屋根塗装で縁切りを怠るとどうなる?工法や雨漏り・結露を防ぐ正しい施工ポイントを解説

屋根塗装において縁切りとは、スレート屋根の重ね目に必要な隙間を確保するための工程です。雨漏り防止に欠かせないこの作業は、タスペーサーやカッターを使用する方法があり、コロニアルなどの屋根材の塗り替え時に重要です。ただし、外壁塗装と同時に行う場合や屋根の形状によっては不要なケースもあり、その必要性は状況によって異なります。

本記事では、縁切りをしない場合のリスクから具体的なやり方、工事における注意点まで、建物のメンテナンスに関する内容を紹介しますので、最後までご覧ください。

目次

屋根塗装で必須の屋根塗装の縁切り(タスペーサー)とは?

自宅の屋根がスレート瓦の場合は、縁切りが必須です。

本来スレート瓦の重ね目には、水の通り道となる隙間が確保されています。

そこに塗装を行うと、重ね目にも塗料が入り込んでそのまま乾燥し、必要な隙間を塞いでしまいます。

屋根塗装における縁切りは、必要な隙間を塞いでしまった塗膜を切ることで、水の通り道を適切に確保する作業のことです。

屋根塗装で縁切り(タスペーサー)が必要な理由とは?

屋根に降る雨水は、スレート瓦の重ね目にある隙間を通って流れ出ることで、屋根の内部に留まらない仕組みになっています。

屋根塗装の後に縁切りを行わずこの重ね目の隙間が塞がってしまうと、スレート瓦を伝って雨水が屋根内部に侵入した際に、屋根の内部に雨水が溜まって逃げ場を失ってしまいます。

屋根内部に雨水が侵入して溜まってしまうと、雨漏りの原因にもなるでしょう。

雨漏りは、室内に大きな被害を与えることはもちろん、気づかないうちに屋根内部が腐食してしまうなど建物全体にも大きなダメージを与える症状です。

屋根や建物を守るためにも、縁切りは必要な作業なのです。

屋根塗装で縁切り(タスペーサー)が不要な場合とは?

屋根塗装を実施した場合は縁切りも行うことが基本ですが、すべての屋根で縁切りが必要となるわけではありません。

以下のような屋根では、屋根塗装を実施した後でも縁切りは不要です。

  1. 傾斜が大きい屋根
  2. 経年劣化で先端が反ったスレート瓦
  3. 新築後に初めて塗装工事をする屋根
  4. 吹き付け塗装を行う場合

上記の4つの屋根の場合について、詳しく解説していきます。

屋根塗装で縁切りが不要な場合1.傾斜が大きい屋根

一般的に5寸勾配以上の急傾斜の屋根では、縁切りが必要ありません。

傾斜が大きい屋根は、屋根塗装を行なった際も塗料がとどまりにくく、スレート瓦の隙間を十分に確保することができるからです。

屋根の傾斜について一般の方が判断することは難しいため、縁切りの必要性については専門業者に相談して決めるといいでしょう。

屋根塗装で縁切りが不要な場合2.経年劣化で先端が反ったスレート瓦

スレート瓦は、経年劣化によって先端が反ることがあります。

スレート瓦の先端が反っていれば、瓦の重ね目の隙間が大きくなるため縁切りは不要です。

このようなスレート瓦の反りは10年程度を目安に現れてくることが多いですが、屋根全体のスレート瓦が均等に劣化するわけではありません。

反りが大きい部分もあればほとんど反っていない部分もあるというケースも多く、そのような場合では部分的に縁切りが必要となることもあります。

劣化状態に合わせた判断が必要となるため、専門業者に判断してもらうようにしてください。

屋根塗装で縁切りが不要な場合3.新築後に初めて塗装工事をする屋根

新築後に初めて塗装工事を行う屋根には、縁切りが必要ありません。

新築後に初めて塗装工事を行うスレート瓦の重ね目には隙間が十分に確保されているため、縁切りを行わなくても隙間が詰まることがないからです。

基本的に新築時のスレート瓦には塗装を行わないため、重ね目の隙間に前回の塗料が残っていて隙間を塞いでしまうということもありません。

このような理由から、塗装工事で縁切りが必要となるのは2回目以降の塗装の際だということになります。

ただし、新築後初めての塗装工事であっても隙間が塞がってしまう場合や、多めに塗料を塗布する場合など、重ね目の隙間が十分に確保されていない場合には縁切りが必要となるので注意が必要です。

屋根塗装で縁切りが不要な場合4.吹き付け塗装を行う場合

塗装工事は、ローラー塗装と吹き付け塗装の2つに大きくわけられます。

このうち吹き付け塗装を行う場合に関しては、縁切りが必要ありません。

吹き付け塗装とは、スプレーガンを使用して霧状にした塗料を吹き付けるように塗装する方法のことです。

ローラーを使用して塗料を手塗りするローラー塗装と違って、吹き付け塗装ではスレート瓦の重ね目の隙間まで塗料が届かないので、塗料が隙間を塞いでしまうリスクがないため縁切りする必要もありません。

屋根塗装における正しい縁切り(タスペーサー)の方法は?

縁切りの方法には、以下の2種類があります。

  • 従来の縁切り
  • タスペーサー工法

それぞれの工法について、作業内容を詳しく紹介します。

屋根塗装における正しい縁切り(タスペーサー)の方法|従来の縁切り

従来の縁切りは、金属ヘラやカッターを使用して縁切りを行う工法です。

屋根塗装を行った後、塗料が乾燥してからヘラやカッターで塗膜を切り適切な隙間を作っていきます。

かつては主流だった工法ですが、現在ではタスペーサー工法が主流となり従来の工法はほとんど使用されていません。

ヘラやカッターで削った部分が傷んでしまうリスクや、塗装後の屋根の上を踏んで作業するため屋根材が汚れることなどがデメリットになります。

従来の縁切りでは2人で作業して終日かかるほど手間のかかる作業で、タスペーサー工法に比べると工期が長く費用も高額です。

屋根塗装における正しい縁切り(タスペーサー)の方法|タスペーサー工法

タスペーサー工法とは、名前の通りにタスペーサーと呼ばれる道具を使用して行う方法です。

一枚のスレート瓦に対して、15cm間隔で2つのタスペーサーを隙間に挿入していきます。

タスペーサーを挿入することで、スレート瓦の重ね目の隙間を十分に確保することができます。

タスペーサーの挿入は下塗り・上塗りとの間で行うため、塗装後の屋根に登って作業する必要がなく、屋根材を汚したり傷つけたりするリスクがないことがメリットです。

また、タスペーサー工法による作業は1人で行っても3時間程度で完了します。

従来の縁切りに比べてメリットが多いため、現在ではタスペーサー工法が主流になっています。

屋根塗装の縁切り(タスペーサー)のトラブルが多いのはなぜ?

スレート瓦の塗装工事において縁切りは必須の作業ですが、実は縁切りが行われておらずトラブルに発展するケースは珍しくないのです。

縁切りはとても手間のかかる作業で、縁切りを行わない塗装工事と比較すると3倍ほどの作業時間が必要になることもあります。

そのため、業者によっては縁切りを省略してしまい、トラブルにつながるケースが後を絶たないのです。

屋根塗装の縁切り(タスペーサー)のトラブル対策は?

縁切りによるトラブルを予防するためには、手間を惜しまずにしっかりと縁切りを行ってくれる業者に塗装工事を依頼することが重要です。

依頼を行う前の見積もりなどの段階で、縁切りやタスペーサーの挿入が作業工程に含まれているかどうかをしっかりと確認しましょう。

この際、口頭の約束だけではなく見積書や工程表などの書面に記載してもらうことが重要です。

工事完了後には、写真付きで作成した報告書を提出してもらい、縁切りやタスペーサーの挿入を行ったかどうかを写真で確認するとさらに安心です。

屋根塗装の縁切り(タスペーサー)が不十分な場合の対処法は?

縁切りが行われていないことが判明したら、すぐに屋根と屋根裏の状態を確認してください。

縁切りが不十分な状態であれば、スレート瓦の隙間に雨水が溜まっている可能性が高いです。

すでに雨漏りが生じていたり、雨漏りにつながる劣化症状が現れていたりするリスクが考えられるので、できる限り早めに対応することが重要です。

自分で屋上に上がって確認するのは大変危険な作業なので、必ず屋根の診断を行える専門業者に点検を依頼するようにしましょう。

塗装できない屋根の種類と注意点

塗装できない屋根とは、屋根の種類や状態によって塗装が適切に行えない場合や、塗装効果が薄い場合のことを指します。屋根の塗装は保護や外観の向上に役立ちますが、屋根の材質や劣化状況によっては塗装が不可能なこともあります。

塗装できない屋根の種類1.スレート屋根(カラーベスト)

スレート屋根は塗装が可能ですが、長年の使用で劣化が進行している場合、塗装がうまく密着しないことがあります。劣化がひどい場合は、塗装よりも交換が望ましいです。

塗装できない屋根の種類2.金属屋根

金属屋根は塗装できますが、サビが発生している場合、塗装が剥がれやすくなります。塗装前にサビ取りや下地処理が必要です。

塗装できない屋根の種類3.アスファルトシングル屋根

アスファルトシングル屋根は塗装には向いていません。塗装しても効果が持続しにくいため、交換や補修が推奨されます。


屋根の種類や劣化具合に応じて適切な対策を講じることが重要です。塗装が効果的でない場合は、交換や修理を検討する方が望ましい場合もあります。

防水工事で活用できる補助金・助成金制度【2025年最新】

防水工事は建物を長く快適に使うために必要ですが、費用負担も決して小さくはありません。そこで注目したいのが、国や自治体が提供する補助金・助成金制度です。2025年現在も、多くの地域で省エネ・劣化対策を目的とした防水工事が補助対象となっています。

以下に代表的な制度を紹介します。

【全国対象】住宅省エネ2025キャンペーン(国交省ほか)

  • 対象工事:屋上・外壁・ベランダなどの防水工事(省エネ性能を高める改修が条件)
  • 補助内容:1戸あたり上限120万円(戸建て)、15万円(集合住宅)
  • 申請条件
    • 登録事業者による施工
    • 補助対象の工事内容に合致すること(遮熱・断熱性を伴う防水工事など)
    • 事前申請が必須

引用・詳細:住宅省エネ2025キャンペーン公式サイト

【東京都足立区】住宅リフォーム助成事業

  • 対象工事:屋上・ベランダの防水、外壁塗装などの劣化対策リフォーム
  • 補助内容:工事費の1/3(上限5万円)
  • 申請条件
    • 足立区内の住宅に居住する個人
    • 登録業者による工事
    • 事前申請が必須

引用・詳細:足立区住宅リフォーム助成事業

【福岡市】住宅リフォーム助成金

  • 対象工事:雨漏り防止、屋上・外壁の防水工事など
  • 補助内容:工事費の10%(上限20万円)
  • 申請条件
    • 市内に居住し、該当物件の所有者であること
    • 工事費が30万円以上であること
    • 登録事業者の施工であること

引用・詳細:福岡市住宅リフォーム支援

補助金活用の注意点

防水工事で補助金を利用する際は、以下の点に注意してください。

  • 必ず工事前に申請(着工後では申請できない制度が大半です)
  • 自治体ごとに条件が異なる(年齢・所得制限、地域要件、施工業者の登録条件など)
  • 書類の準備が必要(見積書・図面・写真など)
  • 受付期間に制限あり(予算枠があるため早めの申請が推奨されます)

※補助制度の対象条件や助成額は自治体ごとに異なり、最新の情報は市区町村のホームページや窓口で確認が必要です。多くの制度では、申請前の事前相談や書類提出が必須となっているため、スケジュールには十分な余裕をもって準備しましょう。

屋根塗装を依頼する業者選びのポイント|適切な縁切りの施工を叶える

縁切りは屋根塗装の中でも見えにくく、手間のかかる工程であるため、業者の技術力や信頼性によって仕上がりに差が出やすい部分です。適切な縁切り(またはタスペーサーの使用)を確実に行う優良業者を選ぶためには、以下のポイントを押さえておくと安心です。

1. 見積書に「縁切り」や「タスペーサー」の記載があるか

作業工程として明記されているかを必ず確認しましょう。記載がなければ、手間を省くために省略される可能性があります。

2. 工程写真付きの報告書を提出してくれるか

縁切りは塗装後に隠れてしまうため、写真での報告が重要です。「施工前」「施工中」「施工後」の記録を残す業者を選びましょう。

3. タスペーサーの使用実績があるかどうか

現在主流の工法であるタスペーサーを正しく扱える業者か確認しましょう。使用実績の有無を具体的に聞くのがおすすめです。

4. スレート屋根に対する理解と経験が豊富か

屋根材の状態によって縁切りの必要性は異なるため、現地調査での判断力も重要です。屋根診断士や外装劣化診断士などの資格があれば、より信頼できます。

信頼できる業者を見極めることで、縁切り不足による雨漏りリスクを未然に防ぐことができます。

屋根塗装の縁切りに関するよくある質問(FAQ)

スレート屋根のよくある質問(FAQ)について回答します。

Q

スレート屋根の塗装で縁切りをしないとどうなりますか?

A

雨水の逃げ場がなくなり、内部に溜まって雨漏りの原因になります。
塗料が重ね目を塞ぐことで、屋根内部に水分が滞留し、屋根材の腐食や雨漏りを招きます。縁切りはそのリスクを防ぐために欠かせない工程です。

Q

タスペーサーはすべてのスレート屋根に必要ですか?

A

状況によります。傾斜の強い屋根や新築初回の塗装では不要なケースもあります。
屋根の勾配やスレートの反り具合によっては、自然に隙間ができるため縁切りが不要なことも。専門業者の診断が必要です。

Q

タスペーサーの設置は誰でもできる作業ですか?

A

専門知識が必要です。
タスペーサーは適切な間隔や深さで挿入しなければ効果が薄れます。DIYではなく、屋根塗装の経験が豊富な業者に任せるのが安全です。

Q

タスペーサーを使ったかどうか、工事後に確認できますか?

A

通常は写真での確認が主です。
塗装後にタスペーサーが隠れてしまうため、施工時に写真を撮ってもらい、報告書として提出してもらうのが確実です。

屋根塗装は縁切り(タスペーサー)の正確さが重要|まとめ

今回は、屋根塗装の縁切りについて詳しく紹介しました。

  • 縁切りとは、スレート瓦の重ね目にある水の通り道となる隙間を確保するための作業
  • 塗装を行うと塗膜が隙間を塞いでしまうため、縁切りによる隙間の確保が必須
  • 屋根塗装を行った後でも縁切りが不要な屋根もある
  • 現在では、タスペーサーを隙間に差し込むタスペーサー工法が主流
  • 縁切りを行わないと雨漏りなどのトラブルが生じるため、縁切りをしっかりと行ってくれる業者を選ぶことが重要

縁切りは、塗装工事後のトラブルを防ぐためにも欠かせない作業です。

とても手間のかかる作業であることから省略されてしまいトラブルに発展するケースもあるため、しっかりと縁切りを行ってくれる業者を選んで塗装工事を依頼しましょう。

今回の記事で、縁切りの必要性や詳しい作業内容が伝われば幸いです。