2024.04.10
建物の区分所有法について解説|大規模修繕工事の管理組合の決議方法とは
マンションの大規模修繕工事には、区分所有法に基づく管理組合の「総会」での決議が必要です。総会は居住者全員による意思決定の場であり、工事の規模や内容によって確認申請が求められることもあります。
この記事では、区分所有法が定める管理組合の役割や総会の重要性、そして総会での決議方法や注意点について詳しく解説します。適切な計画で住環境の質を維持し、住民満足度を高めるためのポイントを理解することで、修繕工事の計画が円滑に進むようサポートします。
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区分所有法とは
区分所有法とは、マンションなどの集合住宅に関する法律で、住人同士のルールや建物の管理方法を定めたものです。この法律によって、次のようなことが決まります。
- 専有部分と共用部分の区別: 各住戸は個人のものですが、廊下やエレベーターなどはみんなで共有する部分です。
- 管理組合の設立: 住人全員で管理組合を作り、建物の管理や運営を行います。
- 規約の設定: 建物の使用ルールを定め守ることが義務付けられます。
- 集会の開催: 管理組合が定期的に集まり、修繕や重要事項を話し合います。
- 修繕積立金: 将来の修繕に備えて、修繕資金を積み立てます。
この法律は、快適なマンション生活を送るために、トラブルを防ぎ、スムーズな管理運営を支える重要な役割を果たしています。
マンション管理組合の「総会」とは
マンション管理組合の最高意思決定機関は「総会」と呼ばれます。
この総会は区分所有者全員で構成され、マンション運営上の重要事項をすべて決議する場となります。
建物の大規模修繕工事は、多額の費用や居住環境への影響が伴うため、総会での決議が区分所有法で義務付けられています。
つまり、組合員全員の合意形成なしには、大規模修繕工事を実施することはできないのです。
総会は、マンションの共用部分に関する重要な変更について決定する権限を有しています。
たとえば以下のような工事では、必ず総会の決議を経る必要があります。
- エントランスや廊下などの共有部分の大規模修繕
- 外壁の大規模修繕や改修工事
- 給排水管の入れ替え工事
- エレベーターの改修工事
なぜマンション管理において総会が重視されるのか。
その理由は、組合財産である建物の適切な維持管理は、居住者全員にとって極めて重要な課題だからです。
国土交通省がまとめた資料でも「マンションの管理は、居住者自身が主体的に行う必要がある」と明記されています。
通常総会と臨時総会とは?
マンション管理組合の最高意思決定機関である「総会」には、開催目的によって「通常総会」と「臨時総会」の2種類があります。
通常総会とは、毎年1回以上開催することが区分所有法で義務付けられている総会のことです。
この通常総会では、前年度の事業報告や収支決算の承認、当年度の事業計画や予算案の審議などが主な議題となります。
つまり、マンション運営の確認と年間計画の決定が目的なのです。
一方、臨時総会は、必要に応じて随時開かれる総会です。
マンション管理上の緊急の必要が生じた場合や、重要な案件を審議する必要がある時に開催されます。
具体的には、以下のような場合に臨時総会が開かれることが多いでしょう。
- 大規模修繕工事の実施
- 長期修繕計画の見直し
- 管理会社や理事会役員の変更
- 規約の改正
このうち、特に大規模修繕工事の決議は臨時総会で行われることが一般的です。
住戸の多いマンションでは、年間予算の範囲を超える多額の費用が必要となるためです。
マンションの大規模修繕は、工事期間中の生活環境の変化など、居住者の日常生活に大きな影響を及ぼします。
そのため、工事の必要性や概要、実施時期、費用の調達方法など、十分な住民合意を得る必要があり、臨時総会での審議が欠かせません。
また、専有部分に係る工事でも、影響が大きければ臨時総会で審議されることがあります。
たとえば一部増築で他の専有部分の所有者に影響がある場合などが該当します。
つまり、通常総会は日常の運営事項を、臨時総会は臨時の重要案件、特に大規模修繕工事などを審議する場と位置づけられています。
マンション管理においては、この2種類の総会を適切に運営し、組合員全体の合意形成を図ることが不可欠なのです。
総会での決議方法について
マンション管理組合の総会では、審議事項の重要度に応じて、「普通決議」と「特別決議」の2種類の決議方法が用いられます。
区分所有法ではこの2つの決議要件について明確に定められています。
特別決議とは?
特別決議が必要な場合、出席した組合員の4分の3以上の賛成と、委任状を含めた組合員の過半数の賛成が条件とされます。つまり、単に出席者の3分の2を超える賛成では不十分で、一定の組合員の賛同が必要不可欠なのです。
この厳しい決議要件が設けられている理由は、特別決議の対象となる案件が、マンション全体に重大な影響を及ぼすためです。
組合財産の大きな変更には、広範な合意形成が欠かせません。
具体的に特別決議が必要となるケースは後述しますが、大規模修繕工事の実施決定はその代表例と言えるでしょう。
多額の工事費用など、組合員全員に重大な影響があるためです。
普通決議とは?
一方、普通決議の場合は、出席した組合員の過半数の賛成があれば成立します。委任状による組合員全体の賛成は求められません。
普通決議は、比較的重要度の低い事項を対象としています。
たとえば、運営規則の一部改正や管理会社の変更選定などがこれに該当します。
組合財産への影響が限定的なため、より緩やかな決議要件となっているわけです。
共有部分に関する決議方法
マンションの共有部分、つまり共用部分に関する重要な変更については、原則として特別決議が必要とされています。
理由は、共有部分の変更が組合員全員に影響を及ぼすためです。
例えば、以下のような大規模工事では特別決議による承認を得なければなりません。
- エントランスや廊下などの共用部分の大規模修繕
- 外壁の大規模修繕や改修工事
- 給排水管の入れ替え工事
- エレベーターの改修工事
このように、居住者全員に影響があるマンションの主要共用部分に関する大規模工事は、組合員の4分の3以上の合意が不可欠と定められています。
一方、小規模な補修工事や専有部分に関する工事の場合は、普通決議で足りる場合もあります。
ただし、専有部分の工事でも影響が大きければ特別決議を要するケースもあり、個別に判断する必要があります。
特別決議が必要なケース
特に以下のような重要案件については、総会での特別決議が義務付けられています。
- マンション規約の制定や改正
- 建物の修繕費や借入金の範囲を超える支出
- マンションの重大な模様替え
- マンション敷地の売買や賃貸借
- 組合の解散
このように、組合財産の重大な変更や組合存続自体に影響する重大事項は、全て特別決議を要します。
組合員全体の十分な合意を得ることがマンション運営の根幹にあるためです。
大規模修繕工事も例外なく、この特別決議の対象となります。
長期修繕計画の実施時期や工事内容、費用の調達方法など、組合員への影響が大きいためです。
組合員の4分の3以上の賛同を得て初めて、大規模修繕工事が実施可能になるわけです。
マンションの適切な維持管理のためには、組合員全体の合意形成が不可欠です。
総会における合理的な意思決定プロセスが何より重要なのです。
大規模修善工事でのよくある質問
ここでは大規模修繕工事でよくある質問を紹介します。工事費用や施行中の疑問をまとめました。
Q
大規模修繕で10戸のマンションではどのくらいが費用目安?
A
A: 10戸のマンションの大規模修繕の費用は、規模や建物の状態、修繕内容によって異なりますが、一般的には1000万円から1,500万円程度が目安とされています。具体的な費用は、外壁や共用部分の修繕内容、使用する材料の種類によって変動するため、詳細な見積もりを施工業者で確認しましょう
Q
マンション大規模修繕時にエアコンは使用できる?室外機はどうする?
A
大規模修繕中でも基本的にはエアコンの使用は可能ですが、外壁塗装や防水工事の際には一時的に使用を控える必要がある場合があります。室外機は、作業に支障がない限りそのまま設置された状態で保たれることが一般的です。ただし、工事の進捗によっては室外機を一時的に移動させる場合もあるため、管理組合や施工業者からの指示に従ってください。
Q
マンション大規模修繕の際のベランダの荷物やアンテナはどうすればいい?
A
大規模修繕の際には、ベランダの荷物は一時的に室内に移動させる必要があります。特に、外壁塗装や防水工事の影響を受けやすいものは、工事開始前に片付けてください。また、テレビアンテナや物干し竿も取り外しが必要になる場合がありますので、事前に管理組合や施工業者の指示に従い、適切に対応してください。
Q
大規模修繕の際に洗濯物は外に干せる?
A
大規模修繕期間中は、外壁工事や塗装の影響でベランダに洗濯物を干すことが制限されることがあります。工事用のネットやシートが張られるため、日光が遮られたり、塗料やホコリが付着する可能性があります。管理組合や施工業者からの案内に従い、洗濯物は室内で乾かすか、コインランドリーの利用を検討してください。
Q
大規模修繕の際に立ち会いや在宅が必要なことはある?
A
大規模修繕では、住戸内に立ち入る必要のある作業が発生する場合があります。例えば、配管の点検やベランダ側のサッシ工事などが該当します。その際には、居住者の立ち会いや在宅を求められることがあるため、事前に管理組合や施工業者からの連絡を確認し、予定を調整してください。それ以外の工事については基本的に在宅の必要はありませんが、作業内容によって異なるため、詳細は管理組合の案内を確認することが重要です。
この他、大規模修繕のよくある質問について知りたい方は以下の記事をご覧ください
区分所有法についてのまとめ
今回はマンションにおける区分所有法について紹介しました。マンションの管理や利用についての基本的なルールを定めた法律が区分所有法です。
マンション管理組合の理事である場合だけでなく、理事以外の方も区分所有者について確認しておくべきです。
また、個別のマンションについてのルールが定められている管理規約や使用細則も確認しておきましょう。