マンションで3回目の大規模修繕が重要な理由は?かかる費用や時期の目安について紹介
2024/03/11
マンションの大規模修繕工事は約10〜15年ごとに実施され、築30〜45年目には3回目の大規模修繕を迎えるケースが多くなります。
この3回目の修繕工事では、外壁や屋上防水といった基本的な修繕に加え、建物の老朽化が進むため、配管設備や構造部分の補強といった、より高度な修繕も検討が必要です。
修繕の内容や費用が大きくなることが多いため、適切な計画や費用の積立が重要です。
この記事では、マンションの3回目の大規模修繕工事が重要な理由やメリットとは?、について詳しく解説します。
また、3回目の大規模修繕の時期や目安、費用、施工内容についても紹介します。
計画的に修繕工事を行うことで、将来的なコスト削減を目指しましょう。
目次
大規模修繕工事とは?
大規模修繕工事は、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持・向上させるために非常に重要な工事です。
大規模修繕とは、経年劣化によって傷んだ建物の部分を補修し、新築時の機能を回復させる工事のことです。 12~15年ごとに、外壁の補修や塗装、屋上の防水工事などをまとめて行う大掛かりな工事となるため、足場を組んで行われることが一般的です。 工事の対象は、主にマンションの共有部分です。
大規模修繕工事は、建物の美観を回復させるだけでなく、安全性や快適性を向上させる効果もあります。 例えば、外壁のひび割れを放置すると、雨水が侵入し、鉄筋が錆びて建物の強度が低下する可能性があります。 また、防水工事を行うことで、雨漏りを防ぎ、建物の劣化を遅らせることができます。
さらに、大規模修繕工事は、時代の変化に合わせて、建物の機能や性能を向上させる良い機会でもあります。 例えば、バリアフリー化や省エネ対策など、現代のライフスタイルに合わせた改修を行うことで、より快適で暮らしやすい住まいを実現できます。
修繕工事と改修工事についての違い
修繕工事と改修工事は、どちらも建物の維持や改善を目的とした工事ですが、目的や内容にいくつかの違いがあります。
修繕工事
修繕工事は、建物の劣化や損傷を修復し、元の状態に戻すことを目的とした工事です。主に老朽化や経年劣化による不具合を修理するために行われ、建物の機能を維持することが重要視されます。例えば、外壁のひび割れ補修や、防水層の再施工、給排水設備の修理などが修繕工事に該当します。修繕工事は、建物の現状を保つために必要なもので、定期的に行うことが推奨されます。
改修工事
改修工事は、建物の機能やデザインを改善し、現状よりも良くすることを目的とした工事です。単なる修理に留まらず、設備の更新やレイアウトの変更、新たな機能の追加など、建物全体の性能向上を図るための工事です。例えば、古くなった設備の最新化や、内装デザインの変更、エネルギー効率の向上を目的としたリノベーションなどが改修工事に該当します。
マンションで3回目の大規模修繕とは?
マンションの大規模修繕は、通常12〜15年周期で行われ、建物の寿命を延ばすための定期的なメンテナンスとして位置付けられています。築30年を超える頃には、3回目の修繕時期を迎える物件が増えてきますが、このタイミングでは単なる美観回復や防水対策にとどまらず、より深刻な構造的課題や設備の老朽化に対応する必要があります。
特に3回目の修繕では、建物の劣化進行や居住者の高齢化といった「時間経過に伴う課題」が顕在化するため、1回目・2回目とは異なる視点と準備が求められます。
1回目・2回目の修繕と何が違う?
1回目・2回目の大規模修繕は、主に外壁や屋上防水などの表層的な保全が中心でした。特に1回目は「新築からの経年劣化に対する初期対応」として、塗装やシーリングの打ち替え、鉄部の塗装など比較的定型的な工事項目がメインとなります。
2回目になると、前回の修繕内容に加え、エレベーターや給水ポンプの設備更新が検討されることがあり、部分的な機能改善や延命措置が必要になります。
一方、3回目の修繕では、
- 構造体そのものの劣化(例:コンクリート中性化、鉄筋の腐食)
- 給排水管の寿命超過による漏水リスク
- 高齢化対応としてのバリアフリー化
- 省エネ・スマート設備への更新など
といった、建物の“根幹”に関わる修繕と機能強化が問われる段階に入ります。
つまり、3回目の大規模修繕は、単なる「修復」ではなく、将来を見据えた「再構築」の意味合いを持つのが大きな違いです。
築30年超のマンションが抱える主な課題とは?
築30年を超えたマンションは、以下のような多面的な課題を抱えることが一般的です。
- 給排水管の老朽化
鋼管や鉛管など旧式の配管材が使われていた場合、内部の腐食や赤水の発生が深刻化します。配管更新やライニング工法の導入が求められる段階です。 - 構造部材の劣化
コンクリートの中性化によって鉄筋が錆び、爆裂やひび割れが起こることで、建物の耐久性そのものが損なわれます。 - 共用設備の陳腐化
エレベーターやインターホン、防犯カメラといった設備は製造終了しているものも多く、交換時には大掛かりな工事が必要になります。 - 住民の高齢化によるバリアフリー対応の必要性
手すりの設置や段差解消、スロープの設計見直しなどが求められることもあります。 - 修繕積立金の不足
物価高騰や修繕範囲の拡大により、計画時の予算では足りなくなるケースが多く、借入や一時金徴収を検討する必要も出てきます。
これらの課題に早期に対応しないと、建物の価値が下がるだけでなく、将来的な修繕費用も膨らむ恐れがあります。3回目の大規模修繕は、まさに「建物の第二の寿命」を決定づける重要なターニングポイントです。
3回目のマンション大規模修繕工事にかかる費用の目安
マンションの大規模修繕工事には、多額の費用がかかります。
しかし、費用はマンションの規模や築年数、工事の内容や品質によって異なります。そこで、3回目のマンション大規模修繕工事にかかる費用の目安は下記のようになります。
| マンションの規模 | 築年数 | 工事の内容 | 工事の品質 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模(50戸以下) | 30年 | 基本的な工事 | 標準的な品質 | 約1,000万円 |
| 中規模(51~100戸) | 35年 | 必要な工事 | やや高めの品質 | 約1,500万円 |
| 大規模(101戸以上) | 40年 | 追加的な工事 | 高い品質 | 約2,000万円 |
3回目のマンション大規模修繕工事にかかる費用の平均は、約1,000万円〜約1,500万円です。
国土交通省の調査によると、3回目のマンション大規模修繕工事にかかる費用の平均は、約1,500万円でした。
これは、1戸あたり約100万円ということになります。
ただし、これはあくまで平均値であり、実際の費用はマンションの規模や築年数、工事の内容や品質によって大きく変わります。
また、工事の内容によって約30%変わります。 工事の内容とは、外壁塗装や屋根防水などの基本的な工事に加えて、エレベーターや防犯カメラなどの設備更新や、エコやスマートなどの最新の技術や機能の導入などを指します。
工事の内容が多くなるほど、費用も高くなります。
一般的に、工事の内容によって費用は約30%変わると言われています。
実録!7階建てマンションの大規模修繕工事の流れと費用・施工事例
東京都墨田区にある7階建てマンションにて、ワンオーナー物件の大規模修繕工事を新東亜工業が対応しました。外壁の塗装やシーリングの補修、防水工事の必要性、見積比較の不安など、オーナー様の悩みに対しどのような提案と判断を行ったのか——その一連の流れを、実際の会話を交えながらご紹介します。
お問い合わせ〜現地調査|過去施工の確認と細部の劣化診断
工事のきっかけは「前回の色選びに失敗した」「屋上防水は5年前に済ませたが今回も必要か不安」といったメール相談でした。
お客様とのやり取り
お客様:「屋上の防水は5年前にやってるんですけど、それでもやるべきですか?」
新東亜工業:「一度状態を拝見してから判断しましょう。無理にやる必要がなければ省く判断もできます」
現地では図面をもとにバルコニーや外壁、庇などを細かく確認。シーリングの劣化が目立ったため、全撤去と打ち替えの提案を行いました。

お客様とのやり取り
新東亜工業:「ここのシーリング、かなりひび割れてます。全て打ち替えですね」
お客様:「これ全部やるとなると…かなりの距離ですよね?」
新東亜工業:「ざっと見ても1000mは超えてきます」
見積り提示|屋上防水の有無で2プラン提案+実数精算の説明
調査後は「屋上防水あり・なし」2パターンの見積を作成。各項目の違いと予算の幅をわかりやすく提示しました。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「下地補修は“実数精算”になります。今見えてない部分も足場を組んでから補修範囲を確定します」
お客様:「100万円とか一気に増えることもありますか?」
新東亜工業:「状態は悪くないので10〜20万円程度の上下です。むしろ減る可能性もありますよ」
他社と比較されることも想定し、工事項目の説明や「新規打設」のリスクも正直に伝えました。
契約成立|「新規打設」との違いを丁寧に解説し信頼獲得
価格では他社より若干高めだったものの、工法や保証内容の丁寧な説明でご納得いただきました。
お客様とのやり取り
お客様:「他社には“新規打設”って書いてあります」
新東亜工業:「それは既存シールを撤去せず上からかぶせる方法で、密着不良やひび割れの原因になります。当社では必ず撤去・打ち替えを行います」
結果、「屋上防水なしプラン(852万円)」でご契約いただきました。
着工前の打ち合わせ|色決め・足場・近隣への配慮も徹底
工事前の打ち合わせでは、オーナー様が特に重視されたのが「色の選定」。過去2回の失敗を経て、今回は慎重に。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「今回は色のイメージをどうされたいですか?」
お客様:「前の2回、どちらもイメージと違って…。今回は絶対に失敗したくない!」
色見本板を用意し、納得のいく色を選定。中学校敷地への足場越境や1階テナントのバイク駐輪スペース確保など、周辺環境への配慮も抜かりなく実施しました。
工事中の対応|トラブルの早期発見と柔軟な対応で信頼感
施工中には、前回業者が「増し打ち」を行っていた痕跡を確認。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「やはり前回は増し打ちでしたね。しっかり撤去してから打ち換えますのでご安心ください」
お客様:「やっぱり!最初に“それはダメ”って言ってもらえて良かったです」
さらにバルコニー防水ではガス配管の位置により仕上げ調整を行うなど、現場での判断力も発揮。仕上がりにはご満足いただけました。
お客様とのやり取り
お客様:「本当にイメージ通りの外壁色で嬉しいです。母も喜んでました!」
引き渡しと今後の対応|最終確認と事務手続きまで丁寧に対応


完工後は外回りも含めた最終チェックを実施。仕上がりの満足度は非常に高く、保証書や請求書もスムーズに手配されました。
お客様とのやり取り
新東亜工業:「この庇も塗装・防水完了済みです」
お客様:「本当にきれいになってよかった。ありがとうございました!」
工事概要まとめ
- 契約金額:852万円(屋上防水なしプラン)
- 施工期間:約50日間
本事例を通じて、オーナー様の不安や悩みに寄り添いながら、適切な判断と施工を提供することの重要性が見えてきます。
「前回の修繕に不満がある」「見積内容が適正か判断できない」とお感じの方は、ぜひ一度ご相談ください。
3回目のマンション大規模修繕の時期の目安は?

マンションの大規模修繕は、築年数が10~15年ごとに行われるというのが一般的な目安です。
しかし、実際には、マンションの状態や住民の意向によって、時期は前後することがあります。
そこで、3回目のマンション大規模修繕の時期の目安をお伝えします。
3回目のマンション大規模修繕の時期の目安は築年数が30~45年
国土交通省の調査によると、3回目のマンション大規模修繕の時期の平均は、築年数が約37年でした。
これは、1回目の大規模修繕が築年数約12年、2回目の大規模修繕が築年数約25年に行われたと仮定した場合、3回目の大規模修繕は築年数約38年に行われるという計算に近いです。
ただし、これはあくまで平均値であり、実際の時期はマンションの状態や住民の意向によって大きく変わります。
3回目の大規模修繕のポイントはマンションの状態で決める
マンションの状態とは、建物の構造や設備の劣化度や損傷度を指します。
マンションの状態は、定期的に点検や診断を行うことで把握することができます。
点検や診断の結果に基づいて、大規模修繕の必要性や優先度を判断することが重要です。
特に、3回目の大規模修繕では、建物の老朽化が進んでいる可能性が高いため、安全性や機能性の確保のために、早めに行うことが望ましいです。
住民の考えや希望で調整する
住民の意向とは、大規模修繕の必要性や内容、費用、工事期間などに対する住民の考えや希望を指します。
住民の意向は、定期的にアンケートやヒアリングを行うことで把握することができます。
住民の意向に応えることで、大規模修繕の合意形成や満足度を高めることができます。
ただし、住民の意向は、マンションの状態や法律などの制約に沿って、合理的に調整することが必要です。
3回目の大規模修繕工事で多い施工内容
マンションの大規模修繕工事では、建物の状態や住民の要望に応じてさまざまな施工が行われますが、特に3回目の大規模修繕工事でよく実施される施工内容について紹介します。
外壁塗装
外壁塗装は、マンションの美観を保つだけでなく、建物の防水性や断熱性を向上させる重要な施工です。この施工は、大規模修繕工事で最も多く行われ、約90%のマンションで実施されています。外壁塗装の費用は、マンションの規模や使用する塗料の種類によって異なりますが、平均で約300万円となっています。
仮設工事
仮設工事は、大規模修繕工事を安全かつ効率的に進めるために必要な準備作業です。足場の設置やネット、シートの取り付けなどが含まれ、主に外壁塗装など他の施工に伴って行われます。約80%のマンションで実施されるこの工事の費用は、規模や仮設資材によって異なり、平均で約200万円です。
屋根防水
屋根防水は、マンションの屋根の防水性能を向上させる施工で、雨漏りや結露を防ぎ、建物の耐久性や快適性を確保します。屋根防水工事は大規模修繕で比較的多く行われ、約70%のマンションで実施されています。この施工の費用は、規模や使用する防水材によって異なりますが、平均で約100万円となっています。
床防水
床防水は、特にバルコニーや玄関など水がかかりやすい場所で行われる施工です。水漏れやカビの発生を防ぎ、床の耐久性を向上させる効果があります。大規模修繕で比較的多く行われる施工で、約60%のマンションで実施されています。費用は規模や防水材によって異なり、平均で約50万円です。
鉄部の塗装
鉄部の塗装は、鉄部の錆びや劣化を防ぐために行われます。手すりや窓枠などの鉄部に塗装を施すことで、耐久性と美観を保ちます。鉄部の塗装は、大規模修繕で実施される施工の中では比較的少ないものの、約40%のマンションで行われています。費用は規模や使用する塗料によって異なり、平均で約30万円です。
これらの施工内容は、マンションの状態や修繕計画に基づいて決定されますが、どれも建物の寿命を延ばし、住環境の改善に貢献する重要な工事です。
3回目の大規模修繕で重点的に見直すべきポイント
マンションの3回目の大規模修繕は、築30〜45年のタイミングで実施されることが多く、建物の耐久性や快適性を維持するために重要な節目 となります。1回目・2回目の修繕とは異なり、設備の老朽化や住民の高齢化への対応も視野に入れた改修 が求められます。ここでは、3回目の大規模修繕で重点的に見直すべきポイントを解説します。
給排水設備の老朽化対策
マンションの給排水管の耐用年数は30〜40年 とされており、3回目の大規模修繕の時期には、水漏れや赤水の発生リスクが高まる ケースが増えます。これらの問題を放置すると、水道管の破裂や漏水事故につながり、住民トラブルが発生する可能性もあります。
このため、以下の対策が重要になります。
- 配管の交換・更新:老朽化した配管を新しい素材(樹脂管など)に交換することで耐久性を向上
- 内視鏡調査の実施:管内部の劣化状況を事前に把握し、適切なメンテナンスを計画
- ライニング工法の活用:既存配管の内側に特殊なコーティングを施し、コストを抑えつつ耐久性を向上
バリアフリー対応の検討
築30〜40年のマンションでは、住民の高齢化が進行し、バリアフリー対応が必要となるケースが増えます。特にエレベーターや廊下・玄関部分の手すり設置や段差解消 は、多くの住民にとって利便性を向上させる改修ポイントです。
主なバリアフリー改修の例:
- エレベーターのリニューアル:老朽化したエレベーターの制御システムや安全装置のアップグレード
- 手すりの設置:共用廊下や階段に手すりを設置し、転倒リスクを低減
- 玄関・共用部の段差解消:車椅子やシルバーカーの利用を考慮したフラット設計
共用部の美観と設備のグレードアップ
マンションの資産価値を維持するためには、外観や共用部の美観を保つことが重要 です。築年数が経過すると、エントランスや廊下・外構の劣化が進むため、修繕とともにデザイン性や機能性を向上させる工事 を行うとよいでしょう。
具体的な改修例:
- エントランスのリニューアル:オートロックシステムの導入、防犯カメラの設置、デザインの変更
- LED照明の導入:電気代の削減とメンテナンス頻度の低減
- 駐車場や駐輪場の整備:使いやすさを向上し、利便性を高める
3回目の大規模修繕の際の管理組合の役割
築30年を超えるマンションにおいて、3回目の大規模修繕は非常に大きな決断となります。この修繕を成功させる鍵を握っているのが「管理組合」です。住民の合意形成や資金計画、業者選定といった一連の流れを主導する立場として、的確かつ丁寧な対応が求められます。
とくに3回目は、建物の劣化が進行し、工事内容が複雑化・高額化しやすいため、1回目・2回目以上に管理組合の判断力と調整力が問われる局面です。
合意形成と住民説明のコツ
大規模修繕は、すべての住民にとって直接的な負担や影響が生じるイベントです。特に3回目ともなると、費用が増える、設備更新の内容が難解になる、といったことで「住民の納得」を得るのが難しくなる傾向にあります。
合意形成をスムーズに進めるためには、次のようなポイントを意識しましょう。
- 定期的な説明会の実施
一度の全体説明だけでは不十分です。設計段階・見積段階・契約前など、タイミングごとに住民への説明の場を設けることが信頼構築につながります。 - 専門家による同席説明
建築士や施工業者、コンサルタントを招いて、技術的な説明を住民目線で噛み砕いてもらうことで理解度が向上します。 - 視覚資料・比較表の活用
「なぜこの修繕が必要なのか」「どの業者にするべきか」を数値や図表で示すことで、感情論ではなく理性に基づいた合意形成が可能になります。 - 反対意見への個別対応
一部の住民の懸念や疑問には個別対応を行い、修繕の必要性や全体利益の観点から丁寧に説明することも大切です。
合意形成に失敗すれば、工期の遅延やトラブルの種となるため、「広報」と「対話」を軸にした住民対応がカギを握ります。
資金不足に備えた修繕積立金の見直し方
3回目の大規模修繕では、1回目・2回目に比べて工事内容が増える分、費用も大きくなりがちです。しかし、修繕積立金が当初の想定より不足しているケースも多く見られます。そこで、事前に資金面を見直すことが、修繕工事の円滑な実施には不可欠です。
見直しのポイントは以下のとおりです。
- 長期修繕計画の再評価
築30年を超えると、過去の想定以上の劣化や法改正により、計画自体が現状に合っていないケースもあります。専門家と共に再評価を行いましょう。 - 現在の積立残高と将来予測のギャップを確認
修繕積立金の残高と、今後必要になる金額との差を明確にすることで、住民に「現実」を共有できます。 - 積立金の増額検討
早期に増額することで、住民一人あたりの月額負担は最小限に抑えられます。段階的な引き上げも選択肢です。 - 補助金や融資制度の活用
耐震・省エネ・バリアフリーなどを含む修繕内容によっては、自治体や国の補助制度が利用可能です。また、マンション専用の低金利融資も検討対象です。
「積立金が足りないから工事を先送りする」ではなく、「どうすれば住民負担を抑えて必要な工事を実現できるか」という視点での資金計画が必要です。
信頼できる施工業者の選び方
3回目の大規模修繕では、技術力・実績・対応力すべてにおいて高い水準が求められます。なぜなら、劣化の進行具合が物件ごとに異なり、標準仕様だけでは対応できないケースが増えるからです。だからこそ、「安さ」だけではなく、「信頼性」や「実績」を重視した業者選定が不可欠です。
施工業者選びのポイントは以下の通りです。
- 過去に同様の築年数・規模のマンションでの施工実績があるか
- 下請け丸投げではなく、自社施工の体制が整っているか
- 見積内容が明確で、追加費用のリスクが抑えられているか
- 保証内容やアフターサービスが充実しているか
- 住民対応・説明会などソフト面の対応力があるか
また、相見積もりの取得と比較表の作成を通じて、価格だけでなく対応姿勢や技術内容を可視化することが、納得できる業者選定につながります。
とくに3回目は、過去の修繕で「失敗した」「追加費用が膨らんだ」という経験がある管理組合ほど、第三者コンサルタントの活用も有効です。
3回目の大規模修繕に向けた資金計画
3回目の大規模修繕は、1回目・2回目と比べて工事範囲が広がり、費用も増加する傾向 にあります。適切な資金計画を立てることで、住民の負担を抑えながら円滑な修繕工事を実施 することが可能です。
修繕積立金の見直し
3回目の大規模修繕では、外壁・屋上・共用設備の大規模改修が必要になるため、想定以上の費用がかかるケースが多い です。そのため、修繕積立金が不足していないかを定期的に見直し、必要に応じて増額することが重要 です。
積立金の見直しポイント:
- 1回目・2回目の修繕費と比較し、適正な積立額を算出
- 今後の修繕計画を考慮し、必要な資金を確保
- 積立金の増額が難しい場合は、費用を抑える工法や補助金の活用を検討
補助金・助成金の活用
国や自治体では、マンションの修繕に関する補助金や助成金を提供している 場合があります。これらを活用することで、修繕費用の負担を軽減 できます。
活用できる可能性がある助成制度:
- 省エネ改修補助金:断熱塗装や省エネ設備の導入に対する補助
- 耐震改修補助金:耐震補強工事に対する補助
- バリアフリー改修助成:手すりの設置や段差解消工事に対する補助
補助金制度は自治体ごとに異なる ため、事前に調査し、申請期限を確認することが大切です。
ローンや一時金徴収の必要性
修繕積立金だけでは資金が不足する場合、金融機関の修繕ローンを活用する方法 もあります。修繕ローンは低金利で長期返済が可能 なため、大規模な改修を行う際に検討する価値があります。
また、一時金徴収を行う場合は、住民への説明をしっかり行い、合意形成を図ることが不可欠 です。
- 修繕費用の総額と一時金徴収の理由を明確に説明
- 住民説明会を開き、納得感のある資金計画を策定
- 負担を軽減するため、分割払いの選択肢を提示
3回目の大規模修繕を成功させるために
3回目の大規模修繕は、マンションの耐久性を維持し、住みやすさを向上させるための重要な節目 です。給排水設備やバリアフリー対応、共用部の美観向上など、住民のニーズに応じた修繕計画を立てることが成功のカギ となります。
また、適切な資金計画を立て、修繕積立金や補助金、ローンの活用を検討しながら、負担を抑えた修繕を実施することが重要 です。早めの計画と住民の合意形成を進めることで、安心・快適なマンション環境を維持していきましょう。
4回目以降の大規模修繕に向けて
3回目の大規模修繕工事を終えた後、4回目以降の修繕に向けて準備することが必要です。
4回目以降の修繕に向けて、以下のことをおすすめします。
修繕計画を立てること
修繕計画とは、将来の修繕の時期や内容、費用などを予測し、計画的に行うことを目的とした計画です。
修繕計画を立てることで、修繕の必要性や優先度を明確にし、修繕費用の積立や工事の発注などをスムーズに行うことができます。
修繕計画は、定期的に見直しや更新を行うことが重要です。
修繕積立金を適切に管理すること
修繕積立金とは、修繕工事に必要な費用を積み立てるための資金です。
修繕積立金は、住民からの修繕積立金の徴収や修繕工事の支払いなどに使用されます。
修繕積立金は、適切に管理することで、修繕工事の負担を軽減し、修繕積立金の運用効果を高めることができます。
修繕積立金は、定期的に収支や残高を確認し、必要に応じて修繕積立金の徴収額や運用方法を変更することが重要です。
修繕工事の効果を評価すること
修繕工事の効果とは、修繕工事によって建物の状態や設備の水準がどの程度改善されたか、住民の快適性や満足度がどの程度高まったかを指します。
効果を評価することで、修繕工事の成果や課題を明らかにし、次回の修繕計画や施工の改善に役立てることができます。
修繕工事の効果を評価する方法は、以下のようになります。
修繕工事の完了検査を行うこと
修繕工事の完了検査とは、修繕工事が契約通りに行われたか、工事の品質や性能が適切かを確認する検査で、工事の受け渡し前に行われます。
専門家や管理組合の代表者などが参加し、工事の内容や品質、性能などをチェックします。
修繕工事の完了検査によって、工事の不備や欠陥を発見し、修正や補償を求めることができます。
修繕工事のアフターフォローを受けること
修繕工事のアフターフォローとは、修繕工事の完了後に、工事の品質や性能を保証するために行われるサービスです。
保証期間や保証内容、保証書の発行や保管、定期点検やメンテナンスなどが含まれます。
修繕工事のアフターフォローを受けることで、工事の品質や性能を維持し、万が一のトラブルに対応することができます。
修繕工事の効果測定を行うこと
修繕工事の効果測定とは、修繕工事によって建物の状態や設備の水準がどの程度改善されたか、住民の快適性や満足度がどの程度高まったかを測定することです。
修繕工事の完了後に行われます。修繕工事の効果測定には、建物の点検や診断、住民のアンケートやヒアリングなどが用いられます。
修繕工事の効果測定によって、修繕工事の成果や課題を明らかにし、次回の修繕計画や施工の改善に役立てることができます。
大規模修繕工事の流れを紹介
大規模修繕工事では、マンションやビルの寿命を延ばし、快適な住環境を維持するために欠かせません。以下では、大規模修繕の流れを詳しく説明します。
修繕委員会を発足
まず、大規模修繕工事の計画を進めるために修繕委員会を発足します。この委員会は、住民の代表や管理組合のメンバーで構成され、工事の計画から実施、監督までの一連の流れを管理します。委員会があることで、住民全体の意見を反映した透明性の高い意思決定が可能になります。委員会のメンバーは、定期的に会議を開き、工事の進捗や問題点について話し合います。
状態確認・劣化診断
次に、専門家による建物の状態確認と劣化診断が行われます。技術者が外壁、屋根、配管、共用部分などを詳しく調査し、劣化や損傷の状態を把握します。この診断結果を基に、どの部分を修繕する必要があるかを決定します。調査は、住民の安全を確保しながら行われ、結果は詳細な報告書としてまとめられます。この報告書は、今後の修繕計画の重要な基礎資料となります。
予算・工事計画
劣化診断の結果を基に、修繕に必要な予算と具体的な工事計画を立案します。この計画には、修繕の範囲、工事内容、スケジュール、予算などが含まれます。住民の生活に与える影響を最小限に抑えるための対策も考慮されます。管理組合や住民と協議を重ね、最適な修繕計画を確定します。この段階で、計画に対する住民の理解と同意を得ることが重要です。
施工会社の選定
工事を実施する施工会社を選定します。複数の施工会社から見積もりを取り、技術力、実績、費用、サービス内容などを総合的に比較検討します。信頼性の高い施工会社を選ぶことが、工事の品質とスムーズな進行を確保するための鍵となります。選定された会社と具体的な工事内容について確認し、契約を結びます。
総会決議
修繕計画と施工会社の選定が完了したら、管理組合の総会で計画を承認する決議を行います。全住民に計画の詳細を説明し、同意を得ることで、計画の透明性と住民の理解を深めます。総会では、質疑応答の時間を設け、住民の疑問や不安を解消することが重要です。この総会決議をもって、修繕工事の正式なスタートが切られます。
工事説明会の開催
総会決議の後、工事説明会を開催します。施工会社の担当者が出席し、工事の具体的な内容、スケジュール、安全対策などを住民に説明します。住民からの質問や意見に対応し、工事への理解と協力を求めます。説明会では、工事中の生活への影響や安全対策についても詳しく説明し、住民の協力を得るための信頼関係を築きます。
大規模修繕工事の契約・着工
工事説明会が終了したら、施工会社との契約を締結し、いよいよ修繕工事が着工されます。工事は計画に基づいて進行し、安全管理と品質管理が徹底されます。工事中は定期的に進捗状況が確認され、住民への影響を最小限に抑えるための対策が講じられます。住民への定期的な報告も行い、安心して工事を見守れるようにします。
工事完了
工事が完了したら、最終検査を行い、修繕が計画通りに実施されたことを確認します。専門の検査員が工事箇所を詳細にチェックし、すべての修繕が適切に行われていることを確認します。最終検査に合格した後、工事は正式に完了となります。工事完了後には、アフターケアとして一定期間内に発生した不具合に対して施工会社が対応します。引き渡しの際には、工事の詳細な報告書や保証書が提供され、今後のメンテナンス計画についての説明も行われます。
大規模修繕工事は、建物の価値を維持し、住環境を向上させるための重要です。計画的に実施し、住民の理解と協力を得ることで、成功に導くことができます。
大規模修繕工事でよくある質問
ここでは大規模修繕工事でよくある質問を紹介します。工事費用や施行中の疑問をまとめました。
Q
大規模修繕で10戸のマンションではどのくらいが費用目安?
A
10戸のマンションの大規模修繕の費用は、規模や建物の状態、修繕内容によって異なりますが、一般的には1000万円から1,500万円程度が目安とされています。具体的な費用は、外壁や共用部分の修繕内容、使用する材料の種類によって変動するため、詳細な見積もりを施工業者で確認しましょう
Q
マンション大規模修繕時にエアコンは使用できる?室外機はどうする?
A
大規模修繕中でも基本的にはエアコンの使用は可能ですが、外壁塗装や防水工事の際には一時的に使用を控える必要がある場合があります。室外機は、作業に支障がない限りそのまま設置された状態で保たれることが一般的です。ただし、工事の進捗によっては室外機を一時的に移動させる場合もあるため、管理組合や施工業者からの指示に従ってください。
Q
マンション大規模修繕の際のベランダの荷物やアンテナはどうすればいい?
A
大規模修繕の際には、ベランダの荷物は一時的に室内に移動させる必要があります。特に、外壁塗装や防水工事の影響を受けやすいものは、工事開始前に片付けてください。また、テレビアンテナや物干し竿も取り外しが必要になる場合がありますので、事前に管理組合や施工業者の指示に従い、適切に対応してください。
Q
大規模修繕の際に洗濯物は外に干せる?
A
大規模修繕期間中は、外壁工事や塗装の影響でベランダに洗濯物を干すことが制限されることがあります。工事用のネットやシートが張られるため、日光が遮られたり、塗料やホコリが付着する可能性があります。管理組合や施工業者からの案内に従い、洗濯物は室内で乾かすか、コインランドリーの利用を検討してください。
Q
大規模修繕の際に立ち会いや在宅が必要なことはある?
A
大規模修繕では、住戸内に立ち入る必要のある作業が発生する場合があります。例えば、配管の点検やベランダ側のサッシ工事などが該当します。その際には、居住者の立ち会いや在宅を求められることがあるため、事前に管理組合や施工業者からの連絡を確認し、予定を調整してください。それ以外の工事については基本的に在宅の必要はありませんが、作業内容によって異なるため、詳細は管理組合の案内を確認することが重要です。
この他、大規模修繕のよくある質問について知りたい方は以下の記事をご覧ください
3回目の大規模修繕についてのまとめ
3回目の大規模修繕後は、次回の修繕時期を見据えた計画を立てる必要があります。建物の状態や修繕内容を考慮し、長期的な修繕計画を立てておくことで、将来的なコストを抑えることができます。
マンションの管理組合は高齢化が進んでいることが多く、3回目の大規模修繕では、しっかりとした修繕計画を立てることができ、専門家サポートなどを用いて複雑な修繕工事の計画や管理を円滑に進めることができます。
大規模修繕工事・防水工事・外壁塗装・外壁補修参引用、参考サイト
国土交通省
特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会
一般社団協会マンション管理業協会
一般社団法人日本防水協会
日本ペイント
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)
一般社団法人 マンション大規模修繕協議会
日本ウレタン建材工業会
FRP防水材工業会
株式会社ダイフレックス(シーカ・ジャパン株式会社)


