マンション大規模修繕工事の費用が払えない時の対処法と修繕費用の削減方法や補助金・助成金について解説

マンションの大規模修繕を前に、修繕積立金が足りなかったり一時金の徴収は難しかったりと、資金不足で悩まれる管理組合も少なくありません。国土交通省の調査によると、補助金を活用した管理組合は全体の約20%に留まり、多くが資金調達に苦慮しているのが現状です。

そこで本記事では、住宅金融支援機構の融資制度から、省エネ補助金、工事費用の削減方法まで、修繕積立金が不足した際の具体的な対処法を、実例を交えて詳しく解説します。

目次

マンション大規模修繕工事の費用はどこから捻出する?

マンションの大規模修繕工事には数千万円単位の多額な費用が必要となるため、「この費用はどこから出てくるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。基本的には修繕積立金一時金の徴収、そして補助金や助成金制度の活用によってまかなわれます。

まず最も一般的な財源は、毎月の管理費とともに住民から徴収されている修繕積立金です。長期修繕計画に基づき積み立てられた資金をもとに、必要なタイミングで大規模修繕が実施されます。しかし、想定よりも工事費が高額になる場合や、積立金が不足している場合は、住民から一時金を徴収するケースも珍しくありません。

マンション大規模修繕の費用が払えないときの対処法

大規模修繕は高額な費用がかかるため、払えない…といったケースも起きてきます。管理組合では費用対策を立てる必要があります。

状況に合わせて様々な方法を検討し、適切な判断を下すことが重要です。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法1.融資や借入を検討する

マンションの大規模修繕の費用相場は1戸あたり約50万〜約100万前後かかります。不足分を補う方法として、金融機関の融資や借入があります。住宅金融支援機構や民間金融機関では、マンションの大規模修繕費用を融資する制度があります。これらの制度を利用すれば、比較的低金利でまとまった資金を借り入れることができます。

ただし、融資を受けるためには一定の条件を満たす必要があります。例えば、マンションの管理組合が健全に運営されていることや、修繕計画が適切に立てられていることなどが挙げられます。

借入をする場合、返済計画を立てることが重要です。月々の返済額が家計に大きな負担にならないように、返済期間や金利を検討する必要があります。また、金利の上昇リスクや返済不能のリスクについても考慮する必要があります。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法2.修繕計画の見直し

工事内容そのものを見直し、費用削減を検討しましょう。

例えば、当初予定していたグレードの高い設備を、より安価なものに変更したり、一部の工事を先送りすることで、費用を抑えることができます。ただし、安易なコストカットは将来的に不具合を起こす可能性があるため、専門家と相談しながら適切な判断をすることが大切です。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法3.一時金の徴収

区分所有者から一時金を徴収し、不足分を賄うことも選択肢の一つです。

マンションの大規模修繕費用が払えない場合、修繕積立金以外の対処法としては、住民から一時金を徴収する方法、不足分をローンで補う方法、工事内容を見直して費用を抑える方法、大規模修繕工事を延期する方法などがあります。

管理組合は、住民の理解と協力のもと、適切な方法を選択し、建物の維持管理を継続していく必要があります。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法4.工事の優先順位を設定

安全性や緊急性の高い工事から実施し、他の工事は分割発注や先送りを検討します。

マンションの大規模修繕の費用が不足している場合、工事内容を見直すことで費用を抑えることが可能です。なかでも、大規模修繕工事の優先順位を変えることで、費用を削減できる場合があります。

たとえば、外壁塗装や屋上防水など、建物の外観を維持するための工事を優先し、共用部分の設備更新などの工事を後回しにすれば、費用を抑えることができます。また、耐震補強など、安全性を向上させるための工事を優先すれば、建物の資産価値を維持することができます。

ただし、工事内容を変更する場合は、長期的な修繕計画に影響を与えないようにする必要があります。また、住民全員の合意を得ることも重要です。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法5.補助金・助成金の活用

自治体の補助金・助成金制度を利用すれば、費用の一部を賄えることがあります。

東京都では、省エネ改修工事に対して最大2,000万円の補助金制度があります。

大規模修繕工事の補助金や助成金について

大規模修繕工事では、国や自治体からの補助金や助成金を活用することで一部の費用負担を軽減できる可能性があります。

補助金や助成金の種類
大規模修繕工事に対して利用できる主な補助金や助成金には以下のようなものがあります。

  • 住宅エコリフォーム助成事業(国土交通省)
  • マンション省エネルギー化推進事業(国土交通省)
  • 都道府県や市区町村の独自の助成制度

国土交通省による調査(2021年)では、補助金を活用した管理組合の割合は22%にのぼります。

一般的に、省エネ改修工事や耐震改修工事、バリアフリー化工事などが補助金の対象になりやすい傾向にあります。

実例1:東京都の「マンション省エネ改修助成事業」では、高効率設備の導入などを行う場合、工事費の一部(最大2,000万円)が補助されます。
参考:東京都既存マンション省エネ・再エネ促進事業

実例2:大阪市の「マンション耐震化助成制度」では、耐震改修工事費の23%が補助されます(上限あり)。
参考:大阪市

申請手続きと注意点
補助金の申請には、事前の手続きが必要不可欠です。

また、工事前や工事後の検査を受ける必要があるなど、細かな条件があります。

大規模修繕の費用負担軽減のため、補助金や助成金の有無を確認し、制度の内容を十分に理解した上で、積極的な活用を検討することが重要です。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法6.複数の業者から見積もりを取得

適正な工事費用を見極めるため、複数の業者から見積もりを取得し、内容を比較検討することが肝心です。

業者によって見積金額はまちまちですから、複数の見積もりを比較することで適正価格をある程度把握でき、価格交渉の材料にもなります。

マンション大規模修繕費が払えないときの対処法7.工事の実施を延期

資金確保が難しい場合は、一時的に工事を延期することで時間を稼ぐ方法もあります。

ただし、安全性を損なわないよう慎重に判断する必要があります。

管理組合では状況を冷静に分析し、融資や工事内容の見直し、補助金活用など、様々な選択肢から最善の方法を選ぶ必要があります。

大規模修繕工事は高額な費用がかかる大きなイベントです。

管理組合では費用対策を立て、適切な判断を下すことが求められます。

資金調達や工事範囲の見直し、補助金活用など、様々な選択肢を検討する必要があります。

状況を冷静に分析し、最善の方法を選ぶことが重要となります。

大規模修繕や防水工事のご相談は実績豊富な新東亜工業へ

実録!7階建てマンションの大規模修繕工事の流れと費用・施工事例

東京都墨田区にある7階建てマンションにて、ワンオーナー物件の大規模修繕工事を新東亜工業が対応しました。外壁の塗装やシーリングの補修、防水工事の必要性、見積比較の不安など、オーナー様の悩みに対しどのような提案と判断を行ったのか——その一連の流れを、実際の会話を交えながらご紹介します。

お問い合わせ〜現地調査|過去施工の確認と細部の劣化診断

工事のきっかけは「前回の色選びに失敗した」「屋上防水は5年前に済ませたが今回も必要か不安」といったメール相談でした。

お客様とのやり取り
お客様:「屋上の防水は5年前にやってるんですけど、それでもやるべきですか?」
新東亜工業:「一度状態を拝見してから判断しましょう。無理にやる必要がなければ省く判断もできます」

現地では図面をもとにバルコニーや外壁、庇などを細かく確認。シーリングの劣化が目立ったため、全撤去と打ち替えの提案を行いました。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「ここのシーリング、かなりひび割れてます。全て打ち替えですね」
お客様:「これ全部やるとなると…かなりの距離ですよね?」
新東亜工業:「ざっと見ても1000mは超えてきます」

見積り提示|屋上防水の有無で2プラン提案+実数精算の説明

調査後は「屋上防水あり・なし」2パターンの見積を作成。各項目の違いと予算の幅をわかりやすく提示しました。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「下地補修は“実数精算”になります。今見えてない部分も足場を組んでから補修範囲を確定します」
お客様:「100万円とか一気に増えることもありますか?」
新東亜工業:「状態は悪くないので10〜20万円程度の上下です。むしろ減る可能性もありますよ」

他社と比較されることも想定し、工事項目の説明や「新規打設」のリスクも正直に伝えました。

契約成立|「新規打設」との違いを丁寧に解説し信頼獲得

価格では他社より若干高めだったものの、工法や保証内容の丁寧な説明でご納得いただきました。

お客様とのやり取り
お客様:「他社には“新規打設”って書いてあります」
新東亜工業:「それは既存シールを撤去せず上からかぶせる方法で、密着不良やひび割れの原因になります。当社では必ず撤去・打ち替えを行います」

結果、「屋上防水なしプラン(852万円)」でご契約いただきました。

着工前の打ち合わせ|色決め・足場・近隣への配慮も徹底

工事前の打ち合わせでは、オーナー様が特に重視されたのが「色の選定」。過去2回の失敗を経て、今回は慎重に。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「今回は色のイメージをどうされたいですか?」
お客様:「前の2回、どちらもイメージと違って…。今回は絶対に失敗したくない!」

色見本板を用意し、納得のいく色を選定。中学校敷地への足場越境や1階テナントのバイク駐輪スペース確保など、周辺環境への配慮も抜かりなく実施しました。

工事中の対応|トラブルの早期発見と柔軟な対応で信頼感

施工中には、前回業者が「増し打ち」を行っていた痕跡を確認。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「やはり前回は増し打ちでしたね。しっかり撤去してから打ち換えますのでご安心ください」
お客様:「やっぱり!最初に“それはダメ”って言ってもらえて良かったです」

さらにバルコニー防水ではガス配管の位置により仕上げ調整を行うなど、現場での判断力も発揮。仕上がりにはご満足いただけました。

お客様とのやり取り
お客様:「本当にイメージ通りの外壁色で嬉しいです。母も喜んでました!」

引き渡しと今後の対応|最終確認と事務手続きまで丁寧に対応

完工後は外回りも含めた最終チェックを実施。仕上がりの満足度は非常に高く、保証書や請求書もスムーズに手配されました。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「この庇も塗装・防水完了済みです」
お客様:「本当にきれいになってよかった。ありがとうございました!」

工事概要まとめ

  • 契約金額:852万円(屋上防水なしプラン)
  • 施工期間:約50日間

本事例を通じて、オーナー様の不安や悩みに寄り添いながら、適切な判断と施工を提供することの重要性が見えてきます。

「前回の修繕に不満がある」「見積内容が適正か判断できない」とお感じの方は、ぜひ一度ご相談ください。

マンション大規模修繕費が払えない!そうなる前の費用削減方法とは?

大規模修繕工事は高額な費用がかかりますが、様々な工夫で費用を抑えることが可能です。

マンション大規模修繕工事の費用削減方法1.事前計画と調査の徹底

大規模修繕工事の費用削減の第一歩は、事前の計画と調査を徹底することです。以下の点を確認します。場合によっては事前調査を先に行うことで工事するべき箇所と次回の工事へ回す場所などをチェックした方が最終的に費用が安くなる場合もあります。

マンション大規模修繕工事の費用削減方法2.材料の選定

使用する材料の選定も費用削減に大きく影響します。

  • コストパフォーマンスの高い材料を選ぶ:品質が良く、かつ価格が適正な材料を選定します。
  • 材料の調達方法を見直す:施工会社に一括で調達を依頼するよりも、建物の管理組合が直接調達する方がコストを抑えられる場合があります。

マンション大規模修繕工事の費用削減方法3.助成金や補助金の活用

自治体や政府が提供する助成金や補助金を活用することで、費用を削減できます。

  • 利用可能な助成金の調査:自治体や国が提供する助成金や補助金の情報を収集します。
  • 申請手続きの代行:施工会社や専門業者に助成金や補助金の申請手続きを依頼します。

マンション大規模修繕工事の費用削減方法4.不足分を工面する方法

さまざまな費用削減策を講じても不足分が生じた場合は、再度修繕積立金の増額や一時金の徴収、さらには融資という選択肢が考えられます。

大規模修繕工事では事前に十分な準備を行い、適正価格の把握と費用削減の工夫をすることが大切です。

ただし、施工品質の低下は避けるべきで、質と安全性を損なわない範囲での削減に留める必要があります。

マンションの大規模修繕は莫大な費用がかかる一大イベントです。

管理組合はあらゆる費用対策を検討し、資金確保と適正価格での施工を両立させることが求められます。

マンション大規模修繕での補助金や助成金の種類と条件を紹介

マンションの大規模修繕には多額の費用がかかりますが、国や地方自治体からの補助金を利用することで、経済的負担を軽減することができます。ここでは、主要な補助金の種類とそれぞれの条件について詳しく解説します。

以下の表にまず簡単にまとめました。

補助金の種類条件対象工事例
省エネ改修補助金断熱材の追加や省エネルギー設備の導入を行うこと
一定のエネルギー効率改善が見込まれること
断熱材の追加、高効率給湯器の設置
LED照明への交換
耐震改修補助金建物の耐震性を向上させる工事を行うこと
耐震診断の結果に基づいた改修であること
耐震補強工事、柱や梁の補強
バリアフリー改修補助金高齢者や障害者のためのバリアフリー化を行うこと
公共性が認められること
スロープの設置、エレベーターの設置
手すりの設置
条件、対象工事例は一般的な内容となります。自治体によって条件が変わることがあるため詳しくは各自治体へお問い合わせください

それぞれの内容を詳しく解説します。

省エネ改修補助金

まず、省エネ改修補助金についてです。この補助金は、建物の断熱性能を向上させたり、省エネルギー設備を導入したりする場合に支給されます。具体的には、断熱材の追加や高効率給湯器の設置、LED照明への交換などが対象となります。この補助金を受けるための条件として、断熱材の追加や省エネルギー設備の導入を行うことが求められ、さらに一定のエネルギー効率改善が見込まれることが必要です。

※参考資料:国土交通省マンションの省エネ改修事例・支援制度

耐震改修補助金

次に、耐震改修補助金があります。この補助金は、建物の耐震性を向上させるための工事に対して支給されます。対象となる工事には、耐震補強工事や柱や梁の補強などがあります。補助金を受けるためには、耐震診断の結果に基づいた改修であることが条件となります。これは、建物の耐震性を確保し、住民の安全を守るために非常に重要です。

バリアフリー改修補助金

最後に、バリアフリー改修補助金です。この補助金は、高齢者や障害者のためにバリアフリー化を行う場合に支給されます。対象となる工事には、スロープの設置、エレベーターの設置、手すりの設置などが含まれます。この補助金を受けるための条件としては、高齢者や障害者のためのバリアフリー化を行うこと、そして公共性が認められることが必要です。バリアフリー化は、高齢者や障害者が安全に快適に暮らせる環境を整えるために重要です。

以上のように、マンション大規模修繕に対する補助金にはさまざまな種類があり、それぞれに特有の条件があります。適切な補助金を選び、条件に合った工事を行うことで、補助金を有効に活用することができます。

大規模修繕工事でよくある質問

ここでは大規模修繕工事でよくある質問を紹介します。工事費用や施行中の疑問をまとめました。

Q

大規模修繕で10戸のマンションではどのくらいが費用目安?

A

10戸のマンションの大規模修繕の費用は、規模や建物の状態、修繕内容によって異なりますが、一般的には1000万円から1,500万円程度が目安とされています。具体的な費用は、外壁や共用部分の修繕内容、使用する材料の種類によって変動するため、詳細な見積もりを施工業者で確認しましょう

Q

マンション大規模修繕時にエアコンは使用できる?室外機はどうする?

A

大規模修繕中でも基本的にはエアコンの使用は可能ですが、外壁塗装や防水工事の際には一時的に使用を控える必要がある場合があります。室外機は、作業に支障がない限りそのまま設置された状態で保たれることが一般的です。ただし、工事の進捗によっては室外機を一時的に移動させる場合もあるため、管理組合や施工業者からの指示に従ってください。

Q

マンション大規模修繕の際のベランダの荷物やアンテナはどうすればいい?

A

大規模修繕の際には、ベランダの荷物は一時的に室内に移動させる必要があります。特に、外壁塗装や防水工事の影響を受けやすいものは、工事開始前に片付けてください。また、テレビアンテナや物干し竿も取り外しが必要になる場合がありますので、事前に管理組合や施工業者の指示に従い、適切に対応してください。

Q

大規模修繕の際に洗濯物は外に干せる?

A

大規模修繕期間中は、外壁工事や塗装の影響でベランダに洗濯物を干すことが制限されることがあります。工事用のネットやシートが張られるため、日光が遮られたり、塗料やホコリが付着する可能性があります。管理組合や施工業者からの案内に従い、洗濯物は室内で乾かすか、コインランドリーの利用を検討してください。

Q

大規模修繕の際に立ち会いや在宅が必要なことはある?

A

大規模修繕では、住戸内に立ち入る必要のある作業が発生する場合があります。例えば、配管の点検やベランダ側のサッシ工事などが該当します。その際には、居住者の立ち会いや在宅を求められることがあるため、事前に管理組合や施工業者からの連絡を確認し、予定を調整してください。それ以外の工事については基本的に在宅の必要はありませんが、作業内容によって異なるため、詳細は管理組合の案内を確認することが重要です。

この他、大規模修繕のよくある質問について知りたい方は以下の記事をご覧ください

マンション大規模修繕費が払えない時の対処法について|まとめ

マンションを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。しかし、大規模修繕ともなると、多額の費用が必要になることが多く、修繕積立金だけでは賄えないケースも少なくありません。

そこで、今回は、修繕積立金以外の対処法についてご紹介します。

最も一般的な方法として、住民から一時金を徴収する方法があります。これは、修繕費用の不足分を住民全員で負担するというもので、比較的公平な方法と言えます。

一括で支払うことが難しい場合は、金融機関から融資を受けるという方法もあります。ただし、金利がかかるため、返済期間や金利を慎重に検討する必要があります。

修繕範囲を縮小したり、仕様を簡素化したりすることで、費用を抑えることができます。ただし、必要な修繕を削減しすぎると、建物の寿命が短くなってしまう可能性があるため、専門家と相談しながら検討することが重要です。