2024.04.19
屋上の大規模修繕で雨漏りを防ぐ!マンション屋上防水の種類や費用相場を紹介
築年数が経過しているマンションにおいて、欠かせないのが「大規模修繕工事」です。
大規模修繕工事は、建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持するために、定期的に行われる重要な工事です。
その中でも、特に屋上防水工事は、建物の寿命にも大きく影響する工事の1つになるのですが、実際に大規模修繕を行う際に、「屋上防水工事は必ず必要なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、マンションの「安心・安全」を守るために、大規模修繕における屋上防水工事の重要性について詳しく解説します。
大規模修繕で屋上に防水工事が必要な理由は?
マンションやビルの屋上は、紫外線や風雨、雨水などの過酷な環境に常にさらされています。
そのため、経年劣化によって防水性能が低下し、雨漏りや建物の劣化につながる可能性があります。
大規模修繕において屋上防水工事が必須である理由は、主に以下の3つです。
- 雨漏りによる建物の劣化を防ぐ
- 建物の資産価値を守る
- 住環境を快適に保つ
これらの理由から、大規模修繕においては、建物の「安心・安全」と「資産価値の維持」、そして「快適な住環境の保持」のために、屋上防水工事は必須と言えます。
屋上防水をしなかった場合の漏水トラブルについて
屋上は、雨水や風雪などの過酷な環境にさらされるため、適切な防水工事が必要不可欠です。
しかし、防水工事を怠ったり、時期を逃したりすると、以下のような漏水トラブルが発生する可能性があります。
ここでは、屋上防水をしなかった場合に起こりうる具体的なリスクと被害について解説します。
電気設備の故障・停電
電気設備は水濡れ対して非常に弱いため、漏水によって重大な被害を受ける可能性があります。
以下は、漏水による電気設備の具体的な影響です。
- コンセントやスイッチのショート
- ブレーカーの誤作動
- 電気配線の損傷
- 電気機器の故障
- 停電
上記以外にも、漏電による電気料金の大幅増加や、建物の価値の低下、感電した場合の健康被害などの可能性が挙げられます。
躯体の劣化を早める
漏水は、建物の躯体部分に深刻な被害をもたらします。
漏水が鉄筋コンクリートなどの躯体に達すると、鉄筋が錆び、コンクリートが腐食する可能性が高いです。
鉄筋コンクリートは、鉄筋とコンクリートが互いに支え合うことで強度を保っています。
しかし、錆びや腐食によって鉄筋が弱くなると、コンクリートがひび割れたり崩れたりして、建物の強度が大きく低下してしまうのです。
また、冬場に漏水が凍結すると、体積が膨張してコンクリートを破損させる恐れがあります。
さらに、春になって凍結した水が解けると、コンクリート内部に空洞が生じ、強度が低下してしまいます。
雨漏り
雨漏りは、建物の構造体や躯体を劣化させ、建物の強度を低下させるだけでなく、カビやダニの発生、電気系統の故障、内装材の損傷などの問題を引き起こします。
雨漏りによる建物の損傷や住環境の悪化を修復するには、多額の費用がかかるでしょう。
場合によっては、建物の解体が必要になることもあります。
また、雨漏りがあると、建物の資産価値が大きく低下します。
特に、大規模修繕時期を迎えたマンションの場合、購入を検討する買主は、建物の状態を詳細に調査するため、雨漏りの痕跡があれば、大幅な減額を要求される可能性が高いです。
大規模修繕工事時の屋上防水の種類
屋上防水には、主に以下の4種類があります。
屋上防水の種類 | 費用相場 | 耐用年数 |
---|---|---|
ウレタン防水 | 約4,000〜7,000円/㎡ | 8年〜12年 |
シート防水 | 約2,500〜7,500円/㎡ | 10年〜15年 |
アスファルト防水 | 約5,000〜8,000円/㎡ | 15年〜25年 |
FRP防水 | 約5,500〜8,500円/㎡ | 10年〜15年 |
それぞれの特徴、メリット・デメリットについて解説します。
ウレタン防水
屋上防水の主流であるウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗り広げることで、防水層を形成する工法です。
ウレタン防水の工法には、主に密着工法と通気緩衝工法の2種類があります。
密着工法は、下地の上にウレタン防水材を塗り、補強材を貼り付けてさらにウレタン防水材を塗り重ねることで、厚みのある防水層を形成する工法です。
屋上の形状に左右されず施工可能で、継ぎ目のない美しい仕上がりになります。
ただし、職人の技術により防水層の厚さに差が出ることがあります。
通気緩衝工法は、通気緩衝シートを敷設し、その上にウレタン防水材を塗布する工法です。
膨れを防ぎ、ひび割れがあっても綺麗に仕上がります。
ただし、密着工法よりも費用がかかります
どちらの工法を選ぶべきかは、建物の状態や予算などを考慮して決めましょう。
シート防水
シート防水は、塩化ビニールシートやゴム製シートを貼り付けることで防水層を形成する工法です。
シート防水には、主に接着工法と機械的固定工法の2種類があります。
接着工法は、専用の接着剤で防水シートを貼り付ける工法です。
比較的施工費用が安価で、施工が簡単です。
ただし、通気性が低く、雨漏りしている箇所には施工できません。
機械的固定工法は、専用の機械でシートを固定する工法です。
通気性があり、雨漏りしている箇所にも施工可能です。
ただし、接着工法よりも費用がかかり、施工が難しいため職人の技術力によって仕上がりに差が出ます。
アスファルト防水
アスファルト防水は、古くから用いられてきた伝統的な防水工法です。
アスファルトルーフィングシートと液状化したアスファルトを重ね敷き、強固な防水層を形成します。
アスファルト防水には、主に常温工法、熱工法、トーチ工法と、3つの工法があります。
常温工法は、熱を使わずに施工できるため、安全性が高く、近隣への影響も少ないのが特徴です。
独特な臭いが発生しないため、作業環境も良好で、近年では環境への配慮から採用されるケースが増えています。
熱工法は、溶融したアスファルトとアスファルトルーフィングシートを塗り重ねる工法です。
他の工法と比べて耐久性に優れ、施工時間も短縮できます。
ただし、施工中に強い臭いと煙が発生するため、換気を十分に行う必要があります。
トーチ工法は、トーチバーナーと呼ばれるバーナーでシートを炙りながら施工する工法です。
熱工法と比べて臭いと煙が少なく、環境への負荷を抑えられるため、近年では人気が高まっている工法です。
FRP防水
FRP防水は、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)を屋上に塗り広げることで防水層を形成する工法です。
近年、その優れた性能から注目を集めており、多くの屋上防水で採用されています。
FRP防水は、紫外線や風雨に強く、長期間にわたって防水性能を維持できます。
また、他の防水工法と比べて重量が軽いため、建物の負担を軽減できる点がメリットです。
一方、建物の揺れによってひび割れが発生する可能性がある、施工時に特有の臭いが発生するため、換気を十分に行う必要があるなどのデメリットもあります。
大規模修善での屋上防水の選び方
屋上防水は、防水工法の種類が多く、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、最適な工法を選ぶのは難しいと感じるかもしれません。
そこで、ここでは屋上防水の選び方について、5つのポイントに分けて解説します。
建物の構造
屋上防水を選ぶ際には、建物の構造を考慮することが非常に重要です。
建物の構造によって、適した工法や材料が変わってきます。
例えば、鉄筋コンクリート造は強度と耐久性に優れており、建物の動きが少ないため、ウレタン防水やFRP防水などがおすすめです。
鉄骨造や木造は、軽量で施工がしやすく、建物の動きが大きいため、ウレタン防水やシート防水が適しています。
アスファルト防水は、防水層の重量が重いため、木造建築には不向きです。
また、屋上緑化を検討している場合は、防水層の重量や透水性を考慮する必要があります。
さらに、積雪量が多い地域の場合は、雪の重みに耐えられる強度のある防水層が必要です。
屋上の形状
屋上防水を選ぶ際には、屋上の形状を考慮することが重要です。
屋上形状によって適した工法や、注意すべきポイントが異なります。
平らな形状の屋上は最も一般的な形状で、施工がしやすいため、適している工法は、ウレタン防水、シート防水、FRP防水です。
ただし、水勾配が十分でない場合、雨水が溜まりやすく、防水層の劣化を早める可能性があります。
次に、複雑な形状の屋上には、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水トーチ工法がおすすめです。
継ぎ目が多い屋上は、防水性能が低下しやすいため、施工業者選びが重要になります。
予算
屋上防水の費用は、採用する工法、施工面積、防水層の状態によって大きく異なります。
比較的安価な工法は、シート防水、アスファルト防水です。
また、業者によって費用が異なるため、複数の業者から見積もりを取って比較することが重要です。
耐久性
屋上防水を選ぶ際に耐久性を重視したい場合は、以下の点に注目しましょう。
ウレタン防水は、ウレタン樹脂の種類や配合率によって、耐久性が異なります。
一般的には、二液型ウレタン樹脂よりも、一液型ウレタン樹脂の方が耐久性に優れているようです。
FRP防水は、ガラス繊維の種類や厚みによって、耐久性が異なり、ガラス繊維の量が多いほど、耐久性に優れているようです。
シート防水は、シートの種類や厚みによって、耐久性が異なりますが、一般的には、塩化ビニールシートよりも、塩ビシートの方が耐久性に優れています。
アスファルト防水は、アスファルトの種類や厚みによって、耐久性が異なり、改質アスファルトよりも、未改質アスファルトの方が耐久性に優れているようです。
施工性
屋上防水を選ぶ際には、施工性も重要なポイントの1つです。
施工性が良い工法は、工期が短く、費用を抑えることができます。
また、職人の技量に左右されにくいというメリットもあります。
ウレタン防水、シート防水、FRP防水は比較的施工性が良いと言えるでしょう。
ただし、アスファルト防水は、熱で溶かして施工するため、臭いが発生したり、火災のリスクがあったりと、施工が難しいというデメリットがあります。
大規模修繕での屋上防水のポイント
大規模修繕時に検討される屋上防水は、建物の寿命にも影響を与える重要な工事です。
適切な工法を選択し、施工を行うことで、建物の美観性と機能性を長期間維持できます。
ここでは、大規模修繕における屋上防水のポイントについて解説します。
完了検査での目視チェック
近年では悪徳業者による施工不良も目立ち始めており、完了検査をしっかりと行うことが重要になっています。
特に重要なチェックポイントは、「防水層のひび割れ」です。
素人が細かい仕様や施工状況を判断するのは難しいですが、ひび割れは目視で確認できます。
ひび割れを見逃してしまうと、雨漏りによる建物の損傷や、再発工事の必要性、さらには他の修繕工事まで発生する可能性があります。
完了検査では、隅々までしっかりと目視チェックを行いましょう。
保証やアフターフォローがあるか確認する
大規模修繕で屋上防水を依頼する際には、工事の保証などのアフターフォローも重要なチェックポイントです。
保証がなければ、万が一施工不良による雨漏りが発生した場合、高額な費用負担を伴う再施工が必要になる可能性があります。
しかし、多くの施工業者は保証期間を設定しており、保証期間内に雨漏りが発生した場合は無償で再施工してくれるのが一般的です。
ただし、業者によって保証期間や内容が異なるため、契約前に必ず確認する必要があります。
実績が豊富で対応が丁寧な業者に依頼する
信頼できる業者を選ぶことは、屋上防水工事における最重要ポイントです。
適切な施工をしてくれる業者を選ぶことで、雨漏りなどの被害を防ぎ、建物の寿命を延ばすことができます。
信頼できる業者を見つけるには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 施工実績:過去に大規模修繕で屋上防水を施工した実績があるかどうか確認する
- 業者の資本金:資本金が豊富な会社は、財務的に安定しており、アフターフォローも充実している傾向がある
- 担当者の対応:迅速かつ丁寧に対応してくれる業者は信頼できる
- 業者の得意分野:特定の物件種に特化している業者は、専門知識と経験が豊富で、より安心な施工が期待できる
また、信頼できる管理会社に大規模修繕を依頼した場合でも、必ず紹介された業者について調べることをおすすめします。
利害関係のある業者が提案されるケースもあるため、必ずしも信頼できる業者を紹介してくれるとは限らないからです。
信頼できる業者を選ぶことで、雨漏りなどのトラブルを防ぎ、安心して暮らせる住環境を守ることができます。
マンション大規模修繕での補助金や助成金の種類と条件を紹介
マンションの大規模修繕には多額の費用がかかりますが、国や地方自治体からの補助金を利用することで、経済的負担を軽減することができます。ここでは、主要な補助金の種類とそれぞれの条件について詳しく解説します。
以下の表にまず簡単にまとめました。
補助金の種類 | 条件 | 対象工事例 |
---|---|---|
省エネ改修補助金 | 断熱材の追加や省エネルギー設備の導入を行うこと 一定のエネルギー効率改善が見込まれること | 断熱材の追加、高効率給湯器の設置 LED照明への交換 |
耐震改修補助金 | 建物の耐震性を向上させる工事を行うこと 耐震診断の結果に基づいた改修であること | 耐震補強工事、柱や梁の補強 |
バリアフリー改修補助金 | 高齢者や障害者のためのバリアフリー化を行うこと 公共性が認められること | スロープの設置、エレベーターの設置 手すりの設置 |
それぞれの内容を詳しく解説します。
省エネ改修補助金
まず、省エネ改修補助金についてです。この補助金は、建物の断熱性能を向上させたり、省エネルギー設備を導入したりする場合に支給されます。具体的には、断熱材の追加や高効率給湯器の設置、LED照明への交換などが対象となります。この補助金を受けるための条件として、断熱材の追加や省エネルギー設備の導入を行うことが求められ、さらに一定のエネルギー効率改善が見込まれることが必要です。
※参考資料:国土交通省マンションの省エネ改修事例・支援制度
耐震改修補助金
次に、耐震改修補助金があります。この補助金は、建物の耐震性を向上させるための工事に対して支給されます。対象となる工事には、耐震補強工事や柱や梁の補強などがあります。補助金を受けるためには、耐震診断の結果に基づいた改修であることが条件となります。これは、建物の耐震性を確保し、住民の安全を守るために非常に重要です。
バリアフリー改修補助金
最後に、バリアフリー改修補助金です。この補助金は、高齢者や障害者のためにバリアフリー化を行う場合に支給されます。対象となる工事には、スロープの設置、エレベーターの設置、手すりの設置などが含まれます。この補助金を受けるための条件としては、高齢者や障害者のためのバリアフリー化を行うこと、そして公共性が認められることが必要です。バリアフリー化は、高齢者や障害者が安全に快適に暮らせる環境を整えるために重要です。
以上のように、マンション大規模修繕に対する補助金にはさまざまな種類があり、それぞれに特有の条件があります。適切な補助金を選び、条件に合った工事を行うことで、補助金を有効に活用することができます。
大規模修善工事でのよくある質問
ここでは大規模修繕工事でよくある質問を紹介します。工事費用や施行中の疑問をまとめました。
Q
大規模修繕で10戸のマンションではどのくらいが費用目安?
A
A: 10戸のマンションの大規模修繕の費用は、規模や建物の状態、修繕内容によって異なりますが、一般的には1000万円から1,500万円程度が目安とされています。具体的な費用は、外壁や共用部分の修繕内容、使用する材料の種類によって変動するため、詳細な見積もりを施工業者で確認しましょう
Q
マンション大規模修繕時にエアコンは使用できる?室外機はどうする?
A
大規模修繕中でも基本的にはエアコンの使用は可能ですが、外壁塗装や防水工事の際には一時的に使用を控える必要がある場合があります。室外機は、作業に支障がない限りそのまま設置された状態で保たれることが一般的です。ただし、工事の進捗によっては室外機を一時的に移動させる場合もあるため、管理組合や施工業者からの指示に従ってください。
Q
マンション大規模修繕の際のベランダの荷物やアンテナはどうすればいい?
A
大規模修繕の際には、ベランダの荷物は一時的に室内に移動させる必要があります。特に、外壁塗装や防水工事の影響を受けやすいものは、工事開始前に片付けてください。また、テレビアンテナや物干し竿も取り外しが必要になる場合がありますので、事前に管理組合や施工業者の指示に従い、適切に対応してください。
Q
大規模修繕の際に洗濯物は外に干せる?
A
大規模修繕期間中は、外壁工事や塗装の影響でベランダに洗濯物を干すことが制限されることがあります。工事用のネットやシートが張られるため、日光が遮られたり、塗料やホコリが付着する可能性があります。管理組合や施工業者からの案内に従い、洗濯物は室内で乾かすか、コインランドリーの利用を検討してください。
Q
大規模修繕の際に立ち会いや在宅が必要なことはある?
A
大規模修繕では、住戸内に立ち入る必要のある作業が発生する場合があります。例えば、配管の点検やベランダ側のサッシ工事などが該当します。その際には、居住者の立ち会いや在宅を求められることがあるため、事前に管理組合や施工業者からの連絡を確認し、予定を調整してください。それ以外の工事については基本的に在宅の必要はありませんが、作業内容によって異なるため、詳細は管理組合の案内を確認することが重要です。
この他、大規模修繕のよくある質問について知りたい方は以下の記事をご覧ください
大規模修繕における屋上防水工事についてまとめ
ここまで、大規模修繕における屋上防水工事について解説してきました。
この記事の要点は、以下の通りです。
- 大規模修繕で屋上防水工事が必要な理由:雨漏りによる建物の劣化を防ぐ、建物の資産価値を守る、住環境を快適に保つ
- 屋上防水をしなかった場合の漏水トラブル:電気設備の故障・停電、躯体の劣化を早める、雨漏り
- 屋上防水の種類:ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水
- 屋上防水の選び方:建物の構造、屋上の形状、予算、耐久性、施工性
- 大規模修繕での屋上防水のポイント:完了検査での目視チェック、保証やアフターフォロー、実績が豊富で対応が丁寧な業者に依頼する
大規模修繕における屋上防水工事は、建物の寿命にも影響を与える重要な工事です。
適切な工法を選択し、施工を行うことで、建物の美観性と機能性を長期間維持できます。
工事前にしっかりと業者選びを行い、保証やアフターフォローの内容を確認しておきましょう。