マンション大規模修繕ではどこまで工事をする?具体的な工事範囲と費用相場 | 株式会社新東亜工業  

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マンション大規模修繕ではどこまで工事をする?具体的な工事範囲と費用相場

マンション大規模修繕とは、経年劣化や自然環境などにより発生した傷みを修繕し、現代に適した住環境に合わせて性能を向上させる工事です。

工事の範囲は、建物本体だけではなく、敷地内に設置されている設備も含めたマンション全体となります。

建物外、建物内、金物、設備関連など、具体的な工事内容を把握したい方も多いでしょう。

そこで、マンション大規模修繕では、どこまで工事をすべきなのか、具体的な工事範囲を紹介します。

マンション大規模修繕の必要性

マンションは目立つ傷みがないように見えると、「本当に修繕が必要なのか」と疑問を持つ方もいます。

大規模修繕には、見た目を変化させる、資産価値を上げるなどの重要な役割があります。

まずは、大規模修繕の必要性を解説します。

見えない箇所も劣化している

マンションや戸建住宅は建築基準法に基づいて建てられているため、最低限の防水性や耐震性など、建物を健全に保つために必要な設備や性能が備わっています。

しかし、どれほど高性能な材料を使用しても、経年劣化により各機能は徐々に失われていきます。

雨風、直射日光に直接さらされる屋上、外壁は、想像以上に劣化していることが多いです。

また、一般的に建物のコンクリート内部に鉄筋が埋め込まれています。

コンクリートがひび割れたり、表面の瓦が剥がれたり、屋根の防水効果が低下して水や空気が建物内部に侵入すると、建物内部の鉄筋が錆びる恐れがあります。

内部劣化を防ぐためには、軽微な劣化の発見と補修が欠かせません。

大規模修繕では、劣化したコンクリートの補修や防水機能の改善など、建物の躯体を守るための重要な工事が行われます。

資産価値を保つためにも必須

建物の価値は、一般的に時間の経過とともに低下します。

しかし、適切な大規模修繕を実施した建物と工事をしていない建物とでは、将来的に外観や快適性に大きな差が出ます。

当然、資産価値にもダイレクトに反映されるのです。

適切な大規模修繕は、快適性を向上させ、将来の資産価値を維持できます。

また、建材や設備は進化しています。

竣工時や過去の修繕時にはなかった高性能な素材を使用することで、快適性を向上させたり、新たな機能を付加したりすることも可能です。

セキュリティシステム、バリアフリーの充実など、時代に合わせて設備を変えることも価値形成のポイントです。

大規模修繕には、新たな機能の付加工事も含まれることがあり、併せて検討されるケースが増えています。

マンション大規模修繕工事の周期

マンション大規模修繕の必要性は理解したものの、どのタイミングで実施すべきか悩む方も多いでしょう。

ここでは、修繕周期や建物を調査するのに適したタイミングを紹介します。

大規模修繕の周期

基本的には、建物の状態を十分に把握し、必要なタイミングで必要な工事を行う必要があります。

国土交通省が発表しているガイドラインに規定されている「12~15年」を目安にすることが多いです。

また、多くの建材の保証期間は10年程度に設定されており、保証期間が満了した時点で大規模修繕工事を検討するマンションもあります。

近年は、高耐久建材や高性能塗料が多く開発されており、次の大規模修繕までの期間を15年から18年程度延長することが可能です。

大規模修繕を見据えて、建築時から高性能な材料を使用する建物も増えてきており、将来的には現在よりも長い間隔で大規模修繕を行うことが可能になるかもしれません。

ただし、ガイドラインはあくまで目安です。

不具合や損傷を発見した場合には、標準的な周期よりも早いタイミングであっても大規模修繕を検討する必要があります。

建物調査診断のタイミング

大規模修繕を検討する場合、最初に行うべきは建物の点検・診断です。

外観からは見えない欠陥や劣化を特定するための重要な調査であり、結果をもとに建物の劣化状況を調査し、どのような修繕が必要かを判断します。

また、劣化の程度を把握することで、正確な工事費の見積もりも可能です。

建物ごとに大規模修繕の予算は異なるため、予想以上の見積もり額になってしまうこともあります。

予算をオーバーする場合は、修繕計画を見直したうえで緊急性の高い箇所のみを修繕し、残りは必要なタイミングで修繕することも可能です。

現在、建物の点検・診断は、大規模修繕の事前準備やプロセスの一環として行われることが多いですが、本来は大規模修繕の規模や時期を見極めるために行うべきものです。

マンション大規模修繕はどこまで工事する?

マンション大規模修繕では、建物のどこを工事するのか、どこまで修繕するのか把握し、予算や計画を立てる必要あがります。

そこで、大規模修繕はどこまで工事すべきか、工事内容や工事箇所を解説します。

マンション外工事

大規模修繕では、「躯体」、「屋根(屋上)」、「外壁」、「外構」など、主に建物外部の修繕・補修工事を行います。

工事は業者に委託することになりますが、管理組合では建物外部でどのような工事が行われるのかをある程度把握したうえで、予算を含めた修繕計画を立てましょう。

マンション内工事

マンションの外観と同様、内部も経年劣化は避けられません。

大規模修繕工事では、共用部分の廊下や階段、各戸の専有部分であるバルコニーやベランダの床や天井の防水・塗装を実施します。

マンション設備

マンションの設備といえば、「ガス設備」「電気設備」「給水設備」「下水(排水)設備」「テレビ受信設備」などが日常生活に欠かせない設備です。

また、エレベーターや消火設備も今やマンションには欠かせない設備といえます。

防火対策設備については点検を行い、その他設備は新しいものに交換すること、給排水管については修繕を検討しましょう。

マンション外工事の項目

マンションなどの建物の外装は、紫外線や雨風、季節による気温の変化など、気候の影響を受け続けます。

そのため、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の頑丈な建物であっても経年劣化や傷みは避けられず、特に外観にその症状が顕著に現れます。

マンションの外観はどのような工事が行われるのか、それぞれ確認しておきましょう。

マンション躯体

大規模修繕工事のなかでも、建物の躯体に関わる部分の修繕工事は重要です。

躯体とは建物の柱、壁、梁部分を指し、コンクリートの補修や修繕などの工事を行います。

屋根や屋上の防水工事

マンションの屋上は、経年劣化しやすい箇所です。

主に屋上防水材や劣化したアスファルトシングル屋根材の防水工事を行います。

防水工事は雨漏りを防ぐために必要であり、雨漏り防止や漏水による建物の劣化を防ぐために重要です。

床面に直接防水処理をする工事、マットを敷いた上に施工する工事など、いくつかの工法があるため状況や場所、予算に適した方法を選択します。

外壁補修

大規模修繕では、マンションの顔である外壁も重要な施工箇所です。

補修によって美観が回復し、資産価値が高まるというメリットもあります。

外壁補修は塗装のほか、張り替えや重ね張り、劣化部分の除去を行います。

外壁タイル補修

外壁のタイルの傷み具合によっては、部分的な補修では足りず、タイル製品の作り直しが必要になることもあります。

剝がれたタイルの落下により事故が起こる、タイルが浮いた箇所から雨漏りする可能性があるため、必ずタイル補修を検討しましょう。

塗装工事

大規模修繕工事で欠かせないのが、外壁や防水などの塗装工事です。

塗装工事に関しては、使用する塗料によって耐用年数や単価が異なるため、塗料選びは慎重に検討する必要があります。

マンション内工事の項目

建物内の工事は、居住者が日常生活を送っている間に行わなければならないため、事前の周知徹底が重要です。

建物内の工事内容、手順、注意点などを紹介します。

天井(軒天)

大規模修繕の場合、天井も工事範囲に含まれます。

天井は「軒天」と呼ばれ、階段、開放廊下、バルコニーの天井を指します。

天井の劣化により雨漏りを起こすため、張り替え工事や塗装など補修工事が必要です。

床工事

大規模修繕における「床」とは、マンションの開放廊下や階段、バルコニーなどの床を指し、主に防水工事を実施します。

経年劣化や紫外線の影響で劣化している場合、防水工事を行うことが一般的です。

シートを貼る工法が主流で、見た目を良くする、滑り止め、防水などの効果が期待できます。

階段

階段は共用部分となるため、大規模修繕工事の対象です。

マンションの階段は、コンクリートの乾燥や劣化によるひび割れ、収縮を起こします。

コンクリートの劣化から浸水し、躯体を劣化させるため、修繕工事が必要です。

階段を使用できないと居住者の生活に影響を及ぼすことから、工事日程は早めに共有しと駅ましょう。

ベランダ・バルコニー

大規模修繕の場合は、各戸のバルコニー床の防水工事を行います。

その際、私物はすべて撤去しなければなりません。

事前に注意事項や工事の流れを住民に共有して協力を仰ぎ、スムーズに工事を進めましょう。

玄関ドア

玄関ドアの大規模修繕工事に関しては、ドアの内側と外側で所有権が異なります。

大規模修繕では、ドアの塗装の除去や再塗装、ゴム部分の調整など、経年劣化した箇所の工事を行いましょう。

ドアの修繕は工事内容で費用に大きな差が生じるため、予算に合わせて決めることが大切です。

外部金物

外部金物は、「鉄部」と呼ばれます。

例えば、鉄部階段、エレベーターの扉、非常階段扉、フェンスなどです。

大規模修繕では、サビなど経年劣化した部分の塗装工事を行います。

サビを放置すると美観を損ね、空室率が高くなる、資産価値が低下するなどのデメリットがあるため、塗装工事が必要です

外部金具

外部金物とは、建具や金具のことで、大規模修繕の際に塗装や交換を行います。

代表的なものは玄関ドアですが、その他にも手摺や掲示板など、マンション内の様々な場所に取り付けられています。

不具合があれば金具を交換し、サビの発生、塗装の剥がれがあれば塗装工事を行いましょう。

マンション設備工事の項目

建物と同じように、経年劣化により補修・交換が必要な設備です。

設備関係の修繕・交換の目安も確認し、大規模修繕工事の計画を立てましょう。

エレベーター

エレベーターは点検が義務付けられており、耐用年数満了時にはリニューアル工事を行わなければなりません。

耐用年数のタイミングを踏まえて、大規模修繕の計画を立てましょう。

消火設備

マンションなどの共同住宅で特に注意したいのは、火災による事故です。

マンションには万が一の火災に備え、さまざまな消火設備が設置されています。

消防法や建築基準法に基づいて、付属品の調整や検査、取付工事を行うことが一般的です。

電気設備

マンションには、電気、給水、汚水、ガス、テレビなど様々な設備があります。

例えば、電気設備は照明の交換や電力幹線の改修が挙げられ、内部受電設備や屋内・屋外共有灯

は約15年でメンテナンスをしなければなりません。

しかし、設備ごとに耐用年数は細かく異なるため注意が必要です。

各設備の耐用年数をすべて確認し、大規模修繕で工事をすべき箇所を判断しましょう。

受信設備

マンションのテレビ受信設備は、テレビ共聴設備と呼びます。

テレビ共聴設備にも寿命があり、年数によっては買い替えが必要です。

給水管や排水管

各住戸に存在する給水管は点検が困難ですが、劣化すれば漏水につながります。

耐用年数は材質によって異なり、10~35年と幅があります。

耐用年数は平均20年のため、2回目以降のマンション大規模修繕工事では、給水管の修繕や交換を検討しましょう。

排水管の耐用年数も同様であり、2回目以降の修繕工事で交換や補修を検討する必要があります。

給水設備

給水設備は、日常生活に欠かせない設備です。

マンションには貯水槽方式と水道直結方式2種類があり、いずれも劣化により水漏れや水の出が悪くなるなどのトラブルが起こります。

給水管は約15年周期を目安に、交換や修繕を検討しましょう。

汚水(排水)設備

汚水(排水)設備は、使用済みの水を外部に排出する役割を担っています。

排水管は経年劣化により詰まりを起こし、水漏れや悪臭が発生することが多いです。

劣化診断をしたうえで、新しい排水設備に交換する、もしくは既存の設備を回収する工事を行います。

ガス設備

ガス給湯器やガス漏れ警報装置は、約4年に1度の点検を実施しています。

大規模修繕の際にも点検を行い、不具合があれば修理や交換を行いましょう。

また、マンション敷地内にあるガス管の交換を行うこともあります。

なお、ガスメーターはガス事業者の所有物であり、マンションの大規模修繕では工事を行いません。

マンション大規模修繕工事の総額

実際の総工費は、1,000万円~3,000万円程度です。

戸数や規模によっては3,000万円を超えることも少なくありません。

国土交通省の調査によると、1戸当たりの修繕費の割合が最も高かったのは「100万円~125万円」、次いで「75万円~100万円」、「125万円~150万円」でした。

金額はあくまで目安ですが、大規模修繕工事を計画する際の参考にしましょう。

費用が不足した際の対処法

マンションの大規模修繕にかかる費用は、修繕積立金から支払われます。

しかし、修繕積立金が不足していると、追加費用が発生する場合があります。

例えば、以下のような状況や追加工事で費用が不足することが多いです。

  • 長期修繕計画に漏れがあった
  • エレベーター、機械式駐車場の更新が必要
  • 予想以上に劣化が進んでいる
  • 配水設備の更新

1度に100万円を超える追加修繕費が必要になるケースも少なくありません。

急な出費に焦らないよう、長期的な修繕計画をしっかり把握しておくことが大切です。

マンション大規模修繕でどこまで工事をすべきか検討しよう

コンクリート造のマンションは、適切な工事を実施すれば寿命を延ばせます。

資産価値と住民の快適で安全な暮らしを守るためには、大規模修繕を人任せにせず、居住者一人ひとりが主体的に取り組むことが大切です。

大規模修繕の方向性は、専門家の意見も含め、複数の意見をふまえて決めましょう。

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