2024.04.09
大規模修繕工事の防水工事を解説!マンションの屋上防水の種類や内容を紹介
大規模修繕の防水工事はどんな工事内容?費用や防水工事の種類を教えて
ウレタン防水・シート防水・FRP防水の違いや費用相場は?大規模修繕の防水工事の費用目安は?
マンションの大規模修繕工事において、防水工事は非常に重要な役割を担っています。特に屋上やバルコニーなどの防水工事は、雨漏りや劣化を防ぐために欠かせません。しかし、防水工事にはさまざまな種類があり、どの方法を選ぶかによってその効果や費用が大きく変わるため、慎重な選択が求められます。
この記事では、マンションの屋上防水工事に使用される防水の種類や施工内容について詳しく解説します。防水工事の重要性を理解し、適切な方法を選ぶために役立つ情報を提供しますので、ぜひ参考にしてください。
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大規模修繕の防水工事とは?
建物の長寿命化を図るための重要な工事です。
経年劣化によって損傷した防水層を改修することで、建物の安全性と資産価値を維持します。
建物の骨組みや内装に深刻な損傷が及ぶリスクを未然に防ぐためにも、適切な防水工事が不可欠となります。
国土交通省の調査によると、建物の防水層が劣化すると、次のようなトラブルが起こる可能性があります。
- 雨水の浸入による内部汚損
- 結露による室内環境の悪化
- 躯体の劣化や構造体の腐食
- 断熱性能の低下による光熱費の増加
大阪市に所在するマンション(総戸数200戸)では、10年以上防水工事を行っていなかったことから、屋上や外壁の一部で雨漏りが発生。
その結果、共用廊下の天井が一部崩落するなど、建物に甚大な被害がでました。
このように、建物の重要部位に影響が及ぶ可能性があるため、定期的に計画的な防水工事を行うことが不可欠です。
大規模修繕の防水工事の種類と特徴
大規模修繕の防水工事の種類と特徴について、解説していきます。
ウレタン防水工事
ウレタン防水工事は、耐久性と施工性に優れた工法で、主に屋上防水に多く採用されています。
ウレタン防水材は、塗膜防水材の一種で、高い伸縮性と優れた接着性を持っているため、屋上の膨張・収縮による劣化に強く、長期的な防水性能が期待できます。
一般的に10年程度が大規模補修の目安ですが、定期的なメンテナンスで長期間の防水性を維持できます。
シート防水工事
シート防水工事は、防水シートを重ねて施工する工法で、比較的コストパフォーマンスが高いのが特徴です。
複数の防水シートを重ね合わせる「積層工法」は、材料費が抑えられるうえ、防水層の信頼性も高くなります。
工事単価は4,000円/㎡~7,000円/㎡程度と、他の工法に比べて安価です。
コストパフォーマンスに優れ、防水性能も高いシート防水工事は、マンションの大規模修繕によく採用される工法です。
10年前後が大規模補修の目安となっています。
アスファルト防水工事
アスファルト防水工事は伝統的な工法で価格が安価ですが、施工が難しい面があります。
加熱したアスファルトを塗布する工法で、材料費が安価なのが最大のメリットです。
しかし、高温のアスファルトを均一に塗布する必要があり、熟練を要する施工が求められます。
国土交通省の調査によると、防水工事の瑕疵の発生率は、アスファルト防水工事で15.2%と最も高くなっています。
価格が安価なアスファルト防水は魅力的ですが、施工精度によって耐久性に差が出ます。
FRP防水工事
FRP防水工事は軽量で施工性に優れる防水工法ですが、比較的工事費用がかかります。
FRP(ガラス繊維強化プラスチック)防水は、ガラス繊維を樹脂でコーティングした軽量な素材を使用する工法です施工時の重量負担が少なく、工期も短縮できるメリットがあります。
工事単価は5,000円/㎡~10,000円/㎡程度と、比較的高額になります。
高額ですがFRP防水は施工性と耐久性に優れ、15年前後の長期間にわたり防水性が持続します中長期的なコストパフォーマンスの面でもメリットがある工法です。
防水工法の特徴と費用相場、耐用年数表
以下の表に、代表的な防水工法の特徴に加え、費用相場と耐用年数をまとめました。
防水工法 | 特徴 | メリット | デメリット | 用途 | 費用相場(㎡あたり) | 耐用年数 |
---|---|---|---|---|---|---|
塩ビシート防水 | 塩化ビニル樹脂を主成分とするシートを接着剤や熱で貼り付ける防水工法。耐久性が高く、紫外線や薬品に強い。 | 耐久性が高い 紫外線や薬品に強い 施工が比較的簡単 | シートの継ぎ目からの漏水のリスク 特殊な技術が必要な場合がある | 屋上やバルコニーなど、平らな部分の防水 | 4,000~7,000円 | 10~15年 |
ゴムシート防水 | ゴム製のシートを用いた防水工法。伸縮性があり、建物の動きに追従することができる。 | 伸縮性があり、建物の動きに追従する 施工が比較的簡単 | 耐久性が塩ビシート防水に比べて劣る シートの継ぎ目からの漏水のリスクがある | 屋上やバルコニーなど、平らな部分の防水 | 4,000~7,000円 | 10~15年 |
ウレタン防水 | 液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法。施工が簡単で、複雑な形状の場所でも適用できる。 | 施工が簡単 複雑な形状の場所でも適用できる シームレスな防水層が形成できる | 施工後の硬化に時間がかかる 紫外線に弱いため、トップコートの定期的なメンテナンスが必要 | 屋上、バルコニー、ベランダ、階段などの防水 | 3,000~8,000円 | 8~10年 |
アスファルト防水 | アスファルトを主成分とする防水工法。熱で溶かしたアスファルトを塗布して防水層を形成する。 | 耐久性が高い 広い面積の防水に適している | 施工時に高温のアスファルトを扱うため、専門技術が必要 施工時に臭いが発生する 重量があるため建物に負荷がかかる | 屋上、駐車場、地下室などの広い面積の防水 | 4,000~8,000円 | 15~20年 |
FRP防水 | ガラス繊維で強化されたプラスチック(FRP)を用いた防水工法。高い耐久性と防水性を持ち、軽量で強度がある。 | 高い耐久性と防水性 軽量で強度がある シームレスな防水層が形成できる | 施工費用が比較的高い 施工には専門技術が必要 | 屋上、ベランダ、プール、浴室などの防水 | 5,000~10,000円 | 10~15年 |
この表を参考にして、屋上に適した防水工法を選定することができます。各防水工法にはそれぞれのメリット、デメリット、費用相場、そして耐用年数があるため、具体的な用途や条件に応じて最適な方法を選びましょう。
大規模修繕の防水工事の周期の目安は?
建物の防水層は、おおむね10年を超えると劣化が進行するため、一般的には5年~10年程度を目安に定期的な点検と補修工事を行うことが推奨されています。
国土交通省の調査によると、防水層の劣化は以下のような深刻な被害を及ぼす可能性があります。
- 雨水の浸入による内部汚損
- 結露による室内環境の悪化
- 躯体の劣化や鉄筋の露出・腐食
- 断熱性能の低下に伴う光熱費の増大
こうした被害を未然に防ぐためにも、適切な時期の防水工事が不可欠となります。
また、防水工法の種類によっても適切な補修周期は変わってきます。一般的な目安は以下の通りです。
【主な防水工法と補修工事の周期目安】
- ウレタン防水工事: 10年程度
- シート防水工事: 10年前後
- アスファルト防水工事: 5~10年程度
- FRP防水工事: 15年前後
例えばFRP防水では15年程度が補修工事の目安とされています。
防水層の劣化は外から見て分かりにくいため、専門家による定期的な点検が欠かせません。
物状況に合わせた適切な周期で大規模な補修工事を行うことが、建物の長寿命化と資産価値の維持につながります。
経年による防水層の劣化は避けられませんが、計画的な対策により、建物に重大な被害が及ぶリスクは最小限に抑えられます。
お住まいの大切な資産を将来にわたって守るため、着実な防水対策を心がけましょう。
大規模修繕の防水工事の費用目安は?
大規模な防水工事の費用は、面積や工法、施工場所によって大きく異なりますが、一般的な費用目安は以下の通りです。
【国土交通省「大規模修繕工事の手引き」による費用目安】
・戸建て住宅(平均100平米) 30万円~80万円程度
・マンション(1棟あたり) 500万円~3,000万円程度
・ビル(1,000平米) 500万円~1,500万円程度
防水工事の費用は以下の3つの要因によって変動します。
- 面積
工事の対象面積が大きくなるほど、総工事費は高額になる傾向にあります - 工法の種類
シート防水は1,500円/㎡~3,000円/㎡程度と比較的安価ですが、FRP防水は4,000円/㎡~6,000円/㎡と高額になります(リフォーム産業times+調べ)。 - 施工場所
高所作業が伴う場合は足場代がかさむなど、施工場所によってコストが変わります。
建物の状況や希望工法を事前にヒアリングし、複数の専門業者から見積もりを徴収して比較検討するのがベストな進め方です。
単に安価な見積もりを選ぶだけでなく、施工実績や対応力なども総合的に判断する必要があります。
ムダな出費を避け、確実な防水性を確保するためにも、事前の準備と綿密な見積り検討を欠かさないようにしましょう。
専門家に相談しながら、お住まいの建物に合わせた適切な予算計画を立てることが賢明です。
長期的視点に立った防水工事を行い、資産価値を守ることが何より大切です。
大規模修繕の防水工事のメリット
建物の防水層を計画的に補修・改修する大規模な防水工事を実施することで、以下の5つの大きなメリットが期待できます。
- 建物の安全性と資産価値の維持
- 水漏れトラブル発生のリスク低減
- 断熱性能の向上による光熱費の節約
- 建物寿命の延伸
- 快適な室内環境の維持
国土交通省によると、防水層の劣化が進行すると、雨水の浸入、結露の発生、躯体の劣化、断熱性能の低下など、建物に深刻な被害が及ぶリスクがあります。
こうした被害を未然に防ぐためにも、適切な時期の防水工事が不可欠となります。
実際に、神奈川県の調査では、築25年を経過したマンションで雨漏りなどのトラブルが発生した割合は、定期的に防水工事を行った物件で2%だったのに対し、防水工事を行っていない物件では35%と高くなっていました。
このように、大規模修繕での防水工事により、建物の重大な劣化リスクを防ぐことができ、安全性と資産価値を維持・向上させることができます。
お住まいの大切な資産を末永く守り、快適な生活環境を実現するためにも、適切な防水工事は必須と言えるでしょう。
大規模修繕の防水工事の進め方
大規模修繕の防水工事は、以下のステップを踏んで進めることをおすすめします。
- 定期点検と劣化状況の調査
- 補修工事の計画立案(工法の選定、概算費用の検討)
- 管理組合や区分所有者の合意形成
- 専門業者への発注と工事の実施
- 完了後の検査と引き渡し
工事の内容や時期を的確に見極めるためには、専門家による定期的な点検が欠かせません。
点検結果に基づいて、工法の選定や概算費用を検討し、関係者の合意を得ながら、工事計画を具体化していく必要があります。
大規模修繕は建物の重要な節目です。
早期の準備と入念な打ち合わせを行い、信頼できる専門業者に施工を任せることが何より大切です。
工事期間中の騒音・振動対策なども欠かせません。
適切なプロセスを踏んで防水工事を実施することで、確実な品質を確保できるはずです。
大規模修善工事でのよくある質問
ここでは大規模修繕工事でよくある質問を紹介します。工事費用や施行中の疑問をまとめました。
Q
大規模修繕で10戸のマンションではどのくらいが費用目安?
A
A: 10戸のマンションの大規模修繕の費用は、規模や建物の状態、修繕内容によって異なりますが、一般的には1000万円から1,500万円程度が目安とされています。具体的な費用は、外壁や共用部分の修繕内容、使用する材料の種類によって変動するため、詳細な見積もりを施工業者で確認しましょう
Q
マンション大規模修繕時にエアコンは使用できる?室外機はどうする?
A
大規模修繕中でも基本的にはエアコンの使用は可能ですが、外壁塗装や防水工事の際には一時的に使用を控える必要がある場合があります。室外機は、作業に支障がない限りそのまま設置された状態で保たれることが一般的です。ただし、工事の進捗によっては室外機を一時的に移動させる場合もあるため、管理組合や施工業者からの指示に従ってください。
Q
マンション大規模修繕の際のベランダの荷物やアンテナはどうすればいい?
A
大規模修繕の際には、ベランダの荷物は一時的に室内に移動させる必要があります。特に、外壁塗装や防水工事の影響を受けやすいものは、工事開始前に片付けてください。また、テレビアンテナや物干し竿も取り外しが必要になる場合がありますので、事前に管理組合や施工業者の指示に従い、適切に対応してください。
Q
大規模修繕の際に洗濯物は外に干せる?
A
大規模修繕期間中は、外壁工事や塗装の影響でベランダに洗濯物を干すことが制限されることがあります。工事用のネットやシートが張られるため、日光が遮られたり、塗料やホコリが付着する可能性があります。管理組合や施工業者からの案内に従い、洗濯物は室内で乾かすか、コインランドリーの利用を検討してください。
Q
大規模修繕の際に立ち会いや在宅が必要なことはある?
A
大規模修繕では、住戸内に立ち入る必要のある作業が発生する場合があります。例えば、配管の点検やベランダ側のサッシ工事などが該当します。その際には、居住者の立ち会いや在宅を求められることがあるため、事前に管理組合や施工業者からの連絡を確認し、予定を調整してください。それ以外の工事については基本的に在宅の必要はありませんが、作業内容によって異なるため、詳細は管理組合の案内を確認することが重要です。
この他、大規模修繕のよくある質問について知りたい方は以下の記事をご覧ください
大規模修繕の防水工事の注意点
大規模修繕の防水工事の注意点は、以下の5点です。
- 早期から準備を進め、最適な補修時期を逸することなく工事できるようにする
- 専門業者の選定は、複数社から見積もりを取り、比較検討して経験と実績のある業者を選ぶ
- 施工時の騒音や振動に配慮し、居住者への影響を最小限に抑える
- 予算超過に備え、余裕を持った工事費用の計上が賢明
- 工事完了後も定期的な点検を欠かさず、次の補修工事に備える
防水層の劣化は目に見えにくいため、専門家による定期点検が欠かせません。事前の準備から施工、完了後のフォローまで、一連の対応に細心の注意を払う必要があります。
遅れて対応すれば被害が深刻化するリスクがあります。
また、施工業者の経験・実績を無視すれば、不具合が生じる可能性も高まります。長期的視点に立ち、トータルコストを考えた上での的確な判断が求められます。
大規模修繕の防水工事についてのまとめ
大規模な防水工事は、修繕工事の中でも建物の寿命などに関わる重要な工事の1つです。
防水工事にはウレタン防水、シート防水、アスファルト防水、FRP防水などの種類があり、それぞれのメリット、デメリットがあります。
大規模修繕で防水工事を適切に行い建物の重大な劣化リスクを防いで安全性と資産価値を維持・向上させお住まいの大切な財産を守るため、適切な防水工事を心がけましょう。