2024.09.12
防水改修工事で建材を防腐する方法とは?大規模修繕における防水工事の関係と種類について解説
建物の防水層が劣化すると雨水の侵入により腐敗が進み、構造そのものに深刻な影響を与えることがあります。
こうしたリスクを防ぐために、防水工事や改修による防腐対策が必要ですが、その種類はシート防水やアスファルト防水、ウレタン塗膜防水などがあり、多様な防水工法の中から適切な工法を選定することで、建物を長く守ることが可能になります。
本記事では、防水工事の種類や費用相場、防水層撤去の必要性、メリット・デメリット、防腐などのリスクを最小限に抑える改修工法について詳しく解説します。
建物の美観や機能性、資産価値を維持するための防水工事を検討されている方は、参考としてぜひ最後までご覧ください。
建物の劣化と防水工事の関係
建物は雨風や紫外線をはじめ、温度変化・大気汚染物質などの外的要因にさらされています。そのため、徐々に劣化が進んでしまいます。
これらの外的要因は、建物へ以下のように様々な悪影響を及ぼしています。
- 雨水の浸入:構造材の腐食やカビの発生
- 紫外線:塗装の劣化や素材の変色
- 温度変化:熱膨張と収縮によるひび割れ
- 大気汚染物質:外壁の変色や金属部分の腐食
- 振動:構造のゆがみや結合部のゆるみ
特に、ひび割れや腐食は建物の構造を弱体化させ、雨漏り・シロアリ被害・建物倒壊のリスクなど深刻な問題を引き起こす可能性があります。
そのため、建物の寿命を延ばすためには、これらの劣化要因から建物を守る防水工事と防腐処理が非常に重要といえます。
防水工事と防腐:建材を守るための重要な関係性
防水工事と防腐処理は、建物の長寿命化に欠かせない二大要素です。
防水工事は屋根・外壁・ベランダなどから、雨水が建物内部に浸入するのを防ぐ役割があります。また、建材が持つ水分含有量を適切に保ち、結露の発生を抑制する働きもあります。
一方で防腐処理は、金属や木材などの建材を腐食から守る役割があります。カビや菌類などの微生物の繁殖を抑えて、建材の強度と耐久性を維持しているのです。
これら2つの処理は密接に関係しており、相乗効果を発揮するのが特徴です。
適切な防水工事を行うことで、建材が水にさらされるのを防ぎ、防腐効果を高めることができます。同時に、効果的な防腐処理は建材の耐水性を向上させ、防水性能を補完します。
防水工事による建材防腐の重要性
水が建物内部に浸入すると、以下のような建材の劣化を引き起こします。
木材の劣化
- 水分吸収による腐朽菌の繁殖
- 木材の強度低下
- 寸法変化(膨張・収縮)によるひび割れ
金属の劣化
- 錆の発生
- 強度の低下
- 外観の損傷
コンクリートの劣化
- 中性化の進行
- 鉄筋の腐食
- コンクリート構造物の強度低下
これらの劣化は、建物の寿命を縮めるだけでなく、構造的安全性の低下・エネルギー効率の悪化・美観の損失・健康被害などなの問題を引き起こす可能性があります。また、建材の腐食は大掛かりな工事を必要とするケースが多いため、修繕費用の増大にもつながりかねません。
このように、防水工事は、これらの劣化要因から建材を保護し、建物の寿命を延ばすために非常に重要な役割を担っています。
代表的な防水工事と防腐処理
建物の劣化を防ぐために欠かせない防水工事と防腐処理ですが、具体的にはどのような工法があるのでしょうか。以下では、それぞれの代表的な工法を紹介します。
防水工事の主な工法
防水工事では、ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水・塗膜防水・簡易防水などの工法が用いられています。以下ではそれぞれの工法について、特徴や耐用年数などをまとめました。
工法 | 特徴 | 適用箇所 | 耐用年数 |
ウレタン防水 | 柔軟性が高い ひび割れに強い | 屋上・ベランダ | 10〜15年 |
シート防水 | 施工が速い 均一な厚みが得られる | 屋上・地下 | 15〜20年 |
アスファルト防水 | 高い耐久性と防水性 | 屋上・地下 | 20〜30年 |
塗膜防水 | 複雑な形状にも対応可能 | 外壁・ベランダ | 5〜10年 |
簡易防水 | 低コストで手軽 | 小規模な補修 | 3〜5年 |
防腐処理の主な方法
防腐処理には、以下のような方法があります。
薬剤処理 | 木材に防腐剤を注入 腐朽菌やシロアリから木材を保護 効果が長期間持続 |
塗装 | 木材や金属の表面に防腐効果のある塗料を塗布 UV保護や美観の向上も兼ねる 定期的な再塗装が必要 |
熱処理 | 高温で木材を処理し、耐久性を向上 化学物質を使用しないエコな方法 木材の色が濃くなる特徴がある |
金属の表面処理 | 電気めっき・溶融めっき・陽極酸化処理など 金属表面に保護層を形成 耐食性と美観を向上 |
コンクリートの表面含浸工法 | シラン系やけい酸塩系の含浸材を使用 コンクリートの空隙を埋め、水の浸入を防ぐ 中性化の進行を遅らせる |
防水工事と防腐処理を適切に組み合わせることで、建物の劣化を効果的に防ぎ、建物の寿命を大幅に延ばすことができます。
防水改修工事の種類
防水層は経年劣化により機能が低下するため、定期的なメンテナンスや改修工事が必要です。防水改修工事には、大きく分けて以下の3つの種類があります。
かぶせ工法(オーバーレイ工法)
既存の防水層を撤去せず、その上に新しい防水層を重ねる工法です。
適用条件として既存防水層が比較的健全で、下地の変形が少ない場合に用いられます。
メリット | デメリット |
撤去費用がかからない 工期が短縮できる コストを抑えられる | 既存防水層の状態によっては適さない場合がある 重量が増加する |
撤去工法(全面改修工法)
既存の防水層を完全に撤去し、下地から新しい防水層を施工する工法です。既存防水層の劣化が著しい場合や、下地の補修が必要な場合に用いられます。
メリット | デメリット |
下地からしっかりと改修できる 防水性能が高い 長期的な耐久性が期待できる | 撤去費用や廃材処理費用がかかる 工期が長くなる |
機械的固定工法
防水シートを屋根の下地に機械的に固定する工法で、ディスクを先に固定する「UD工法」と、シートを先に敷く「US工法」の2種類があります。
高層建築物や風の強い地域の建物に適している工法です。
メリット | デメリット |
下地処理が最小限で済む 工期短縮に繋がる 耐風圧性に優れている | 特殊な機械や技術が必要 初期コストが高い場合がある |
それぞれの工法には、メリットやデメリット・耐用年数・費用など、様々な違いがあります。新築時と改修時でも採用されやすい工法は異なり、例えば新築ではアスファルト防水が一般的でしたが、近年ではウレタン防水やシート防水が主流です。
改修工事においては、既存の防水層の種類や劣化状態・建物の構造・予算・工期などを総合的に考慮して、最適な工法を選択する必要があります。
防水改修工事の費用
防水改修工事の費用は、下記のように様々な要素によって大きく変動します。
- 工法:一般的に、かぶせ工法が最も安く、次いで機械的固定工法、撤去工法の順に高額になる
- 施工面積:面積が広いほど費用は高くなりますが、単位面積あたりの費用は通常低くなる
- 建物の形状:複雑な形状の建物は、施工が難しくなるため、費用が高くなる傾向がある
- 階数:高層階になるほど、足場設置費用や高所作業費がかかるため、費用が高くなる
- 既存防水層の撤去の有無:既存防水層の撤去が必要な場合は、その分の費用が追加される
- 使用する材料:高品質や特殊な材料を使用する場合、費用は増加する
- 季節や地域:工事の時期や地域によっても費用が変動することがある
これらの要素を踏まえたうえで、一般的な防水改修工事の費用目安をまとめました。
工法 | 概算費用(1㎡あたり) |
かぶせ工法 | 10,000〜20,000円 |
機械的固定工法 | 15,000 〜 30,000円 |
撤去工法 | 20,000 〜 40,000円 |
ただし、これらは平均的な価格であり、実際の費用は現場の状況や業者によって異なる可能性があります。
費用を抑えるためのポイント
工事費用を抑えるためには、少なくとも3社以上から見積りをとり、比較検討することが大切です。また、梅雨前後は防水工事の繁忙期となるため、シーズンオフの時期に依頼することで費用を抑えることにつながる可能性があります。
もし、建物に小さな問題が発生した際は、放置せずに早めに対処することで、長期的に見て費用を抑えられるでしょう。自治体によっては防水改修工事に対する補助金制度が設けられている場合もあります。
実際の費用は、現場調査を行ったうえで正確な見積もりを取ることが重要です。費用だけでなく、施工品質や保証内容なども総合的に判断して、最適な選択をしましょう。
防水改修工事の時期
防水工事は劣化が深刻化する前に、適切な時期に行うことが重要です。劣化が進むほど、工事費用は高額になり、最悪の場合は建物の構造躯体にまで損傷が及んでしまう可能性があります。
そのため、適切に劣化のサインを見極めて、推奨時期に工事を実施することが大切です。以下では、劣化のサインや工事の推奨時期についてまとめました。
劣化のサインを見分けるポイント
下記のような劣化が見られた場合は、早めに業者へ依頼しましょう。
- ひび割れ
- 膨れ・剥がれ
- 雨漏り
- 排水不良
- 変色
屋根や外壁、ベランダなどにひび割れが見られる場合は、雨水が浸入している可能性があります。また、防水層が膨れたり剥がれたりしている場合は、劣化が進んでいる深刻な状態のため、早期の対処が必要です。
雨漏りによって天井や壁にシミができている場合は、防水機能が著しく低下しているサインです。屋上やベランダに水たまりができる場合は防水層の変形は排水システムの問題が考えられます。外壁や屋根材に変色が見られる場合も、紫外線や雨による劣化のサインですので、早めに専門家に点検を依頼しましょう。
防水工事の推奨時期
一般的な防水材の耐用年数と、推奨される改修時期は以下の通りです。
防水工法 | 一般的な耐用年数 | 推奨改修時期 |
アスファルト防水 | 20〜30年 | 15〜20年 |
ウレタン防水 | 10〜15年 | 7〜10年 |
シート防水 | 15〜20年 | 10〜15年 |
塗膜防水 | 5〜10年 | 3〜7年 |
ただし、これらの年数はあくまで目安であり、建物の立地条件や使用状況によって大きく異なる場合があります。
専門家による定期的な点検(年1〜2回)を行い、建物の状態を把握することが重要です。軽微な劣化は早めに部分補修を行い、重度の劣化や漏水が発生した場合は速やかに全面改修を検討しましょう。
防水改修工事の業者選び
信頼できる業者に依頼することは、高品質な防水工事を実現するうえで非常に重要です。以下のポイントを参考に、適切な業者を選びましょう。
優良業者の見分け方
工事を依頼する際は、まず実際に工事を依頼した人の口コミを複数チェックし、会社のホームページを確認して実績がどの程度あるのかを確認しましょう。豊富な実績がある業者であれば、様々な現場での経験とノウハウを有しているほか、防水施工技能士をはじめとした資格を持つ技術者が在籍していることが多くあります。このような会社は、高い技術力がある会社と判断できるでしょう。
また、見積りを依頼した際は、工事内容や費用が明確に記載されているかも確認することが大切です。
工事完了後の保証について確認する際は、長期的なサポートが得られるか確認することも重要です。このような質問や相談に丁寧に対応してくれるか、事前のやりとりでコミュニケーション力についてもチェックしておきましょう。なかには、業界団体に所属している業者がありますが、所属団体を確認することも一定の基準を満たしている証拠です。
業者選びのプロセス
- 情報収集:インターネットや知人の紹介などで複数の業者情報を集める
- 実績確認:各業者の施工実績や資格を確認
- 現場調査:複数の業者に現場を見てもらい、状況を確認してもらう
- 見積もり比較:少なくとも3社以上から見積もりを取り、内容を比較する
- 質問・相談:不明点や懸念事項について質問し、対応を確認
- 契約内容の確認:工事内容、費用、保証内容などを十分に確認してから契約
業者選びの際に注意すべき点
見積りを見た際に極端に価格が安い場合は、品質や保証に問題がある可能性があるため注意が必要です。また施工後のアフターフォロー体制も重要な選択基準といえます。
悪徳な業者の場合は契約を急かしてくる場合があります。複数の業者から見積りをとり、十分に時間をかけて比較検討することが大切なため、契約を迫ってくる業者の場合は注意しましょう。
信頼できる団体に相談するのも一つの方法です。このような団体は、厳しい審査基準をクリアした優良業者のみが加盟しているため、安心して相談することができます。
まとめ
防水改修工事は、建物の寿命を延ばし、快適な住環境を維持するための重要な投資です。
本記事で紹介した情報を参考に、お持ちの建物に最適な防水対策を検討してください。専門家のアドバイスを受けながら、計画的に防水改修を進めることで、長期的に見て大きな利益につながります。
建物は私たちの生活や仕事の基盤となる大切な資産です。適切な防水対策を行うことで、その価値を最大限に引き出し、次世代へと引き継いでいくことができるのです。防水改修工事を通じて、あなたの建物に新たな生命を吹き込んでみませんか?