2024.01.25
マンション大規模修繕のタイルの浮き工事|浮く原因や外壁修繕・補修の費用相場も解説
マンションタイルは経年劣化や自然災害等でタイルの浮きが起こる場合があります。
またマンションの大規模修繕で経年劣化や施工不良が原因として発生する場合もあり、放置すると建物の安全性や美観に大きな影響を及ぼします。
マンションの大規模修繕での外壁補修は重要な工事で、特にタイルについては一定周期の修繕で確認検査や補修が必要となってきます。
本記事では、マンション大規模修繕のタイル工事について、必要性や費用、注意点などを解説します。タイル浮きの具体的な修繕・補修方法や費用相場や適切なメンテナンスでマンションの価値を守るためのポイントなどを紹介しますので、ぜひご覧ください。
マンション大規模修繕におけるタイルの浮き問題とは?
マンションの外壁タイルは、美観の向上や耐久性を高めるために使用されていますが、経年劣化や環境要因によりタイルが浮く問題が発生することがあります。タイルの浮きは、特に水分の侵入や湿気の影響、温度変化によって引き起こされることが多く、放置すると外壁の剥がれや雨漏りなど、より深刻な問題につながることがあります。
浮いたタイルは、接着力が弱まっているため、強風や地震などの外的要因で剥がれるリスクが高く、住民の安全にも関わる重要な問題です。また、タイルの浮きが進行することで、外壁の断熱性や防水性も低下し、さらに建物の寿命に影響を与える可能性があります。
このような問題を解決するためには、早期発見と適切な修繕が求められます。タイルが浮いている箇所を修復し、必要に応じてタイルの再接着や交換を行うことで、安全性の確保と外壁の保護ができます。
マンションのタイルが浮く原因
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造で建てられたマンションの多くは、コンクリートの下地を整えた後、タイルや塗料などの外壁仕上げ材を貼ることで防水性を高めています。
タイルの浮きとは、タイルの表面(下地モルタル)とコンクリートの接着力が低下し、タイルが浮いてしまう状態のことです。
タイルが浮くケースには、タイルを貼り付けていたモルタルや接着剤からタイルが剥がれてしまう「陶片浮き」と呼ばれるものもあります。
そもそも、適切に施工されたマンションの外壁タイルが地震だけで落下することがあるのでしょうか。
結論から言えば、建物の挙動が大きいところでは、タイルの1枚や2枚が浮き上がったり、タイルが落下することは当然あり得ます。
しかし、大量の外壁タイルが浮き上がったり剥がれたりするケースはほとんどありません。
初回の大規模修繕前の診断調査でタイルの10~15%以上の浮きが見つかった場合、経年劣化によるものではなく、マンションの施工不良によるものかもしれません。
マンション大規模修繕でタイル浮き補修をすべき理由
マンション大規模修繕の際に、タイル浮きの補修をしなければ見た目や安全性に悪影響を及ぼします。
ここでは、タイル浮きを補修すべき主な理由を2つ紹介します。
マンション大規模修繕でタイル浮き補修をすべき理由1.安全性を確保するため
マンションのタイルの補修工事は、建物本体や周辺の安全を確保するために必要です。
外壁タイルの劣化を放置すると、剥がれやすくなります。
剥がれて落下したタイルが直接歩行者に当たるなど、命にかかわる事故が起こる可能性もあるため、自己判断ではなく、業者に見てもらいましょう。
また、ひび割れたタイルを放置しておくと、雨水が侵入しやすくなり雨漏りのリスクも高いです。
建物の耐久性を保つためにも、大規模修繕の際にはタイルの補修が必要だといえるでしょう。
マンション大規模修繕でタイル浮き補修をすべき理由2.美観を維持するため
経年劣化したタイルは剥がれたり割れたりしますが、割れたタイルをそのままにしておくと建物の美観を損ないます。
清潔感がある外観は、資産価値の維持、入居率の向上に直結する要素です。
傷んだ箇所を補修しないと入居率が下がり、家賃収入が減少することになります。
マンションタイル浮き以外にも注意すべきの不具合
タイルは耐久性に優れていますが、経年劣化は避けられません。
ここでは、タイルに起こる劣化のサインを紹介します。
マンションタイルと躯体コンクリートの亀裂
タイルは防水性・耐久性に優れた素材ですが、メンテナンスフリーの外壁ではありません。
時間の経過とともに構造体であるコンクリートは膨張と収縮を繰り返し、外壁のタイルにも影響を与え、タイルにひび割れが発生することもあります。
また、地震などの自然災害や建物の設計・施工不良により、コンクリート構造や外壁タイルにひび割れが生じることも多いです。
マンションタイル間のシーリング劣化
タイルには、一定の間隔で伸縮シーリング目地があります。
コンクリート躯体の動きや伸縮の繰り返しにより、外壁タイルに負荷がかかります。
負荷によるひび割れの原因となるため、防ぐためにシーリング材を充填し、クッション材としてタイルへの負荷を緩和しなければなりません。
シーリングは、太陽光や雨風による経年劣化で硬化・剥離し、躯体内部に雨水が浸入するため、定期的な打ち替えが必要となります。
マンションタイルのエフロレッセンス現象
エフロレッセンスとは、コンクリートの水分とアルカリ成分が溶け出す現象です。
コンクリートそのものから水分が蒸発する、コンクリートのひび割れから水分が侵入することで起こります。
エフロレッセンスが侵入すると、コンクリート内部の鉄筋が錆び、構造物の寿命を縮めます。
補修方法の種類と選び方(ピンニング・張替えなど)
マンションの大規模修繕工事では、外壁タイルの「浮き」への対応が重要な課題となります。タイル浮きの補修には主に「ピンニング工法」「張替え工法」「樹脂注入工法」の3つがあり、それぞれに特徴があります。状況に応じて最適な工法を選択することが、建物の安全性と美観を長く維持するために不可欠です。
ピンニング工法(アンカーピンニング)
ピンニング工法は、浮いているタイルを取り外さずに再固定する方法です。タイルに小さな穴を開け、そこからエポキシ樹脂を注入し、ステンレスピンなどでタイルを下地に固定します。
この工法は、既存のタイルを残せるため外観の変化が少なく、比較的低コストで短期間に施工できる点が特徴です。ただし、浮きが重度であったり、下地が劣化している場合には適用が難しくなります。小規模で軽度な浮きが対象となります。
張替え工法(部分張替え)
張替え工法は、浮いているタイルを撤去し、下地を補修したうえで新しいタイルを張り直す方法です。根本的な補修が可能で、耐久性に優れています。
この方法は広範囲の浮きや下地の劣化が進行しているケースに適しています。確実性が高い反面、施工範囲が広がることで工期と費用が増加する傾向にあり、既存タイルと新しいタイルで色や質感に差が生じる可能性があります。
樹脂注入工法(エポキシ樹脂注入)
樹脂注入工法は、タイルの隙間や目地からエポキシ樹脂を注入して再接着を行う、簡易的な補修方法です。ピンを使用せず、タイルを傷つけないため、応急的な補修として用いられることが多いです。
コストを抑えやすい一方で、再発のリスクがあり、広範囲の浮きや構造的な問題には対応できません。短期的な維持や工事前の暫定措置として選ばれることが一般的です。
工法選定の考え方
工法の選定は、浮きの範囲、下地の状態、建物の美観、そして予算や工期など、複数の要素を総合的に判断する必要があります。外壁タイルの補修は、専門業者による打診調査をもとに、適切な判断を行うことが重要です。無理に安価な工法を選ぶと、将来的に再修繕が必要になるリスクがあるため注意が必要です。
マンション大規模修繕のタイル補修費用
マンション大規模修繕のタイル補修費用を紹介します
マンション大規模修繕のタイル補修費用の目安
マンションの外壁タイル補修費用は、タイルの浮きや割れ、剥がれの状態によって大きく異なります。一般的に、1㎡あたりの補修費用は5,000円〜10,000円程度が相場となっています。ただし、補修が必要なタイルの範囲が広ければ、それに伴い費用が増加します。
費用を左右する要因とは?
外壁タイルの修繕費用は、以下の要因によって変動します。
- タイルの状態:タイルが部分的に浮いているだけなら比較的低価格で修繕可能ですが、大規模な剥がれや破損が発生している場合、費用が高くなることがあります。
- 補修方法:浮いたタイルを再接着するだけで済む場合と、全面的に取り替える場合では、必要な費用に差が出ます。
- 建物の高さと作業環境:高層ビルの場合、足場の設置費用や高所作業車の使用が必要となるため、費用が高くなることがあります。
- 使用する材料:タイルの種類や質によって、使用する材料が異なるため、選ぶ材料によっても費用に差が生じます。
- 地域差:都市部などでは、労働費や資材費が高くなる場合があり、地域によって相場が異なることもあります。
価格帯と修繕方法別の費用比較
- 部分補修(浮いたタイルの再接着)
- 費用相場:1㎡あたり5,000円〜7,000円
- 内容:タイルの浮きやひび割れが小規模な場合、既存タイルの再接着で済むため、比較的安価で修繕が可能です。
- タイル取り替え(部分的または全体の交換)
- 費用相場:1㎡あたり7,000円〜12,000円
- 内容:劣化が進んでいるタイルの交換や、広範囲にわたるタイル交換が必要な場合、より高額になります。
- フルコーティング(外壁全体の修繕)
- 費用相場:1㎡あたり10,000円〜15,000円
- 内容:タイルの補修だけでなく、外壁全体の防水処理や塗装を含む場合、フルコーティングで費用が増加します。
外壁タイルの補修費用は、建物の状態や修繕の範囲によって大きく異なります。事前にしっかりと見積もりを取り、最適な修繕方法を選ぶことが重要です。
マンション大規模修繕でのタイル補修手順
マンション大規模修繕でタイル補修をする際、どのような手順で行われるのか把握しておくと安心です。
ここでは、タイル補修の主な流れを紹介します。
打診チェック
打診チェックとは、「パルハンマー」と呼ばれる専用の棒で外壁タイルを叩いてタイルの剥がれ具合をチェックする作業です。
叩いたときに少し甲高い音がするタイルは、工事が必要になります。
タイルの補修工事を行う際には、浮いている箇所を正確に特定するために欠かせない工程です。
下地補修
タイルが緩んでいたり、広い範囲で割れていたりする場合は、破損した部分を取り除き、新しいタイルを再び張ります。
タイルを剥がすと接着力が弱まるため、モルタルを塗って下地を整えます。
タイル補修
タイルの補修には、新しいタイルに貼り替える工法と、接着剤を注入する工法があります。
軽微な劣化は、注入工法で補修することが一般的です。
入れ替え工法の場合、既存のタイルに近いものを用意する必要があるため、タイルの準備に時間がかかる場合があります。
また、既存タイルが廃盤の場合、特注で製作してもらうことが多く、4ヶ月程度かかるでしょう。
そのため、補修をする場合は、すぐに施工業者にタイルの発注を依頼する必要があります。
目地補修
接着剤注入とタイル工事が完了したら、目地にモルタルやシーリング材などの充填材を充填して補修します。
「目地」とは、タイルとタイルの継ぎ目のことです。
建物やタイルのクッション材としての役割のほか、建物への水の浸入を防ぐ役割もあります。
また、目地はひび割れや収縮などの経年劣化を起こすため、適切な補修が必要です。
マンション大規模修繕ではタイル浮き補修も検討
大規模修繕の一環として行われるタイル補修工事は、建物の機能性・耐久性・美観を維持するために欠かせない工事です。
外壁タイルの劣化が進むと、浮きや剥がれが生じ、落下事故や建物の資産価値の低下につながります。
劣化を見落とさないよう、適切な時期に施工業者に調査を依頼するようにしましょう。
マンション大規模修繕でのタイル浮き補修についてまとめ
今回はマンションの大規模修繕におけるタイル浮きの補修について解説しました。
マンションは年数とともに劣化おき、特に外壁タイルについては劣化が進むと剥がれなどが起きやすくなり、落下事故なども増えているために、早急な対処が必要です。
また、初回の大規模修繕前の診断調査でタイルの10~15%以上の浮きが見つかった場合、マンションの施工不良をの可能性があるため、施工会社へ連絡を取りましょう。
そのほかにも美観の維持や入居率にも関わってくるので早急に対処を行いましょう
大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)