび割れが起こる原因:施工不良・養生不足
打設後のコンクリートは、水分を保持しながらゆっくりと硬化させる必要があります。
養生が不十分だと、表面が急激に乾燥してしまい、塑性収縮ひび割れなどが生じやすくなります。
また、バイブレーターの不適切な使用や打ち継ぎ処理の失敗など施工上のミスも、ひび割れの原因となることがあります。
これらは防げる要因であるため、施工品質の確保が大切です。
コンクリートにひび割れが起こる原因:構造的な負荷・地震・沈下などの影響
建物にかかる荷重の集中や地震動による振動、または地盤沈下による不同沈下が、コンクリートに強い応力を与えてひび割れを引き起こすことがあります。
これらの構造クラックは、幅が広く深さもあるため、補修が困難になるケースがほとんどです。
特に基礎や柱など構造部位でのひび割れは、建物の安全性を損なう重大な要因となるため、早急な対処が求められます。
コンクリートに発生するひび割れの種類と見分け方
ひび割れにはいくつもの種類があり、見た目だけで判断すると誤った補修法を選んでしまうことがあります。
ここでは、発生原因や場所によって分類される代表的なひび割れについて、それぞれの特徴と注意点を解説します。
表面ひび割れ(ヘアクラック)
幅0.3mm未満の細く浅いひび割れで、コンクリートの表面にだけ現れることが多いものです。
構造にはほとんど影響がないものの、水分や空気の浸入が進行すると、内部の鉄筋に腐食をもたらすこともあります。
美観を損なうだけでなく、劣化の入口にもなるため、早めに補修しておくのが望ましいでしょう。
構造クラック(鉄筋への影響あり)
鉄筋コンクリートの構造体にまで達するひび割れで、ひび割れ幅が0.3mm以上のケースがこれにあたります。
主に応力集中や地震・過重などによって発生し、深刻な劣化や耐震性の低下を招くリスクがあります。
補修にあたっては、ひびの奥まで補修材を注入し、必要に応じて補強も行うことが大切です。
マップクラック(化学反応・乾燥の複合型)
ひび割れが格子状・網目状に広がるタイプで、乾燥収縮やアルカリシリカ反応などが複合的に影響して発生します。
見た目には小さなひびでも、広範囲にわたって内部劣化が進行している可能性があるため、状況を把握したうえで適切な補修・保護処置を行うことが大切です。
DIYでできるコンクリートのひび割れ補修方法
軽微なひび割れであれば、ホームセンターで購入できる補修材を使って自分で補修することが可能です。
DIYに向いているひび割れの条件や必要な道具、施工手順を紹介します。
DIYが可能なひび割れの条件
DIY補修が可能なのは、主に「幅0.3mm未満の浅いクラック」に限られます。
これ以上の幅になると、内部への劣化が進行している可能性があるため、専門業者による補修が推奨されます。
特に鉄筋が見えていたり、複数箇所でひび割れが広がっているような場合は、自己判断で補修せず、プロに調査を依頼しましょう。
補修前の下地処理と準備
DIY補修の成功は下地処理で決まります。
まずワイヤーブラシやサンドペーパーで汚れや脆弱部を除去し、ひび割れ周辺を清潔な状態に整えます。
マスキングテープで作業範囲を区切り、水スプレーで下地を湿らせると、補修材の密着性が高まります。
作業タイミングは、乾燥が進みにくい午前中や夕方が適しています。
補修材の選び方と施工手順
使用する補修材は、エポキシ樹脂系やセメントフィラー系が主流です。
補修材をひび割れに押し込むように充填し、スクレーパーやゴムベラで表面をならして仕上げます。
乾燥時間は製品によりますが、24時間を目安にしてください。
補修後は定期的に確認し、再発がないかチェックしましょう。
コンクリートのひび割れ補修の注意点と失敗しないためのポイント
コンクリートのひび割れを補修する際には、ただ材料を詰めるだけでは不十分です。
原因を見誤ると、せっかくの補修もすぐに再発してしまうリスクがあります。
この章では、補修にあたって失敗しやすいポイントと、それを回避するための注意点を詳しく解説します。
原因に合った補修方法の選定
ひび割れ補修における最大の失敗原因は「補修方法の選び間違い」です。
たとえば乾燥収縮による表面のひび割れに構造補強を施しても効果は薄く、反対に構造クラックに軽微な表面処理だけで対応しても、内部の劣化は止まりません。
ひび割れが発生した背景をきちんと分析し、それに合った方法を選ぶことで、長期的な耐久性と安全性を確保できます。
補修前には、専門家による診断や、ひびの進行状況・構造材への影響をしっかり調査することが大切です。
防水性・密着性・強度の確保
補修材を選ぶ際には、防水性・密着性・強度という3つの性能バランスが重要です。
たとえば水が入りやすい部位では、防水性能の高いエポキシ樹脂やポリウレタン系補修材が適しており、歩行頻度の高い床面では耐摩耗性のある素材を選ぶ必要があります。
また、施工時の気温・湿度・表面状態によっても補修材の硬化速度や性能が変化するため、施工条件を整えることも重要です。
補修材の取扱説明書をよく読み、適切な温度帯・乾燥時間を守るよう心がけましょう。
定期点検と再発防止策
ひび割れを一度補修しても、構造的な原因や地盤の変化などが続けば、再発する可能性があります。
補修はあくまで「治療」であり、完治させるには定期的な点検と予防的な保護処理が必要です。
たとえば外壁や屋上の場合、防水塗装の再塗布やトップコートの更新によって、表面の防水性を維持できます。
また、雨水がひびに入り込まないよう、排水経路の確保や防水層の点検も欠かせません。
補修後のフォローまで含めて対応することが、長期的なメンテナンスの成功に直結します。
コンクリートのひび割れ補修を業者に依頼すべきケースとは?
コンクリートのひび割れは、すべてがDIYで対応できるわけではありません。
補修が難しいケースや失敗のリスクが高い場面では、専門業者への依頼が必要です。
この章では、業者に依頼するべきケースやそのメリット、費用の目安について解説します。
業者に依頼すべき具体的なケース
次のようなケースでは、DIYでの補修は避け、専門業者による対応が推奨されます。
- 幅0.3mm以上の深いひび割れ
- 鉄筋が露出している
- ひびが広がっている、進行している
- 基礎や構造体に影響している
- ひび割れの原因が不明確
これらに該当する場合、表面を埋めるだけでは不十分で、内部補強や躯体改修が必要になることが多いため、技術力と診断力を持った業者に相談しましょう。
施工業者の選び方とチェックポイント
業者選びは、補修の質を左右する非常に重要な要素です。
実績が豊富な業者であれば、ひび割れの原因特定から適切な施工方法の提案まで一貫して対応してくれます。
選定時のチェックポイントとしては、「過去の施工事例」「使用する補修材の種類」「保証内容」「アフター対応」などが挙げられます。
また、見積書の内訳が明確で、質問に対して丁寧に答えてくれる業者は信頼性が高い傾向にあります。
価格だけでなく、対応姿勢も評価基準に含めましょう。
補修費用の目安と見積もりのポイント
補修費用はひび割れの規模や施工範囲、使用する材料によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
| 補修内容 | 費用相場(税抜) |
| 表面補修(セメント系) | 5,000〜10,000円/㎡ |
| エポキシ樹脂注入 | 8,000〜15,000円/㎡ |
| 構造補強(炭素繊維補強含む) | 20,000円〜/㎡ |
| 基礎の打ち替え | 数十万円〜規模により変動 |
見積もり時には、「どこをどう補修するか」「再発防止策は含まれているか」「追加費用が発生する条件」など、細かく確認しましょう。
鉄筋コンクリートのひび割れ補修と防水工事の関係性
コンクリートのひび割れ補修と切り離せないのが「防水工事」です。
特にRC構造では、防水性能の低下がひび割れの悪化を招きやすく、逆にひび割れが防水層の劣化原因にもなります。
この章では、防水工事との関連性や代表的な工法を紹介します。
防水層の劣化とひび割れの関係
屋上やバルコニーなど、風雨に直接さらされる場所では、防水層の経年劣化が進むことでコンクリートが吸水しやすくなり、凍結膨張や中性化によるひび割れが発生しやすくなります。
一方、ひび割れが起きたことにより防水層が破れ、雨水が浸入するというケースもあります。
このように、両者は密接に関連しており、ひび割れを補修する際には防水層の点検・再施工もセットで検討すべきです。
代表的な防水工法と適用部位
防水工法には主に3種類あり、施工部位や条件に応じて選定されます。
- ウレタン防水:塗膜タイプで複雑な形状にも対応可能。主にバルコニーや屋上に使用
- シート防水(塩ビ・ゴム):均一な厚みと高い耐久性が特徴。広い屋上に適しています
- FRP防水:硬質で歩行にも耐えられる。強度が求められるベランダなどに最適
防水工法の選定には、施工箇所の形状・使用環境・工期・費用・メンテナンス性を考慮する必要があります。
防水と補修のタイミング調整
防水工事は単体で行うこともありますが、ひび割れ補修と併せて実施することで効率的かつ経済的です。
たとえば屋上であれば、先にひび割れ補修を行い、その上から防水層を施工することで、ひびからの雨水浸入を確実に防げます。
補修と防水のタイミングを揃えることで足場の共用も可能になり、全体工期やコストの削減にもつながります。
コンクリートのひび割れ補修でよくある質問
コンクリートのひび割れ補修に関しては、DIYの可否や補修の基準・再発リスクなど、さまざまな疑問を持つ方が多いでしょう。
ここでは、特によく寄せられる質問に、それぞれわかりやすく丁寧に解説します。
Q
コンクリートのひび割れはどのくらいの幅から補修が必要ですか?
A
一般的に、幅0.3mm以上のひび割れは構造的な問題や水の浸入のリスクが高いため、補修が必要とされています。ただし、0.3mm未満の細かなヘアクラックであっても、放置すると徐々に劣化が進行する場合があります。特に屋外や水回りなど水の影響を受けやすい場所では、見た目が軽微でも早めの点検と処置が推奨されます。
Q
DIYで補修する場合、どのような補修材が適していますか?
A
DIYでの補修に使用する材料としては、エポキシ樹脂系補修材やセメント系フィラーが一般的です。用途や施工箇所に応じて使い分けることが大切です。また、補修材を塗る前に、ワイヤーブラシで清掃し、水で下地を湿らせるなど、下処理を丁寧に行うことが密着性を高め、仕上がりに大きく影響します。
Q
コンクリートのひび割れを放置するとどうなりますか?
A
ひび割れを放置すると、雨水・空気中の二酸化炭素・塩分などがコンクリート内部に浸入し、鉄筋の腐食や剥離、中性化の進行を招く可能性があります。特に寒冷地では、水の凍結と融解を繰り返すことでひびが拡大しやすく、より早く劣化が進行します。最終的には構造クラックへと発展し、建物全体の資産価値低下や大規模修繕の必要性にもつながるため、小さいうちに発見・補修することで、将来的なコストとリスクを軽減することが大切です。
コンクリートのひび割れ補修は早期に対応を|まとめ
コンクリートのひび割れは、放置しても自然に治ることはありません。
むしろ時間の経過とともに、水分や化学物質の浸入により内部劣化が進行し、鉄筋の腐食や構造の弱体化につながっていきます。
初期の段階であれば簡易な補修で済むものも、対処が遅れると高額な改修工事や構造補強が必要になるケースも少なくありません。
本記事では、コンクリートのひび割れが発生する原因や種類、DIYでの補修方法、業者への依頼が必要なケースなどについて解説しました。
ひび割れの状態を見極めるためには、幅や深さだけでなく、発生場所や周辺環境、構造体への影響などを多角的に評価することが求められます。
軽微なクラックであれば、エポキシ樹脂やセメント系フィラーを用いたDIY補修も可能ですが、判断に迷う場合は無理をせず、信頼できる補修業者に診断を依頼すると安心です。
また、ひび割れ補修と併せて防水工事を検討することで、雨水の浸入を防ぎ、より長期的な建物の保護が可能になります。
コンクリートは堅牢な素材である一方で、メンテナンスを怠ると寿命が縮まる素材でもあります。
ひび割れはその初期サインでもあるため、早期発見・早期対応を徹底し、大切な建物を長く安全に保ちましょう。