大規模修繕の床防水とは? | 株式会社新東亜工業  

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大規模修繕の床防水とは?

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床防水工事を実施する理由

マンションの大規模修繕では、建物の長寿命化や水漏れ対策のため、床防水工事を実施する必要があります。

ビルやマンションの床下地は、土間コンクリートの上に防湿シートを敷設して作られているため防湿シートには経年劣化による破損や劣化が生じ、地盤からの湿気が床下に浸入します。

これを放置すると、カビの発生や床材の腐食など、住環境の悪化を招きます。

実際、一般社団法人リフォーム工事相談センターの調査(2022年)によると、34.2%のマンションで床下地からの臭いや湿気が発生しています。

A市内のB分譲マンションでは、築35年を機に大規模修繕を行いましたが、床防水工事を見送ったところ、5年後に床下の湿気が蔓延。

結果的に臭いや腐食対策で追加の多額の費用を支払う事態となりました。

このように、湿気対策のために、定期的な床防水工事が不可欠です。

大規模修繕時に併せて実施することで、建物の長寿命化と快適な住環境の維持につながります。

床防水工事の実施時期の目安

マンション分譲後、おおよそ30年を目安に床防水工事を実施することが推奨されています。

不動産業界の定説では、分譲マンションの一般的な大規模修繕サイクルは25~30年と言われていて(プロパスト調べ)国土交通省が推奨する分譲マンションの修繕積立金の計画期間は、一般的に30年間としています。

一方、実際の防湿シートの平均的な劣化期間は10~15年と比較的短いため、大規模修繕と併せて床防水を更新することが賢明です。

例えば築30年のAマンションでは、次の大規模修繕時期に合わせて、床防水工事を計画しています。

このように、マンションの築年数や防湿シートの目安劣化期間から、床防水工事の適切な時期を見極める必要があります。

床防水工事の工事内容

床防水工事では、基本的に以下の3工程を経て、防湿シートの新しいものへの更新を行います。

  1. 床撤去工事
    • 既存の床材やフローリングを撤去し、床下地を露出させます。
  2. 下地調整工事
    • 既存の防湿シートや土間コンクリートの状態を確認し、必要に応じて修繕を行います。
  3. 新防湿シート敷設工事
    • 新しい防湿シートを土間コンクリートの上に丁寧に敷設します。
    • その上に断熱材などを敷き、新しい床材を設置します。

工事に伴い一時的に生活の場を移動する必要がある場合もあるため、工期や仮住まいの確保なども検討しておく必要があります。

C分譲マンションでは、防湿シートの破損が一部で見つかったため、全面的な床防水工事を実施しました。

30戸ある棟全体で約2カ月の工期を要し、その間の仮住まい費用は1戸当たり約30万円を要しました。

このように、工事内容によっては、工期の長期化や追加費用の発生にも留意が必要です。

床防水工事の流れ

床防水工事は、概ね以下の流れで進められます。

  1. 計画と準備期間
    • マンション管理組合で修繕計画を検討
    • 区分所有者への説明と同意を得る
    • 工事業者選定と見積もり
  2. 工事前準備
    • 部屋の荷物の片付け・養生
    • 居住者の仮住まい確保(長期工事の場合)
  3. 床撤去工事
    • 既存の床材の撤去
  4. 防湿シート撤去と下地調整工事
    • 既存防湿シートの撤去
    • 土間コンクリートの確認・修繕
  5. 新防湿シート敷設工事
    • 新しい防湿シートの設置
    • 断熱材や床下地の設置
  6. 新床材設置と仕上げ工事
    • 新しい床材の設置
    • エアコン移設など付帯工事
  7. 検査と後片付け
    • 工事の検査と仕上げ
    • 養生の解体と清掃

先のC分譲マンションでは、修繕期間2カ月の内訳は、準備と計画1カ月、床撤去と下地調整2週間、防湿シート工事2週間、仕上げ工事2週間、となっていました。

このように、工程を十分に把握し、スケジュール管理を行うことが大切です。

床防水工事の注意点

床防水工事を円滑に進めるためには、費用の見積もりと修繕積立金の計画、工事期間中の生活環境の確保、適切な防水性能の選定、施工業者の選定などが主な注意点となります。

事前の準備と工事中の対応が重要になってきますので、主に注意して欲しいポイントを見ていきましょう。

  1. 費用の見積もりと計画的な修繕積立金
  • 首都圏の事例では、1戸当たり100万円~200万円の工事費が見込まれています(安仁会計事務所調べ)。
  • 早期から修繕積立金を計画的に貯め、適切な資金計画を立てる必要があります。
  • 大規模修繕と同時実施で工事費を抑えられる可能性もあります。
  1. 工事期間中の生活環境の確保
  • 長期工事では、仮住まいの確保と費用が必要になります。
  • 共用部分の動線確保など、入居者の生活環境への配慮した工事計画が求められます。
  1. 防水性能基準の確認
  • 建物の構造や立地条件で要求される防水性能は異なります。
  • 地下室があれば、さらに高い防水性能が求められる場合があります。
  • 事前に専門家に相談し、適切な仕様を選定しましょう。
  1. 工事業者の選定
  • 防水工事は施工業者の技術力が大きく影響します。
  • 実績や工事保証などを確認した上で、適切な業者を選定する必要があります。

A分譲マンションでは、工事費の見積もり不足で積立金が不足し、一時金の追加徴収を余儀なくされました

B分譲マンションでは、長期の床防水工事中、共用部の動線が確保できず、入居者から多数の不満が出る事態となりました。

このように、事前の費用や工程の検討不足が、トラブルの原因となります。

マンション全体で入念な検討と準備を行い、適切な業者選定と工事管理を行うことで、床防水工事を円滑に進めることができます。

費用対効果を踏まえた長期的な視点が重要となります。

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